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さよならいとしのペンギンライフ  作者: 天川さく
第5章 さらばペンギンライフ
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2-2 地質屋の利点は(後編)

「さっき岩ポンの前で元気さんが電話していた相手って教授?」


 教授は弱々しい笑みを浮かべ、元気は黙って肩をすくめた。ちょっと待って。それって岩ポンの自分勝手な思いつきに教授が責任を取るってことで。


「うっわ、ごめんなさい。普段からとっても迷惑をかけているのに。さらに?」

「何がさらにだ?」


 岩ポンが背後から声をかけた。大きな握り飯を頬張っている。


「あ、ずるい。それどうしたんですか?」

「コンビニで買った。北海道のコンビニはすげえな。停電だっつうのに、店先でガスで米を焚いて握り飯を作ってたぞ。塩にぎりだけでこんだけ美味いって北海道最強じゃん」

「北海道が誇るコンビニエンスストア『サコマ』ですね? あそこは普段からほかほか弁当も店舗手作りで提供していましてね」


 いいつつ教授は「ようこそ北海道へ」と岩ポンへ手を差し出した。おお、と岩ポンは右手を空けて教授へ向ける。


「迷惑をかけるな」

「お気遣いなく。わたしもワクワクしていますので」


 違いねえ、と岩ポンは笑う。冗談ではない。これ以上ぶっとんだ話に膨らんだら始末におえない。


「先生、一番最初に招へい講演を入れましたから。先生、喋ってくださいよね。午後一時かっきりスタートです」

「タイトルなんだっけか」


 ちょいとお、と涙目になる朋子に「冗談だ」とビニール袋を手渡した。ほかほかの塩にぎりが十個近く入っていた。


「お前が喋りやすいように場をあたためておいてやる。お前は握り飯でも食って力をつけとけ」

「本当に止めて」


 それでもありがたく握り飯を、はむっ、と頬張る。美味しい。塩加減が絶妙であった。おれも、と元気が握り飯を手にとり「サコマのこのデカいサイズは相変わらず最高だな」と目尻をさげた。通りすがりの木橋へ握り飯を差し出すと「助かりました」と泣きそうな顔をされた。


「やっぱり腹が減ってはですね。特に米の力は偉大だなあ。ああ、米って本当にうまいなあ」


 うんうん、と朋子と元気、それに教授も木橋へうなずく。ところで元気さん、と木橋が握り飯から口を離す。


「あとでつきあってください。SNSで情報が回ってきまして。中央購買に道大の大学生協全店の購買商品を集めてあるとのことです。ひとり五点まで。午後二時終了」

「それって本物か? 誤情報が出回ってるしょや」

「大学生協アカウントを使ってわざわざデマを飛ばさないでしょう」

「だけどそれを玄関ロビーにメモで掲示したら、やっぱマズいよな」

「いちおう学内用の情報ですからね。まあ、観光客じゃなければ買いにいってもいいとは思いますが」


 長万部くん、と教授が加わる。


「代金はわたしが出しましょう。適当に買えるだけ買ってきてください。それをフリースペースにおいて、希望者に食べてもらいましょう。困ったときはお互いさまですしね」


 教授、と朋子と元気と木橋は教授を拝む。尊い。なんという尊さだ。この人のもとで働けてなんてしあわせなんだ。とたんに頭を小突かれた。


「俺だって握り飯を買ってきてやっただろうが。なんだよ、そのあつかいの差は」

「どうしてそこで張り合う? とういうか先生まだいたの? 準備に入って」


 くっそ覚えてろよ、と捨てゼリフをはいて岩ポンは講義室へ向かった。

 こうして敢行学会は開始したのだ。

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