にじゅうく
「私、オーウェン様のことが好きです。愛してるんです」
「え──」
オーウェン様は、私の言葉に心底驚いたように、目を見開いた。しまった。やっぱり言わない方が良かっただろうか。ううん、でも、これは関係を再構築する上で必要なこと。
「でも、オーウェン様とお相手を邪魔するつもりはありません。お飾りの妻として、ちゃんとその役目を果たします」
「ちょっと待て。相手? お飾り? なんのことだ」
「ですから、オーウェン様が恋をされている方と結婚が難しいから、私をお飾りの妻に据えるおつもりなんですよね?」
「……は?」
まさかヒロイン以外にそんな強力なライバルがいるとは思わなかったけれど。
「私は、自分が愛する者をわざわざお飾りにするつもりはない」
つまり、私はこれっぽっちも愛されていないと。うう。これまで婚約者として過ごしてきて、親愛の情くらいは抱いてくれているのではないかと、思っていたからショックだわ。
また涙がでてきた私の背を撫でて、オーウェン様は、困惑した顔をした。
「……どうやら、伝わっていないな?」
オーウェン様が、私の手をぎゅっと握る。そして、私を真っ直ぐに見つめた。
「あなたには、いずれ名実ともに私の妻になってもらう。……私は、あなたを愛しているから」
「……うそ」
「うそじゃない」
オーウェン様は、私の手を口許に近づけ、キスを落とした。
「私はあなたを愛している。あなた以外に恋をするつもりは更々ないし、あなたが嫌だといっても離すつもりは──!」
「離さないでください。ずっと、側にいて」
オーウェン様に抱きつく。すると、オーウェン様も抱き締め返してくれた。
「ああ。ずっと側にいる」




