じゅう
かわいそう……? 私はわかりやすく幸福な顔をしていたはずだ。それなのに。まだ伝わってなかった人たちがいたのか。私はガッカリしながら彼女たちに向き直る。
「いったい、どのようなところがそう思われた原因ですか?」
「まぁ、怖いわ。私たちはただ、事実を言っただけですのに」
主格の令嬢がねぇ、と同意を求めると、周りの令嬢たちも次々に頷いた。
「それは顔は少しだけ美しいか知りませんけれども、あんな化け狐の血を引く方に嫁がされるなんて。私たちこれでも、あなたに同情していますの。だから、話し相手くらいにはなって差し上げてもよろしくてよ」
なるほど、なるほど。つまり、彼女たちは、公爵の婚約者である私と親しくしたいと。彼女たちは私よりも格上の貴族だ。けれども、尾を振る相手を間違えちゃいけない。私が媚びるのはオーウェン様に対してだけだ。
「話を聞いてくださるなんて、ありがとうございます! 私、ずっと誰かに話したかったのです」
「そうでしょう、そうでしょう」
私の返答に、彼女たちは満足そうに微笑む。
「オーウェン様がどれだけ優しくて、どれほど私は幸福か」
「……は?」
けれど、私の後半の言葉に彼女たちは、顔をしかめた。私はまだ、あまりオーウェン様のことを知らないけれど。それでも、知っていることもある。
「何をおっしゃってるの?」
「ですから──」
私のために用意された部屋は、家具も私好みだったし、それになにより私の身長にあわせて揃えられていた。他にも私のために揃えられた、ドレスや宝石も使用人任せではなく、オーウェン様自らが選んでくれたのだ。それから、私が不安な顔をすると、自分がついてる、と言ってくれたこと。
私は嬉しそうに頬を染めて、ペラペラと話す。
「……もう、やめてくれ」
恥ずかしげな声に振り向くと、オーウェン様だった。
「オーウェン様!」
私はオーウェン様に駆け寄ると満面の笑みを浮かべた。
「……と、いうわけで、私とっても幸せです」
「そ、そう。それなら、良かったわ」
そういって彼女たちはすごすごと帰っていった。
「オーウェン様、飲み物ありがとうございます」
「いや、礼を言うのはこちらの方だ」
? 私なにもしてないけれど。
「私と婚約してくれて、ありがとう。あなたで、良かった」
そういって微笑むオーウェン様のなんと美しいことか。あぁ、本当に激写できないことが悔やまれる。
「私も、オーウェン様が婚約者で嬉しいです」
たとえヒロインがオーウェン様を攻略するまでのつかの間のことかもしれないけれど。私はあなたと愛し愛されたかった。
その後は飲み物を飲んだあと、オーウェン様と踊って、とても楽しい時間を過ごした。