表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズも完結】死にたくないので、全力で媚びたら溺愛されました!  作者: 夕立悠理
地雷を回避しましょう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/89

にじゅうご

 「オ──」

リリアン。私の名前をそんなに大事そうに呼んでくれるのは。けれど、その疑問を口に出す前に手を引かれ、走り出す。


 一拍遅れて後ろから、他の鬼たちが慌てて追いかけてくる。



 どのくらい、走っただろうか。



 「よし。掴まって、目を閉じて」

そういって、抱き抱えられ、ぎゅっと目を閉じる。


 ふわりとした浮遊感を感じた後、目を開ける。


 「……もう、大丈夫だ。遅くなってしまって、すまない」

地面に下ろされ、恐る恐る目を開けると、心配そうな蜂蜜色の瞳と目があった。

「オーウェン様」

ああ、やっぱりあなただった。


 周りを見回すと、そこは見慣れた公爵邸の庭だった。

「助けに来てくれて、ありがとうございます。鬼たちは……」

「下位の鬼は、世界を渡れない。だからさっきの彼らは追ってこないだろう」

でも、アレクは。アレクは高位どころか、鬼族の長だ。だからこそ、昼間にもかかわらず、私を拐えたのだろうけれど。


 私の考えがわかったのか、オーウェン様は頷いた。

「ああ。あなたを拐った鬼は、来るだろうな」

やっぱり。また拐われて、今度はすぐに婚姻の儀が進められたらどうしよう。恐怖で震えた私の体をぎゅっと抱き寄せて、オーウェン様は言った。


 「……こちらのほうが、流れる時間が早い。だからまだ鬼が来るまで時間がある。何でもいい。鬼についてあなたが知っていることを話してくれないか?」


 「わかりました」


 私は思い付く限りのアレクについて知っていることを話した。といっても、私は彼についてあまり知らなかったのだけれど。


 でも、オーウェン様は私の話を聞いて安心させるように微笑んだ。

「ありがとう、その情報があれば大丈夫だ」







 オーウェン様が微笑んだ数秒後、アレクの声が聞こえた。

『花嫁』


 「来たな」


私を隠すようにオーウェン様が立つ。そして、アレクめがけて青白い炎を放った。けれど、その炎は一瞬で消え、全くダメージを受けていないアレクの姿があった。アレクの目は怒りで血走っており、とても恐ろしい。


 思わず私がびくりと体を揺らすと、オーウェン様は私の手を握り、囁いた。

「大丈夫だ。……うまくかかったから」


かかった……?



 『どコへやった! 俺ノ花嫁はどコだ!!』


 ? 私はオーウェン様の背に隠れているとはいえ、その存在をアレクが気づかないはずないだろう。疑問に首をかしげている私に微笑むと、オーウェン様はアレクに向き直った。


 「お前の花嫁は、どこにもいない」


 『また、八年前のように邪魔ヲするのか! 狐!!』


 「邪魔なんてしていない。気になるなら、この屋敷中を探しても構わない」


 その言葉を聞き終わる前に、アレクが屋敷の中に入っていく。とても速い速度で、屋敷中を見回っているのが、外からでもわかった。


 でも、いったいどうしたんだろう。私はここにいるのに。


 屋敷中を見て回って私がそのどこにもいないとわかったのか、再びアレクはオーウェン様の前に姿を現した。


 『イない!!』

「だから、言っただろう。どこにもいないと。わかったら、お前の家に帰ってくれないか」


 オーウェン様は諭すような声音でアレクに言った。アレクはぎろりと、オーウェン様を睨み付け、


 『覚えてイろ! この借りは必ズ返す』

そう叫んで、姿を消した。


 「……これで、もう心配ない。あなたが、あの鬼に拐われることはなくなった」

「ありがとうございます、オーウェン様」

でもなんでアレクは私に気づかなかったんだろう。疑問符をたくさん浮かべた私に、オーウェン様は答えてくれた。


 「認識を阻害する術をかけたんだ」

……認識を阻害する術?



 オーウェン様によると、オーウェン様が最初に放った炎は囮で本命は、認識を阻害する術だったらしい。その術によって、アレクは私の姿を私と認識できなくなったそうだ。

「鬼は自分にない物に強烈に惹かれる。惹かれるとそこしか見えなくなるんだ」


 私にあって、アレクにないもの。それは、この凡庸な見た目、だろうか。

「あなたがいっていた。鬼があなたに惹かれた最大の要因は容姿だと。そこでその見た目を誤認するような術をかけたんだ」

なーるほど。それで、アレクに私は見つからなかったわけだ。


 「強烈な術をかけたから、これでもう、あなたが心配する必要はなくなった」

「……オーウェン様、」


オーウェン様に聞きたいことがある。八年前。あなたは、もしかして──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!
連載中です!
― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして 『安倍晴明』みたいなお話ですね! ワクワクしますo(^o^)o
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ