印象
「オーウェン様は」
「どうした?」
結婚式まであと、数ヵ月。夕食の後にふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「オーウェン様の、私に対する印象はどうでしたか?」
「あなたの……印象?」
そんなことを聞かれると思っても見なかったのかオーウェン様はぱちぱちと瞬きする。
「はい。オーウェン様が私のことを特別に想ってくださるきっかけは、過去のことだったでしょう?」
オーウェン様が鬼──アレクから助けてくれたときに私が言った瞳が綺麗だという言葉がきっかけだったと、聞いている。
「……ああ、そうだな?」
オーウェン様が頷いた。
「そのときと比べて、数年後に会った私はオーウェン様が想い描いていた通りの私だったかなって、ふと、思いまして」
これではっきりと、がっかりだっと言われても傷つくけれど、気になってしまったのだ。
「……そうだな。想像とは違った」
「!」
やっぱりそうかー。わかっていたことだけれど、ショックだわ。思い出は美化されやすいっていうから、思い出補正が多分にかかっていた可能性もあるけれど。
衝撃を受けた私にオーウェン様は微笑んだ。
「想像以上に、魅力的で。でも、昔と変わらない部分もあって嬉しかった」
「……ほんとう、ですか?」
「ああ、本当だ」
オーウェン様が大きく頷く。
「あなたは、想像以上に笑顔が眩しくて、強くて……可愛くて。わたしはすぐにまた、あなたに恋に落ちた」
「! そ、うですか」
思わず頬に熱が集まる。自分から聞き出したこととはいえ、かなり恥ずかしい。
「あなたは?」
「え?」
「あなたは、この邸に初めて来た時、わたしのことをどう思った?」
オーウェン様に対する私の印象、かぁ……。
「ものすごく美人だと思いました」
私が正直にそういうと、オーウェン様はくすりと笑った。
「そういえば、そうだった。あなたは、この顔を美しいと言ってくれたな。わたしの顔があなたの好みでよかった」
「あっ、でも、今はちゃんとオーウェン様の全てが好きです! もちろん、顔も大好きですが」
慌ててそう言うとオーウェン様は首をかしげた。
「そんなにわたしの顔が好きなのか?」
「はい!」
タイプのドストレート……というより、誰がみても美しいと思うだろう顔。私もその誰にももれず、好きだ。今は、オーウェン様の内面も好きだから、恋心補正でもっともっと好きになった。
「顔以外は?」
「え?」
「いつから、わたしのことを好ましく思ってくれた?」
う、うううう。それは、とても恥ずかしい。
「えっと、その……」
思わず口ごもったけれど、オーウェン様は期待に満ちた目で私を見ている。これは、言わざるを得ない。
「オーウェン様が、私の体型よりも健康であることの方が重要と言ってくださったときから、です」
正確にはもっと前から恋に落ちていた気がしなくもないけれど、私が自覚したのはその辺りからだ。
「オーウェン様の心が嬉しくて」
そういうと、オーウェン様は微笑んだ。
「わたしも何度もあなたの心に救われた」
「オーウェン様が?」
特に私はオーウェン様に何もした覚えはないので、驚く。むしろ、いつも私が助けられてばかりな気がする。
「あなたが、あなたのままそばにいてくれる。それが、わたしにとって何よりの救いだ」
「……オーウェン様」
「だから、一緒にいてほしい」
「はい!」
結婚まであと数ヵ月。その日がとても待ち遠しく感じた。
いつもお読みくださりありがとうございます!
お読みくださる読者様のおかげで、「死にたくないので、全力で媚びたら溺愛されました!」の二巻が発売されることとなりました。ありがとうございます。いっぱい書き下ろしたのでお楽しみいただけたら幸いです!
発売日 3月15(月)
レーベル Mノベルスf様
イラスト なま先生
です!よろしくお願い申し上げます。




