よんじゅうきゅう
「お、オーウェン様、これはいったい……」
オーウェン様に隠し子がいたなんて、一度も聞かなかったわ! オーウェン様は私だけだと言っていたけれど、それは嘘だったの?
自然と涙が出そうになる。
「ち、違う! 私に子供はいない! どうか泣かないでくれ、リリアン。これは、きっと……何かの勘違いだ」
けれど、子供は人に変化するとぐりぐりとオーウェン様に頭を擦り付けている。確かに子供の姿は見れば見るほど、オーウェン様にそっくりだった。
親子だと言われても、疑わないほどに。
「私はあなたを裏切るような真似はしない」
でもオーウェン様が私と婚約者になる前のことなら、裏切りも何もない。オーウェン様が、別の女性とイチャイチャするところを想像してしまい、悲しくなってくる。
「あなたが私の初恋で、最愛だ」
「私だってそうです!」
「すまないが、私は君の父ではないんだ。君の世界まで送るから、君の父上を探そう」
そういって、オーウェン様はかがみこんで、子供と目線を合わせた。
「父上は、父上じゃないの?」
「ああ。すまない」
オーウェン様がそういうと、子供は泣き出してしまった。泣く子供に、オーウェン様はおろおろとしている。
「泣かないで。オーウェン様は、とてもすごい人なのよ。あなたのお父上じゃないけれど、必ず見つけてくれるわ」
私も子供に近づくと、目線を合わせる。
「母上ー!!! どうして、父上は父上じゃないの? 僕は、よその子供だったの?」
すると、子供に抱きつかれた。
「は、母上!?」
ええと、この子はオーウェン様の隠し子じゃなくて。でも、オーウェン様のことを父と呼んで。私のことを母と呼んだ。オーウェン様のことだけなら彼の父親がそっくりだということで説明がつくけれど。……つまり、どういうこと?




