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どうして、私が死んだのか。私もとても気になる。だってそれを知れば、オーウェン様やヴィクターの側にずっといられるもの。
けれど、ヴィクターは首をかしげた。
「わかんない。突然、父上が母上は星になっちゃったって、言った」
「突然、か。ありがとう、ヴィクター」
突然死んだ。ということは、病気である可能性は少し低くなった。いえ、心臓病などで突然死した可能性もあるのだけれど。ありがちなのは、馬車での事故かしらね。
「これからは、母上も父上もずっと、一緒?」
ヴィクターが目を潤ませながら尋ねてくる。かっ、可愛い! 贔屓目なしにめちゃくちゃ可愛い。でも。
「すまない。ずっとは一緒にいられないんだ」
オーウェン様がヴィクターに謝った。優しく頭を撫でながら、諭すように言う。
「でも、未来で。私たち二人がずっとヴィクターといられるように頑張るから」
私たち二人。私とオーウェン様と。オーウェン様の描く未来に当然のように私がいたことが、嬉しい。
「よくわかんないけど、父上と母上頑張るの?」
「ええ、頑張るわ」
「じゃあ、僕も頑張る!」
そういって意気込んだヴィクターの頭を私も撫でる。正直言って、死ぬのは怖い。とても。それも、何年後かわからないけれど、わりと近い未来に私が死ぬ可能性があるなんて。
でも、もっと怖いのはこんなに可愛い子を、オーウェン様を置いていってしまうことだ。未来の私(仮)はどれだけ悔しかっただろう。
「えへへ。父上と母上に頭撫でてもらうの好き! もっと撫でて」
ぐりぐりと手に頭を擦り付けてくるヴィクターの頭を私たちは優しく撫でた。
さて。それからひとまず、公爵邸にいる使用人たちにヴィクターのことを説明した。さすが、公爵家に仕える人間はみんな優秀な人が多いのか、閻実の界の話をすると納得してくれた。
ヴィクターのことも、私のことも。ひとまずは、様子を見ることにした。とりあえず、明日、ベネッタに手紙を出すつもりだ。明日はオーウェン様は仕事だから、私が直接馬車で会いに行こうと思ったのだけれど、オーウェン様に止められた。
「だめだ! 事故にあったらどうする」
「少なくともヴィクターが産まれるまでの私は死なないってことでしょうから、大丈夫ですよ」
オーウェン様は心配しすぎなのだ。けれど、オーウェン様は真っ青な顔で言った。
「あなたを失うなんて、耐えられないんだ」
私だって、オーウェン様を失うなんて耐えられない。だから、オーウェン様の気持ちもわかった。そこで申し訳ないけれど、手紙で現状を伝え、ベネッタの仕事が都合のいいときに、公爵邸を尋ねてもらうことにした。
──と。そこまではいいのだけれど。
「どうして、母上と一緒にお風呂に入ったらいけないの?」
「ヴィクター。君は男だからだ」
渋い顔でオーウェン様は、ヴィクターを諭す。
「普通、女性と男性は一緒に風呂に入らない」
うん、まぁそうよね。でも、ヴィクターは未来の私(仮)と離れていて寂しかったみたいだし。
「オーウェン様、私は構いませんよ」
それで寂しさを少しでもうめられるなら、お安いご用だ。
「わーい! ほら、母上がいいって。母上、大好き!」
ヴィクターが私に抱きつく。けれど、オーウェン様は私からヴィクターを引き離した。
「だめだ。ヴィクター。私と入ろう」




