表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズも完結】死にたくないので、全力で媚びたら溺愛されました!  作者: 夕立悠理
地雷を回避しましょう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/89

じゅうなな

 公爵邸に戻ると、オーウェン様が出迎えてくれた。

「大丈夫か? 何か傷つけられるようなことは言われなかっただろうか」

「ただいま戻りました……っう」

 オーウェン様の顔を見たら、一気に涙が溢れてきてしまった。ひとり、認識を改めてくれたことはとても嬉しかった。けれど私は、それ以上のひとのオーウェン様に対する評判を下げてしまっただろう。オーウェン様は愚鈍な娘を婚約者として迎えたと。私の立ち回りが甘いせいで。


「ごめんなさい。……ごめんなさい、オーウェン様」

 私が泣きながらそう謝ると、オーウェン様は、柔らかく微笑んだ。


 悔しい。あなたの素晴らしさを、みんなに知ってほしかった。そう思うのは、私のエゴかもしれないとわかっているけれど。でも。


「あなたが私のことを思ってくれるのは、嬉しい。だから、あなたが私のことをわかってくれていたら十分だ」

 優しい言葉。でも、それは。これ以上ないほど、悲しい言葉でもあった。そんな悲しい言葉を言わせたかったわけじゃない。


 なにも言えずにまた涙を流した私の背を、オーウェン様は優しく撫で続けてくれた。




 そんな失態をしでかしたお茶会から、数日が経った頃、とある人物が私を訪ねて公爵邸にやってきた。


「こんにちは、リリアン様」


 鈴を転がすような声で私に微笑んだのは、ナタリー伯爵令嬢だった。

「こんにちは、ナタリー様」

 ナタリー伯爵令嬢は厚化粧の力がないと美人にはなれない私と違って、華やかな顔立ちをしている。微笑むと、まるでお姫様や妖精のようだ。


 ナタリー伯爵令嬢の手土産である質の良い茶葉を受け取りながら、どうして、彼女は私を訪ねてくれたのだろう、と首をかしげる。するとその疑問が顔に出ていたのか、ナタリー伯爵令嬢は、少し気恥ずかしそうに頬を桃色に染めた。


「実は、私、以前のリリアン様のお話で、すっかりオーウェン様のファンになりましたの。だから、またお話を聞かせて頂けないかと思って」

「! もちろん、喜んで」

 彼女はオーウェン様に対する認識を改めてくれたのではないか、と考えていた。けれど、わざわざ訪ねてくれたということは、社交辞令ではなく本心だろう。だから、とても嬉しかった。


 お茶とお茶菓子を頂きながら、ゆっくりとオーウェン様と過ごした日々のことを話す。そのどの話にも彼女は、瞳を輝かせて頷いて聞いてくれた。


 話すネタもつき、そろそろお開きかしら。そう思っていたとき、オーウェン様が中庭を訪れた。どうやら王城でのお仕事が終わって、帰ってきていたらしい。


「オーウェン様」

 出迎えができず、ごめんなさい。そう謝ろうとすると、オーウェン様は微笑んだ。

「良かった、あなたの友人が来ていたのか。邪魔をしてしまい、すまない」

 オーウェン様はあのお茶会に参加していた令嬢が来たとだけ聞いて、私がいじめられているのではないかと、急いで駆けつけてくれたようだった。


「友人?」

 思わぬ言葉に私がぽかん、と口を開ける。

「? だって、何の話かはわからないが、あなたはとても楽しそうに話していた。友人じゃないのか?」

 それはオーウェン様のことを、話していていたからだ。好きなひとの話をするのは、楽しい。けれど、友人と言われて、友人じゃない、と答えるのもナタリー伯爵令嬢に失礼かしら。


 そう思っていると、ナタリー伯爵令嬢は、桃色に頬を染めて、大きく頷いた。

「友人です!」


 そのあまりの可憐さに、息を飲む。そうか、私とナタリー伯爵令嬢は友人なのか。そんなに、嬉しそうな顔で言われると、とても照れる。


「……そうか」

 ナタリー伯爵令嬢が何に頬を染めていたのか全くわかっていなかった私は、オーウェン様が目を冷たく細めたことに全く気付かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!
感情を殺すのをやめた元公爵令嬢は、みんなに溺愛されています!
連載中です!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ