にじゅうなな
──この恋を終わらせる準備をしなきゃ。
……なーんて、決めたはいいものの、私、恋の終わらせ方なんて全然わからないのよね。だって、オーウェン様が私の初恋だし。
そんなことを考えながら、一緒に朝食をとっているオーウェン様をチラ見する。
わー、今日も美しい。
美人は三日で飽きるって絶対嘘だわ。オーウェン様を見飽きることは一生来ないもの。
「……どうした?」
オーウェン様が不思議そうな顔で私を見た。慌てて笑みを作り、オーウェン様はどうしてそんなに美しいのか考えていたと、正直に話す。
すると、オーウェン様は頬を赤く染めて言った。
「あなたのほうが、愛らしい容姿をしていると思う」
濃いめの化粧をした私ならともかく、いつもの私は平凡な顔つきだ。それを愛らしいと言ってくれるなんて、なんて優しいんだろう、オーウェン様は。好き。って、違う違う! 私はこの恋を諦めなきゃいけないわけで。でも、好き。
そう、どうしようもないくらい、あなたが好きだ。
最初は好きになったら、愛してるとか、好き、とか甘く囁いて媚びを売ろう! なんて、考えていたけれど。いざヒロインが現れたとなると、この気持ちを伝えていいものか悩む。オーウェン様は優しいから、私が好きとか愛してるとか言ったら、きっとヒロインを好きになっても婚約者という立場にいる私を優先してくれる。
でも、本当にオーウェン様がヒロインに恋をしたのなら、私ではなくヒロインを優先してほしい。具体的には、私との婚約を解消してヒロインと婚約を結ぶだとか。
でも、なんて言ったらいいんだろう。いっそ、ありのまま話す? オーウェン様に好きな人ができたら、その人を優先して下さいね、みたいな。
でも、それってオーウェン様に浮気をすすめているみたいで、なんだか嫌だなぁ。そうだ、浮気! 私という婚約者がいる以上、オーウェン様が誰かを思ったら、それは浮気になるのでは。そして、オーウェン様はそんなこと絶対にしないのでは?
オーウェン様の邪魔になりたくないのなら、やはり。
「……婚約を、解消?」
やっぱり、その方向性かしら。問題はお父様に融資して貰ったお金をどうするか、だけど──。
ガタンッ!
大きくテーブルが揺れてびっくりして、ナイフを取り落とした。地震かしら? と一瞬思ったものの、その揺れの発信源はオーウェン様だったようだ。
オーウェン様は、顔を真っ青にさせて、わなわなと震えている。
「……ダグラス」
「はい」
オーウェン様が震えながら家令のダグラスを呼んだ。
「今日の予定で、特に重要なものは?」
「……ございませんね」
「では、すべてキャンセルだ。私は、」
オーウェン様、どうしたんだろう?
私が首をかしげていると、オーウェン様は私を見つめて言った。
「私は、私の婚約者と早急に話し合う必要がある」
オーウェン様の婚約者。つまり、私? なんだろう。




