起承転生
「お願いしますッッ!!!僕を!!!!転生させてください!!!」
ドアを乱暴に開けて事務所に入ってきたのは
髪の毛がボサボサの、学生らしき男の子だった。
「よー威勢がいいねえ。まずは事情聞くからそこに座んな。」
男の子に着席を促すのは私の上司。ここの長。
転生師のハニー・ドロップ・イングウェイ
見た目は金髪碧眼の小学生である。
「で、なんで転生したいの。あ、チョコちゃんコーヒーお願い。この子には───何がいい?」
「...紅茶」
「ミルク?レモン?砂糖いる?」
「...ミルクと砂糖を」
「はいよー。んじゃチョコちゃんお願い」
「はーい」
チョコは私のあだ名。
本名はエレイナ・B・チョコミント
転生を望んでここに来たけど、色々あって雇われの身
「はいお待たせしましたー。紅茶ここ置くねー。砂糖足りなかったら言ってね」
「...ありがとうございます。」
「さてと。ゆっくり話を聞こうじゃないか。現世への不満はなんだ?学校か?恋愛か?家庭か?」
「全部ですよ。学校では虐められて、好きな子はいじめっ子に取られ、家では親が喧嘩ばっかり。何も楽しいことなんて無い。転生したら勇者になってドラゴン倒したり出来るんでしょ!?だから、お願いします。」
「ふぅん...まず誤解を解いておこうか。『転生』は約束された道を渡すものでは無い。いわば『ガチャ』だ。どんな世界に行くか分からない。種族も人間とは限らない。家庭環境が悪いかもしれない。奴隷として産まれるかもしれない。一生を暗闇の中で過ごすかもしれない。それが転生だ。」
「そんな...」
「正直、お前の人生の評価は中の上だ。」
「どこがですか!下の下だ!」
「異世界を見ている私が言ってるんだぞ。お前より苦しい状況下に置かれている生命は5万といる。いや、数え切れんな。」
私も、これを聞いて転生を断念した。
仕事を失い、恋人を失い、親に見放され、果ては生きる気力を失った私を、この人は突き放した。
だけど。
「お前、ここで働かないか?」
「は?」
私を、拾ってくれた。
あれ?
「俺がここで働く?は?」
「えぇぇぇえ!?!?!?この子雇うんですか!?」
「こいつの人生を眺めてみたが、こいつは面白いぞ。思ったより救いようがない。どうやったらそんなに追い詰められるんだ...ふふっ」
「笑ってんじゃねえよ...俺がここで働く?冗談だろ。お前はそうやって助けを求める人間を突き放すのかよ!」
「私は本気で言っているぞ?」
「!!」
「ま、そろそろ人手が足りなくなってきた頃ですからねー。増えるのはありがたいかも。」
「だろ?しかもこいつ。おまけ付きだ。」
「おまけ?」
「少年、背中を見せろ」
「...背中?」
「まあいいから、上裸になって背中を見せろ」
「...はい」
脱ぎ終わった男の子の背中に人差し指を当て目を瞑るハニーさん。
「譲血」
そう呟くと、男の子が少し痛がる。
「終わったぞ。服着ろ」
「なんなんだよ...」
服を着終わった男の子。すると体が突然青白くほのかに発光し始める。
「なんなんだよこれ!」
「やはりな。」
「なにしたんですか!?これ!!」
発光を続ける体から、突如光が飛び出してくる
「キュイ!」
「「は?」」
光は形を変えてゆき、やがて猫になった。
「はは!可愛いだろう。これがお前の精霊だ」
「え...えぇ...」
「一気に仲間が2体も増えたな!喜べチョコ」
「1人と1匹でしょ!まあありがたいですけど」
「少年、というわけで今日からお前はここの社員だ。学校や家をどうするかはお前の自由だ。好きにしろ。待遇は追って通知する。いいな。」
「...分かりました」
今気付いたんだけどこの子承諾してなくない?
大丈夫?私の上司勝手じゃない?
とは思ったが言う勇気は無かった。
「じゃ、これからよろしくね?」
「よろしくお願いします...?」
「ふふーん。じゃあ歓迎パーティでもやるか!」
「はい!じゃあ準備しますね!」
ピンポーン
すみませーん
「おっと、次の客が来てしまったようだな。パーティはお預けだ。」
「じゃ私出迎えますんで、ハニーさん座ってて。あー君は...そうだな...ま、私たちの仕事見てて!」
「は、はい」
すみませーん
「今出まーす!!」
転生したほうが、いい世界で産まれたかもしれない
転生したほうが、辛かったかもしれない
でも私は、同じ世界でやり直せた。
「おい何をもたもたしてる、客を待たせるなよー」
「はーい!ごめんなさい!」
辛い状況に置かれているみんなも、やり直せることを知って欲しい。
だから私はこの人と働いてるんだ。
「いらっしゃいませ!転生しますか?」
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読んでくれてありがとうございます!!!!
不定期ですが頑張って書きますのでよろしくお願いします!!!!!
PS.占い師に前世は石鹸と言われました。