にじゅうはち
朝食をとった後、話し合いは始まった。オーウェン様は悲痛な顔をしていた。どういうことだろう? 私は何かオーウェン様を悲しませるようなことをしてしまったのだろうか。
オーウェン様は、震えた声で話を切り出した。
「その、あなたが、婚約を解消したいというのは、私が……妖狐の血を継いでいるからだろうか? 先日使った妖術が恐ろしかったから……とか」
「ち、違います!」
しまった! さっき考えていたことが、声に出てたのね。オーウェン様を傷つける意図はなかったけれど、傷つけてしまった。自分の軽率さに呆れてしまう。
「その……」
ああでも。なんて説明したらいいのかしら。オーウェン様はもうすぐ運命の恋に落ちるんです! とか? いえ、なんか変な宗教っぽいわね。まずは。
「オーウェン様は、恋というものにご興味がおありでしょうか?」
「ああ」
オーウェン様は頷いた。あるんだ! だったら、オーウェン様にもっとアピールしとけば良かった。そしたら例え短い間だとしても、両想いになれたかもしれないのに。
「そうなのですね。これは、仮定の話なのですが、オーウェン様に新たに好きな人ができたとして──」
「……その仮定はあり得ない」
「えっ?」
「私は、もう二度と新たな恋をする気はないからな」
つまり、私は絶対オーウェン様と両想いになれないってこと!? 恋に興味はあるということは、既に誰かに恋をしているってこと? えええ。めちゃくちゃショックだわ。
「……そうですか。オーウェン様は、一生の恋をされているのですね」
「ああ。……だから、あなたを手放す気はない」
!?!?!? つまり、恋の相手とは何か理由があって結ばれないから、お飾りの妻に私を選んだってことかしら。だったら、私を婚約者に選んだのも、我が家に融資をしてくれたのも納得だわ。……納得、だけど。思わず、涙がでてしまう。まだ告白もしていないのに、こんな間接的に振られるなんて。
「ど、どうした? 迷惑だっただろうか?」
オーウェン様がおろおろと、私の背を撫でた。好きでもない女にも優しくしてくれるなんて。
「好き」
「えっ?」
思わずぽろりとこぼれた言葉に口を押さえる。でも、どうせ振られるならきっぱり、振られた方がいいわよね。それで、お飾りの妻として、関係を再構築しよう。
「私、オーウェン様のことが好きです。愛してるんです」




