にじゅうはち
歓声が収まった後。
「巫女様、どうかこちらに」
言われた通り壇上にたつ。演壇には、青紫の宝玉がある。
「そちらに手を翳して、いつも巫女様は時空の神とお話されていました」
つまり、宝玉に手を翳せと言うことね。別に何もおきないと思──。
『どこにいったんだ!? ああ、あなたは。ヴィクターは無事だろうか』
「!?」
頭の中で声がする。それは、聞き間違えるはずもなく。神の声なんかじゃない。とても心配そうなそれは、オーウェン様の声だった。
でも、オーウェン様はもう妖術は使えないはず。念話が特技だとも聞かないし。と、そう思ったところで気づく。お腹が熱い。もしかして。この声を届けてくれたのは。
「……ヴィクター」
「神からの啓示ですか!?」
私の呟きに一同がどよめく。私はそれを無視して、集中する。ヴィクターが妖術を使えるなら、オーウェン様の言葉を受信するだけじゃなくて、発信することもできるかもしれない。
『オーウェン様、オーウェン様。聞こえますか』
心の中で呼び掛ける。すると、数秒の間をおいて、オーウェン様の返答が聞こえた。
『リリアン!? これはいったい──いや、それよりもあなたたちは、今どこにいるんだ』
私は、先にセレンから聞き出していたこの場所の住所のこと、それから時空教の信者たちが百人はいることを話した。
『わかった。すぐに向かう』
そこで、オーウェン様の言葉は途切れた。お腹の熱ももう感じない。心の中でヴィクターにお礼を言って、お腹を撫でる。すると、ヴィクターが返事をするようにお腹で動いた気がした。
さて。後はオーウェン様たちが到着するまで、どうやって時間を稼ごうか。とりあえず、この手をおいたまま、何か会話をしている風を装うとして。そんなことを考えながら、ちゃんと翳していなかった宝玉に手を翳し直す。
すると。
『巫女』




