よんじゅういち
馬車から降りて、思わず息を飲む。魔法軍の本拠地はとても大きく、何より広い。ベネッタは毎日こういうところで、仕事しているのね。感心しながら、基地内を歩く。
ベネッタを訪ねてきた、というと、すぐに応接室に通された。もしかしたら、私が閻実の界に連れ去られた件についてだと思ったのかもしれないけれど、本当は私的な用事で申し訳なく思いながら、応接室でベネッタを待つ。
ベネッタは、数分もしないうちにやって来た。
「大丈夫? 何か変なこと言われなかった?」
「変なこと?」
そういえば、オーウェン様も魔法軍はあまり気持ちのいい場所ではないと言っていた。そのことだろうか。そう思いながら、首を振る。特に何も気分を害するようなことは言われなかった。
「……良かった。まぁ、あなたは被害者だものね」
ベネッタはほっとしたように息をつき、それから、私に向き直った。
「それで、私に用事というのはやっぱり、アレクという鬼のこと?」
「違うの。ごめんなさい、もっと、私的な用事なの。その、オーウェン様が」
私が話を切り出すと、ベネッタは顔つきを変えた。
「オーウェン公爵に何かあったの?」
「オーウェン様が、妖狐の姿になってしまったの。それで、オーウェン様が人の姿に戻ろうとしても、戻れないって」
「……困ったことになったわね」
「……ベネッタ?」
ベネッタは焦ったように、トントンと机を叩いた。
「ねぇ、リリアン。このこと、私以外に話した?」
私は、家令のダグラスにだけ話したことを伝えた。
「良かった。このことがもし、他の魔法軍の隊員にばれたら……最悪オーウェン公爵は討伐される可能性があるわ」
と、ととと、討伐!?




