にじゅうご
オーウェン様はその言葉通り、第一王女殿下の王位継承権のために、力を尽くした。それから、オーウェン様自身は王位の継承を何があってもしないという宣約書まで書いた。
今まで、王位に関して何も意見がなかったオーウェン様の表明は世間では驚かれていた、らしい。
けれど、我が国初の女王誕生の可能性への道は険しく、まだ実現には時間がかかりそうだった。
「おかえりなさい、オーウェン様」
「ただいま。待っていてくれたのか、ありがとう」
オーウェン様におかえりのハグとキスをする。最近のオーウェン様はとてもお疲れのようだった。少しでもそんなオーウェン様を癒すことができたらいいのだけれど……。
「……陛下が退位される前に、法を変えるのは難しそうだ」
オーウェン様の言葉にそうだろうな、と思う。遥か南の国では五代前が女王だったけれど。我が国にはそんな前例はない。前例がないことを成し遂げるのはいつだって、大変だ。
「だが、私の意思をしっかりと伝えられたのは良かった。……それで、あなたとずっと一緒にいられるのなら」
「……オーウェン様」
私もオーウェン様とずっと一緒にいたい。きっと、死亡フラグはもう、折れたのよね。だから大丈夫──。
私たちは微笑んで、抱き合った。
その翌日。私が本を読みながら、午後を過ごしていると。
「奥様」
「どうしたの、ダグラス」
ダグラスが困ったような顔をして、私の部屋を訪れた。
「奥様に聖職者のお知り合いはおいでですか?」
頭のなかでざっ、と知り合いを確認したけれど、特に思い浮かばない。首を振る。
「わかりました。では、追い返して参ります」
誰かと勘違いして私を訪ねてきたのかしらね。疑問に思いながらも、頷いた、ときだった。
「!」
空間がぐにゃりと曲がったかと思うと、二人組の男性が突然、私の前に現れたのだ。
「時空渡りの巫女様、お迎えにあがりました」




