じゅうはち
オーウェン様と結婚して変わったこと。変わらないこと。そのどれもが愛おしい。
いってらっしゃいのハグ。これは変わらないこと。
「……ん」
それから、行ってらっしゃいのキス。これは変わったこと。まだ慣れないキスに私はいつも赤くなってしまうのだけれど。オーウェン様も赤いから、気にしないことにした。
オーウェン様が微笑む。私も微笑み返した。
「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
オーウェン様を見送って屋敷の中へ。オーウェン様と結婚してから毎日思ってるけれど、今日が一番幸せだわ。幸せ度を毎日更新してる。
「奥様もそろそろ出掛けられますか?」
「ええ」
ダグラスに頷く。今日はまた、アドリアーノ公爵夫人主催のお茶会があるのよね。私がオーウェン様の妻になって初めての社交。頑張らなきゃ!
「ごきげんよう、アドリアーノ公爵夫人」
「ごきげんよう、リリアンさん……いえ、ヒューバード公爵夫人」
アドリアーノ公爵夫人が微笑む。そう呼ばれると、背筋が伸びる思いがする。思わず、姿勢をただした私にアドリアーノ公爵夫人は目を細めた。
「改めて。ご結婚、おめでとうございます」「ありがとうございます」
手土産を渡して軽くお話した後、席に座る。
今日も話題の中心は、やっぱり流行りの服や宝飾品ーーかと思ったけれど。
「?」
みんなの視線が、一斉に私に向く。……私?
「ヒューバード公爵夫人、結婚生活はいかがですか?」
ヴァーナー侯爵夫人に話しかけられたのを皮切りに質問責めにされる。
どうやらみんな謎めいたオーウェン様との結婚生活に興味津々のようだった。私は答えられる範囲で質問に答えていく。すると、皆も惚気だし、最終的にはただの惚気大会になっていた。お互いのパートナーを語るとき、皆とても輝いていて綺麗だった。私もそう見えているといいな。
お茶会から帰り、公爵邸で読書をしていると、オーウェン様が帰ってきた。おかえりなさいのハグとキスをする。
「おかえりなさい」
「ああ。ただいま」
オーウェン様は、少しだけ疲れた表情をしていた。お仕事で何かあったのかしら。でも、聞いていいことなのかどうなのか。私が悩んでいると、オーウェン様は苦笑した。
「すまない。心配をかけたな」
「いえ……」
オーウェン様が声を落とす。
「実は、陛下がもうすぐ退位されるだろう? その引き継ぎで、忙しくて」
そうか。もうすぐ、王太子殿下が即位されるものね。
「お疲れ様です」
「ありがとう。忙しくてもあなたが待っていてくれると、疲れが吹き飛ぶな」
誉めすぎだ。でも、嬉しい。
オーウェン様、前から甘かったけれど、結婚してから甘々になった気がする。そう尋ねてみるとオーウェン様は笑った。
「婚約者のときは、あれでも歯止めがきくように抑えてた。でも、もう、我慢する必要がないからな」
そういって、キスを落とされる。それからどちらからともなく、見つめあって微笑んだ。
やっぱり、幸せだわ。




