よんじゅうろく
「オーウェン様、大丈夫ですか!?」
慌ててぼろぼろの姿のオーウェン様にかけよる。ぼろぼろだけれど、人の姿だ。どうやら、宝玉は壊せたらしい。
「ああ。見た目は酷いが、体に外傷はない。だから、あなたが心配する必要はない」
そういってオーウェン様が、ぽんと頭に手をおいた。
「……良かった!」
オーウェン様が、無事なことが嬉しくて思わずだきつく。オーウェン様の体温は暖かい。アレクが邪魔をしてオーウェン様をひどい目に合わせないか心配だったけれど、そんなことなかったみたいで、良かった。
「邪魔……は、されたんたが、助けてくれた妖狐がいたから」
助けてくれた、妖狐?
「あぁ。なぜかはわからないが。もしかしたら、次の王狐になりたかったのかもしれないな」
「そうなんですか」
少しだけ気にかかるけど、とにかくオーウェン様が無事で良かった!
オーウェン様とたった1日離れていただけなのに、随分久しぶりに会ったような気がする。
──私は、オーウェン様に真っ赤な顔でこれ以上は私が持たないと言われるまで、ずっと抱きついていた。
そういえば! 忘れていたけれど、オーウェン様は、どちらか選ばなきゃいけないのよね。これで、そちらの選択しかないからじゃなくて、両方が選べる状態になった。オーウェン様は、人と妖狐と。どっちを選ぶのだろう。
「オーウェン様」
「どうした?」
「私、オーウェン様が何を選んでも、オーウェン様の味方です。ずっと、オーウェン様のお側にいさせてください」
「……ありがとう」
オーウェン様が柔らかく微笑む。
「本当は、人にもう決めてしまいたいんだが……」
オーウェン様を迷わせる何かがあるのだろうか?
「妖術が使えなくなって、あなたを守れなくなるのは、困ると思って」
でも、もうアレクは手出しできないはずだ。私を認識できないのだから。
「鬼もそうだが。あなたは魅力的だ。他の男にとられないか心配なんだ」
困った顔をしたオーウェン様に、笑う。
「私のほうが、オーウェン様をとられないか心配です」
だって、ナタリー嬢だってオーウェン様に夢中だったし。オーウェン様は、優しい。オーウェン様の側にいたい女性はきっと数多くいるだろう。
「私のことは、心配しなくて大丈夫だ。そんな風に言ってくれるのも、言って欲しいのもあなたしかいない!」
「私だって、オーウェン様しか見えません!」
二人でしばらくどれほど互いを必要としているのか言い合った。けれど、お互い一歩も譲らず、思わず顔を見合わせて、笑う。
とても、幸せだと、そう思った。




