にじゅうさん
安定期に入ると、つわりも落ち着いてきた。この頃になると、お腹も大きくなってきて、本当にここに新しい命があることを実感するようになった。
「おめでとう、リリアン!」
ベネッタの家で料理を教えるついでに妊娠したことを話すと、ベネッタは祝福してくれた。
「名前は、やっぱりヴィクターなの?」
「ええ」
ベネッタの言葉に頷く。この世界は医療は発展しているので、先日、ついに性別がわかったのだった。男の子だったので、オーウェン様と相談してヴィクターと名付けることにした。もしかしたら、あの子とこの子はもう別の存在なのかもしれないけれど。ヴィクターはとても優しい子だったから、そう育ってくれるようにという祈りもこめて。
「そういえば、ベネッタも式はもうすぐでしょう? 楽しみね」
籍はもう入れているものの、結婚式はまだだった。ベネッタの仕事が落ち着くころを見計らって、する予定だった。私とオーウェン様も招かれているので、とても楽しみだ。
「ええ。式のために、最近ダイエットもしてるのよ」
「ベネッタは今のままで十分綺麗よ」
気を抜くと、横に大きくなりそうな私とは違って、ベネッタのプロポーションはバッチリだ。適度な運動ならともかく、ダイエットは必要なさそうだけれど……。
「ありがとう。でもね、やっぱり、サイラスに世界一綺麗だって思ってほしいから」
「! なるほど」
惚気られてしまった。それなら納得だわ。でも、無理なダイエットはしないようにね、と忠告だけして。馬に蹴られないように、再びお料理を開始したのだった。
ベネッタの結婚式はとても素敵だった。スッキリとしたシルエットのドレスはベネッタにとっても似合っていたし、なにより二人とも幸せそうだった。
「とっても素敵な式でしたね」
私がそういうと、オーウェン様は頷いた。
「ああ。そうだな」
ベネッタは妖怪や鬼だけでなくハーフにまで敵対心を持っている魔法軍に所属している。ベネッタが歩む道は平坦ではないかもしれないけれど。この二人ならきっと、大丈夫。そう思える素敵な式だった。
「あっ」
「どうした!?」
思わず声をあげた私にオーウェン様が慌てて近づく。
「いえ、今ヴィクターが動いたので、思わず」
「……そうか」
オーウェン様が頬を緩めて、私のお腹を撫でる。
「はやく会いたいですね」
「そうだな。健康に育ってくれるといい」
その日、私はヴィクターが庭を駆け回る夢を見た。




