なな
「でも、オーウェン様は魔法軍にあまりいい印象を持たれていないんですよね?」
たぶんオーウェン様は妖狐の血を継いでいることで、何かしら魔法軍とあったのではないかと思うけれど。
「ああ。あまり気分のいい場所じゃないな。でも、あなたやヴィクターに比べれば些細な問題だ」
「オーウェン様……」
私の生死はともかく、ヴィクターのことは閻実の界に関わることだし、魔法軍も話を聞いてくれるだろうけれど。
「やっぱり私が行った方が」
「死因がわからない以上、あなたを馬車に乗せたくない」
今日もその理由で、魔法軍を訪ねられなかったのよね。でも。
「でも、オーウェン様に嫌な想いをしてほしくありません」
私がそういうと、オーウェン様は柔らかく微笑んだ。
「ありがとう。そう言ってくれるあなたがいるだけで、私は大丈夫だ」
「……はい」
でも。私が納得していないことがわかったのか、オーウェン様は私の頭に手をのせた。そして、優しく撫でられる。大きくなってから撫でられることってあまりないから、なんだか落ち着かない。でも、暖かい気持ちになる。
「……ずるいです、オーウェン様」
「それであなたを守れるのなら。ずるくもなる」
私だって、あなたを守りたいのに。私にも魔法の力が目覚めないかな。そしたら、閻実の界と現実世界を自由に行き来できるし、オーウェン様のことだって、守れる。そうだわ、今度王立図書館で、魔法に関する書籍を借りよう。
「ほら、もう遅い。……おやすみ」
「おやすみなさい、オーウェン様」
翌朝。昨夜はヴィクターはうなされることなく眠れたようだった。そのことに安心する。
「おはよう、ヴィクター」
「おはよう、母上!」
ヴィクターを寝間着から服に着替えさせ、私も着替える。するとヴィクターの髪が少しはねているのに気づいたので、櫛でといた。
と、支度が終わったところで、マージが朝食ができたことを知らせてくれる。
「今、いくわ」
もう一度だけ鏡で姿を確認して、ヴィクターの姿も確認して。部屋を出た。
「おはようございます、オーウェン様」
「おはよう、父上!」
「あぁ、おはよう」
皆で朝食をとる。今日も朝食はとっても美味しかった。
「では、いってきます」
魔法軍を訪ねるオーウェン様にハグをする。行って欲しくない。でも、ヴィクターのこともそのままにしておけない。ヴィクターともハグをして、出発しようとしたオーウェン様を呼び止めた。
「どうした? --!」
オーウェン様の頬にキスをする。
「必ず、無事に帰ってきてくださいね」
別にオーウェン様はなにも悪いことをしていないから、とても危険があるわけじゃないってわかってるけど。心配なのだ。けれど、オーウェン様は、そんな私を笑い飛ばすことなく、真剣に頷いてくれた。
「約束する。必ずあなたたちの元へ帰ると」
そういって、今度こそオーウェン様は出発した。
「母上、顔が真っ赤だよ?」
ヴィクターに指摘され、余計に顔が赤くなる。頬にキスをするのは、これで二度目だ。まだ婚約者なのに結構大胆なことをしてしまったかもしれない。それでも。オーウェン様がどうか、傷つけられませんように、と祈った。




