じゅうに
公爵邸に来てから二ヶ月が過ぎた。
オーウェン様の心だってゲットしちゃうんだから! なーんて意気込んでみたのはいいものの。いったいどうすればいいのかしら。私だって、結婚適齢期の令嬢。この年齢に至るまでには、恋や愛とまでは呼べなくともそれなりにそういった経験を積んできた──と、自信をもって言えないのが残念ね。
いえ、そんなことはないわ。ほら、思い出して。私も恋のひとつやふたつくらい──ないわね。
なんてこった。
顔がいい男性たちを眺めては、ため息をもらすようなことしかしてきてない!
なんといっても、オーウェン様はラスボス。その攻略難易度は激難だったはず。攻略法とか、全然覚えてないけれど。
でも、それで良かったのかもしれない。ここは、現実だ。現実には最初から攻略法なんてないのだから。
いえ、でも。地雷くらいは覚えておくべきだったわね。そのせいで、私は常に命の危機に怯えている。体重だって、こんなに落ちて──。
「!」
声にならない悲鳴をあげる。えっ、嘘でしょ!? 嘘よね。もう一度、おそるおそる体重計に乗ってみる。けれど、そこには残酷な事実があるのみだった。
公爵邸に来てから今までの生活を思い出してみる。
そういえば私、食べたら寝て、食べたら寝ての繰り返し。特に食事量は、以前に比べて増している。だって我が家は貧乏だったけれど、公爵家だもの。そんなことは当然なく、食事だって豪華でなによりとても美味しい。
でも、このままじゃ豚になっちゃうわ! それでもって、オーウェン様に燃やされたらただの焼豚じゃないの!!
これはまずい。非常にまずい。
私、リリアン、オーウェン様の心をゲットするために、ダイエットします!