よんじゅうなな
オーウェン様の姿も無事に人の姿もとれるようになり、一ヶ月がたった。オーウェン様は、人か妖狐か。まだ悩んでいるようだった。
「あなたが、もう半分の私も私だと認めさせてくれたから。もう少しだけ考えたいんだ」
そういったオーウェン様の言葉に頷く。オーウェン様にとって、大事なことだ。私のために妖術が使えなくなるのは困るからという理由だけなら止めるけど、そうじゃないなら、オーウェン様の一生に関わること。よく考えて決めるべきだ。
「わかりました。でも、どちらを選んでも、私をお側にいさせてください」
閻実の界でずっと暮らすことになっても。オーウェン様となら、構わないから。私がそう強くいうと、オーウェン様は微笑んだ。
「ありがとう。あなたはいつも私を救ってくれる」
さて。人の世は難儀なもので。いや、閻実の界もそれはそれで難儀なことがあるのかもしれないけれど。ふぅ。気合いを入れるために、頬を叩く。戦闘準備はばっちりだ。
「どうした?」
そんな私を見て、オーウェン様が不思議そうな顔をした。
「いえ、少し気合いを入れていました」
「? そうか」
今日は夜会だ。以前のお茶会のように、失態を犯さないように気を付けないと。
それはそうと、今日のオーウェン様も美しい。銀色の飾りが施された衣装はオーウェン様の髪とよくあっている。でも、この衣装だけじゃない。これから先、妖狐でも、人間でも。色んな衣装を着たオーウェン様の隣には私がいるんだ。誰にもオーウェン様の隣を譲りたくはないから。
オーウェン様にエスコートされ、会場へ。オーウェン様が私に紹介したい方がいると言っていたので、少し緊張する。すぅ、と深呼吸した私に気づいたオーウェン様が、柔らかく微笑む。
「大丈夫だ。私がついてる」
「はい」
そうよね。オーウェン様が側にいてくれる。だから、きっと、大丈夫。夜会が始まり、王家の方々に挨拶をしたあと、紹介された。
「リリアン、こちらがアドリアーノ公爵夫人だ」




