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Possibility Online

作者: 幻視図書

 季節は春なのに寒い中、えにしは駅の構内にあるベンチで座ってスマホを触っていた。彼のスマホには妹であるかおりとの会話が表示されていた。

『もうすぐ山田駅! お兄ちゃん待っててね!』

 少し時間が経過すると電車が到着する音が聞こえてきた。縁は香を迎えに行くために改札口まで移動した。

 改札口の前に移動するとキャリーバッグを持った香を見かけた。香は縁の姿を見つけるや否や切符を改札口に突っ込むと縁に向かってきた。

「久しぶりっ! お兄ちゃん」

「久しぶりだね。香」

 香と合流した縁は香のキャリーバッグを持ち、香を祖父の家へと案内し始めた。

「香、高校合格おめでとう。天神なんだっけ?」

「うん。こっちのほうが高校から近いからね。おじいちゃんの家から通うことにしたんだ」

「そっか、香がこっちに住むとなると爺ちゃんも喜ぶな」

「そうだね。『香が家に住むなんてまだまだ長生きできるわい』って言いそうだね」

「言ってそうだなじゃなくて、言ってたよ」

 縁と香が祖父について談笑していると祖父の家が見えてきた。香は急ぎ始めた。そんな香りに縁は「先に行ってもいいよ」と言った。香は縁のほうを見てうなずいて駆けだした。縁はゆっくりと祖父の家まで歩き出した。


「ただいま、爺ちゃん」

「お帰り縁。香なら荷解きをしているよ。今ならアレを渡すいいチャンスじゃないかな?」

「そうかもね。じゃあ渡してくるよ」

 玄関にて縁は彼の祖父と会うと、彼の部屋へと戻っていった。


「香、入っていいかな」

「いいよ」

 縁は左腕できれいにラッピングされた少し大きな箱を抱えて香の部屋のドアをノックした。縁が香の部屋に入ると、荷解きの途中だった香がいた。

「お兄ちゃん、ボクに何の用?」

「実は香に渡したいものがあってね」

「渡したいもの?」

 香の質問に縁は左腕で抱えていた箱を香に渡した。

「香、入学おめでとう」

「開けていい?」

 香の質問に縁はうなずくと、香はラッピングを破った。そこにはヘルメットみたいな形をしたなにかがあった。それを見た香は微妙そうな表情を浮かべた。

「……VRゲーム機かー」

「母さんから香が欲しがっているって聞いたから買ったんだけど、気に入らなかった?」

「気に入らなかったわけじゃないんだよ。……実は」

 香は手に持っているゲーム機を床に置くと、開いている段ボール箱からある物を取り出した。それは今しがた縁がプレゼントしたゲーム機と同じ物だった。

「……実はね、お母さんが高校受かったからプレゼントってもらったんだ」

「そうだったのか」

 (母さん渡したのなら渡したって言ってくれよ!)

「そうだ!」

 縁が自分の親に毒づいていると香がいきなり声を出した。すると香は手に持っているゲーム機を縁に差し出した。

「お兄ちゃん、これボクからの入学祝い!」

「……?」

「だからね、ボクと一緒に『Possibility Online』を始めよ?」

「『Possibility Online』を僕がか?」

「そうだよ、ボクが2台持っていても遊べないからね。もったいないし、あと、お兄ちゃんと久しぶりに一緒にゲームがしたいしね!」

「……まあ、やってみてもいいかな」

「ほんと! それじゃあ、さっそくプr「爺ちゃんが夕飯作っているからあとでな」……はーい」

「とりあえず、僕は爺ちゃんの手伝いに行くけど、遊んでちゃだめだからな」

「はーい」

 縁はそういうと香の部屋を出て、自室のベッドにゲーム機を置くと、祖父の料理の手伝いに向かった。


 夕食が終わり、縁は自室に戻ると、VRゲーム機の箱を開けた。ヘルメットみたいな形をしたゲーム機をベッドに寝転がって被ってみると、ユーザ登録画面が出て、縁はユーザ登録を済ませた。そして、Possibility Onlineを起動できるようになった。

 (いざ! Possibility Onlineへ!)

 縁がそう思いゲームを起動すると、浮遊感に似た感覚が縁を襲い、縁の意識が遠のいた。


 縁が目を開けるとそこは神殿のような場所で、目の前には長い銀髪の女性がいた。

 『ようこそ! Possibility Onlineへ。ここでは貴方の分身であるアバターの作成をいたします』

 女性はそう言うと、ウインドウが表示された。

 『お決まりになりましたら、【OK】を選択してください』

 女性はそう言うと姿を消した。

「とりあえず決めてみようかな」

 ウインドウには、「1から作成」と「リアルから変えて作成」があった。

「香と遊ぶのだからある程度、容姿がわかる方がいいかな」

 縁は「リアルから変えて作成」を選択した。選択するとウインドウにはファンタジーのゲームにありそうな服装をした縁の姿が表示されていた。

「瞳の色と髪の色を水色にするだけでいいかな?」

 縁は髪と瞳の色を水色に変えると【OK】を選択した。「本当によろしいですか?」と表示されたが縁はもう一度【OK】を選択した。

 縁が二度目の【OK】を選択した後、一瞬周りが暗くなった、明るくなると目の前に先程の女性が再び現れた。

『アバター作成お疲れさまです。貴方の姿をアバターに反映させていただきました』

 女性がそう言う時になった縁は自分の服装を見てみた。先程ウインドウに表示されていた服を着ていた。

『次は自分の気持ちに素直になって、4つの質問に答えて下さい』

「質問ですか?」

『質問といっても4つのうち2つは「はい」か「いいえ」で答えられる質問で、残り2つは簡単な質問ですからね』

 女性はそう言うと、どこからともなく1枚の紙と羽根ペンを取りだした。紙は女性が書きやすそうな位置に浮いていた。

『まず1つ目、貴方には欲しいものがあります。ただし、貴方の欲しいものはなかなかお目にかかれません。ある日、貴方の欲しいものを他の人が持っている瞬間を目撃しました。貴方は譲ってもらうよう交渉をしましたが、その人は拒否しました。さて、貴方はその欲しいものをどんな手を使ってでも手に入れますか?』

(譲ってもらえないのなら僕は諦めるかな)

「いいえ」

『2つ目の質問です。あなたは静かで寒冷な海辺よりも、そよ風が吹く温暖な草原が好きですか?』

(草原よりも海のほうが僕は好きかな?)

「いいえ」

『3つ目の質問です。【馬車】、【船上】、【騎馬】どれがいいですか?』

 縁は香から聞いていたことを思い返した。この質問はチュートリアルを受ける場所の指定であり、縁はゲーム上での集合場所を香と決めていた。

 「【船上】でお願いします」

 縁の答えに女性は「わかりました」と頷いた。

『それでは、最後の質問です。貴方のプレイヤーネームを教えてください。尚、プレィヤーネームは変更を行うためには別途料金が必要です。なので、他者が不快になるような名前もしくは本名での登録はおやめ下さい』

(プレイヤーネームは夕食の時、香と決めたな)

 縁は表示されたウインドウに香と考えたプレイヤーネームを入力した。

『それでは「エン・クレナイ」でよろしかったでしょうか?』

 女性の質問にエンは頷いた。

『それではエン様、最後になりましたが、貴方の可能性である5つのスキルと、最初に使用する武器を選択してください』

 エンの前に再びウインドウが現れた。エンは興味があるスキルを5つと、武器の選択をした。

『武器は[剣]、スキルは【水魔術】【水属性強化】【隠密】【剣術】【魔力強化】でよろしいでしょうか?』

「はい」

「そうですか」

 女性は微笑むと女性の右手に鍵が出てきた。女性は鍵を落とすと女性の後ろから扉がせりあがってきた。

『さあ、この扉を開けてお進みください』

「はい」

 エンは扉を開け、中に入っていった。


 扉の中に入ると、先ほどの白い空間とは全く異なり、うっすらと潮の匂いが漂う港町にエンはいた。少し周辺を見渡してみるとにぎやかで活気づいていた。

 (この人たちの中にAIがいるのかな? 全然見分けがつかない)

 エンが考えているとエンの目の前に【メルさんからの通信です。応答しますか?】と書かれたウインドウが表示された。

 エンは【YES】を選ぶと『お兄ちゃんキャラメイク終わった?』と少し声色が違うが聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「終わったよ」

 『港町選んだよね?』

「選んだぞ」

『じゃあ大船着き場に来て! ボクは出っ張ってるとこに座ってるからね!』

 そう言い終わるとメルからの通信は切れた。

(そもそも、大船着き場の場所が分からないんだけどな)

 エンが周りを見渡してみるが、船が止まっている場所が多く大船着き場という情報だけではわからない。

(しょうがない、周りの人に聞こうかな)

 エンは周りを見渡して近くにいた男性に話しかけた。

「すいません。大船着き場に行きたいのですが、どこに行けばいいのですか」

「大船着き場だったら、あの青い屋根の建物がある場所がそうだよ」

 男性が指を差した方向をエンは見ると青い屋根の大きな建物が見えた。

「ありがとうございます」

 エンは男性にお辞儀し、その場を去った。男性はにこやかに笑い、エンを見送った。

(親切な人だったな)


 エンが大船着き場に近づくにつれて周囲の人が増えてきた。エンが大船着き場に着くとかなりの人数が大船着き場にいた。特徴としては皆、エンが今着ている服と同じようなデザインだということだ。エンはメルを探し始めた。

 ボラードに赤と緑が混ざっていてる髪の少女がいた。なぜか少女は濡れていた。少女はエンに気が付くと立ちあがり、大きく手を振り始めた。エンは小走りで少女に近づいた。

「お兄ちゃんさっきぶり。それとこっちでは『メル』だからね」

「メル、早いね。……もしかして夕飯前に遊んだ?」

「あ、遊んでないよ。……キャラメイクはしたけど」

 メルの返答にエンは呆れていた。

(それも遊んでいるに入ると思うけどな。……まぁいいか)

「……それで、この後どうするの?」

「船着き場に来たんだから、船に乗るんだよ。お兄ちゃん」

 メルが指さした先にはいかにも中世な大きな船が停泊していた。

「船? でも、乗船券なんて持ってないけど……」

「乗船券、アイテムボックスに入ってたよ。船上を選んだ人には乗船券が支給されるんだって」

「アイテムボックスってどうやって開くんだ?」

「『メニュー』って念じるか、声に出せばメニュー画面が出てくるよ。その中の【アイテム】を選択すればアイテムボックスを開けるよ。……お兄ちゃん説明書読んだ?」

「そう言えば読んでなかったな。『メニュー』」

 エンがメニューと口に出すとエンの目の前にメニュー画面が表示された。エンは【アイテム】を選択すると、[ショートソード]と[乗船券]が表示された。エンは[乗船券]を選択してみるとエンの手には乗船券が握られていた。

「……凄いなコレ」

「ほんと、すごいよね」

 エンとメルは談笑していると背の高いセイラー服を着た男性が船から降りてきた。

「乗船される方は私にチケットをお見せください!」

 男性は大きな声でそう言った。

「もう乗れるみたい、お兄ちゃん行こっ?」

「そうだな」

 エンとメルはセイラー服の男性の元へ向かった。


「乗船券を見せてもらってもよろしいでしょうか?」

 エンとメルはそれぞれ乗船券をセイラー服の男性に見せた。

「よろしい、それでは良き船旅を」

 エンとメルは船へと入って行った。

 船の中は外見通り広く、豪華な装飾品が多く綺麗だった。

「すっごーい! こんな豪華客船始めて乗ったよ!」

「そうだな。メル、とりあえずどうする?」

「船の中見てくる!」

 メルはそう言うと走りだした。エンはメルの突然の行動に戸惑っている間にメルの姿は見えなくなった。

「……まったくもう」

(とりあえず甲板に行こうかな)

 エンは甲板に向かって歩き出した。

 甲板にはまだ出航していない影響か人は少なかった。

「時間になりました! これより乗船券の確認を終了し、5分後に出航します!」

 タラップの前で乗船券の確認をしていた男性の大きな声がエンのいる甲板まで聞こえてきた。出航するという声にエンはワクワクを隠せないでいた。

(もうすぐ出航する楽しみだ)

 5分後、ゆっくりとだが船が進み始めた。


 エンが甲板から海を眺めていると、「お兄ちゃーん!」とメルが駆け寄って来た。

「メル、どうしたんだ?」

「お兄ちゃんを見かけたから来ただけだよ」

「そうか」

「良い眺めだね」

「そうだな」

 メルと一緒に海を眺めているとふと疑問に思った事をエンは聞いてみようと思った。

「そう言えば、さっきお前は濡れてたんだ?」

 エンの質問にメルははにかみながら答えた。

「えっとね、さっき座ってた所で足をフラフラって動かしてたらね、海に落ちちゃったんだ」

「大丈夫なのか?」

「何とか上がってこれたから大丈夫だよ」

「それならいいけど」

 突然船のアナウンスが聞こえてきた。

『乗船中の方へ連絡です。至急甲板までお越しくださいませ』

 そのアナウンスの後、大体30人ほど甲板までやって来た。やはりエン達と同じような服装だった。最後に1人の男性がやって来た。乗船券の確認を行っていた男性だった。男性は右腕を挙げ、下手な敬礼を行った。

「お集まりいただきありがとうございます。Possibility Online運営の『松本』であります!」

 右腕を下ろすと松本は笑みを浮かべ、「セイラー服を着たのだから1回やってみたかったんですよね」と話した。

「皆様にお集まりいただいたのはメニュー画面の説明を行うためです。メニュー画面の開き方は皆さん把握されていると思うので割愛します。メニュー画面には、所持金と【アイテム】・【ステータス】・【スキル】・【フレンドリスト】・【タイム】・【ログアウト】の選択ボタンがあります。こんな風にメニューは見せることも可能です」

 松本は自分のメニュー画面を拡大して説明を受けている人に見せた。

「【ステータス】とはその名のとおりステータスの確認が出来ます。ステータスは【HP】・【MP】・【ATK】・【PWR】・【DEF】・【SPD】の6つを確認できます。そして装備の変更もここで行います。例えば今私の装備は[ショートソード]ですが、これを[デッキブラシ]に変更します」

 松本は【ステータス】を選択し、[ショートソード]から[デッキブラシ]に変更した。

「また装備できるアイテムは武器に関しては基本的に1つか2つで防具系統は『頭』・『胴』・『靴』は1つだけで、腕に関しては2つまで装備できます。アクセサリーの装備制限個数は基本的にはありません。また、装備していなくても身に着けている武器でも攻撃は行えます」

「また状態異常もメニュー画面か【ステータス】で確認することが出来ます。今、私は船に酔ったのか【酔い(小)】の状態異常が発生しています」

 メニュー画面を見てみると確かに【酔い(小)】が表示されている。

「こんな時は【アイテム】から薬を出して飲んで治せばいいですよね」

 松本は[酔い治し]を取り出し、飲んだ。メニュー画面から【酔い(小)】は消えていた。

「【スキル】とはこのゲーム内で獲得したスキルの確認です。スキルにはアクティブとセレクトの2種類が存在します。アクティブは常に発動しているスキルのことで【スキル】からONとOFFの切り替えが出来ます。セレクトは魔術などの文字通り選択して発動できるスキルの事です。このセレクトは【スキル】での選択か、声に出して頂くと発動します。それとスキルは進化か、合体を行えます」

「【フレンドリスト】とはフレンドがログインしているかどうかの確認と、フレンド様との通信による会話が行えます。是非活用して頂きたいですね。最後に【タイム】ですが、Possibility Onlineの1日は現実での8時間ほどです。【タイム】にはこちらの時間と、現実の時間が表示されています。またタイマー機能もあります」

「最後に【ログアウト】ですが、これは文字通りログアウトする機能です。Possibility Onlineではどこでもログアウトはできるのですが、ログイン場所はログアウトした場所になるので戦闘中にログアウトしてしまった場合、死んでしまう恐れもあるので気をつけて下さい」

 ふぅと1息ついた松本はアイテムから液体の入った瓶を取り出し、口を付けて飲んだ。

「私からの説明は以上です。まもなく目的地に到着いたします。それでは良きPossibility Onlineライフをお過ごしください」

 松本は船内へ戻って行った。彼の言う通り甲板から城下町の港が見えてきた。

(話長かったな)

 エンはそう思った。


 船から降りたエンとメルは城下町を散策していた。

「これからどうする?」

「このゲーム、モンスター出るみたいだから、モンスター倒しに行きたい! 行くよお兄ちゃん!」

「ちょっとメル!?」

 メルはエンの腕を掴み引きずりながら走りだした。

 城下町の外は広大な草原が広がっていた。メルは相変わらずエンを引き摺り走っている。

 ようやくメルが止まった場所は森でそこにはバランスボールくらい大きい水色のゼリー状の塊が動いていた。メルは満身創痍なエンの腕を離すと[ショートソード]と[スモールシールド]を取り出し、ゼリー状の塊に斬りかかった。しかしゼリー状の塊に刃をはじかれた。エンは地面から起き上がり、装備しておいた[ショートソード]を取り出した。

「お兄ちゃん、スライムだよスライム! うーっ楽しくなってきた!」

 楽しそうなメルは【ファイアボール】を唱えると魔法陣から火の玉がスライムに向かって飛び出した。火の玉はスライムにかなりダメージを与えていた。

(僕もやってみよう)

「【ウォーターボール】!」

 エンも【ウォーターボール】を発動したのだが、『今は発動できません』とログが表示されるだけで何も起こらない。

「【ウォーターボール】!」

 再び『今は発動できません』とログが表示されるだけで何も起こらない。メルの攻撃をかいくぐったスライムは攻撃してこないエンを標的に定め、勢いよくエンに突進した。

「【ウィンドボール】!」

 スライムがエンに接触する寸前にメルの放った風の魔法がスライムにぶつかりスライムのHPが0になり消滅した。スライムがいた場所にはスライムより小さいゼリー状のものが落ちていた。メルはゼリー状のものを取るとこちらを見た。

「大丈夫? お兄ちゃん」

「……大丈夫だよ」

 エンは土汚れを払いながらそう言った。

「ボクはまだモンスターと戦おうかなと思うけど、お兄ちゃんはどうする?」

 魔法が使えなかったことがショックでエンはモンスターと戦おうと思う気力が無くなってしまった。

「僕はやめておくよ」

「そっか」

 メルに背を向けるとエンはとぼとぼと城下町へ帰った。


「はぁ」

 エンは城下町を歩いていた。彼の表情は暗く落ち込んでいた。

「どうして、水魔法が発動しなかったのかな」

 エンが考えながら歩いていると、大きな荷物を抱えた女性とぶつかった。エンにぶつかった衝撃で女性は尻もちをついた。

「あっ」

「すみません、大丈夫ですか?」

「大丈夫、……あっ」

 女性が見た先には鉱石が大量に落ちていた。どうやらエンとぶつかったときに抱えていた荷物を落としたようだ。女性は鉱石を拾い始めた。

「て、手伝います」

「助かる」

 女性の鉱石拾いをエンは手伝った。

「助かった。ありがとう」

「いえ、元はと言えば僕が悪いので」

「それでも感謝している。ついてきて」

「え? うわっ」

 女性は鉱石の入った袋を片腕で抱えて、反対の腕でエンの腕を掴むとどこかへ連れて行こうとした。引っ張る力は強く、エンでは抵抗できそうになかった。


 エンが連れられてきた場所は【鍛冶屋‐黒職人‐】と書いてある場所だった。女性は鍵を開け入った。エンは女性の後を追うように入った。

 店の中は広く、武器や鎧などがきれいに飾ってあり、奥には工房があった。女性は真ん中にあったテーブルにエンを座らせた後、エンの向かい側に女性は座った。

「ようこそ私の店へ」

「鍛冶職人なんですか?」

「そう。……そういえば自己紹介してなかった。私はエッジ・フレア、エッジって呼んで」

「僕はエン・クレナイです。僕もエンで大丈夫ですエッジさん」

 自己紹介を行った時、エンは改めてエッジを見た。エッジは銀色の長い髪に赤い眼をしていた。服装は黒い厚手の服を着ていた。

「エンはPossibility Onlineは始めたばかり?」

「そうですけど」

「初心者の服を着てたから聞いただけ」

(コレ初心者の服だったんだ)

「……なにか悩みごと?」

「えっ! どうしてそれを?」

「ぶつかる前に浮かない表情をしてたから。相談になら乗る」

(エッジさんなら分かるかな?)

「実は……」

 エンはスライムとの戦闘の一部始終を話した。エッジは目を閉じて考えた後、「待ってて」と工房に入って行った。

 少しするとエッジが水の入った瓶を持ってやって来た。

「エン、これ持って」

「瓶を? わかりました」

「エン、【ウォーターボール】たぶん選択できると思う」

 エンはメニュー画面を開き、セレクトスキルの欄を見た。【ウォーターボール】はエッジの言う通り発動可能になっていた。

「【ウォーターボール】が使える! 何でですか?」

「このゲームの魔法はね、『媒体』が必要。例えば炎魔法の発動には周りに『酸素』が必要になる。水魔法の場合、身の回りに『液体』を所持する必要がある。さっき聞いた状況だと、エンは液体を持っていなかった。だから【ウォーターボール】が発動できなかった」

「なるほど、魔法には『媒体』が要るんですね」

「ちなみに『媒体』は発動する度に少しずつ消費される。だから、多めに液体を持っていく必要がある。ちなみにアイテムボックスに水を入れているだけじゃ水魔法は使えない」

「そうなんですか。どうやって水を持ち運ぼうかな」

 エンのその言葉を待っていたのかエッジはにこりと笑った

「良いものがある」

 エッジは商品棚から大きいベルトを取りだした。

「これは[アルケミック・ホルダー]。試験管とかをアクセサリー扱いにして装備できる」

「試験管を?」

「本来は【調薬】で作った薬品をいつでも投げれるように作ったけど、これなら試験管に水を持って戦闘できる。エンは今いくら持ってる?」

「今ですか?」

 エンはメニュー画面から所持金を確認した。エンは今1,000G持っていた

「1,000G持ってます」

「……そっかエンは始めたばかりだから所持金少ないか。じゃあエン、[アルケミック・ホルダー]100Gで売るけど買う?」

(持っていた方がいいかな?)

「買います」

「まいどあり」

 エンは100Gを渡した。

「それじゃ、エンに合うように調整する。店の商品見て待ってて」

 エッジはバックヤードに戻って行った。エンはエッジに言われたとおりに商品を見て回ることにした。


「……コレなんだろう」

 エンは1つの装備品が気になった。片手だけの手甲で何かのくぼみがある。

「それが気になる?」

「あ、エッジさん」

 エッジがやって来た。彼女の手には[アルケミック・ホルダー]があった。ホルダーには水が入ってコルクで栓をしていた試験管が入っていた。

「はい[アルケミック・ホルダー]。試験管はサービス。それは[仕込み手甲]。刃を仕込みたいけどその手甲にあった刃が無いから未完成」

「そうなんですか」

「エン、フレンド交換しない?」

「フレンド交換ですか? いいですよ」

 エンとエッジはフレンド交換した後城下町にある噴水の前でログアウトした。


「こっちだったかな」

 翌日、エッジとフレンド交換をした後、エンが行ったところとは別の森に水魔法の練習が出来る場所があることを教えてもらったエンはその森へと向かった。

 鬱葱とした森は薄暗く、昨日見た色のスライムやその色違いも多く居た。エンはスライムたちに見つからないように隠れながら歩きだした。

 隠れながら歩いていると、目の前が明るくなってきた。エンはスライム達に見つからないように駆け足で森を抜けた。

 森を抜けるとそこは海だった。砂浜は森で囲まれていて、隠された場所のような感じがした。エンは見惚れているとエンの前にウインドウが表示された。ウインドウには、『【隠密】スキルのレベルが上がりました。【影縫】を習得しました。【影縫】装備している武器を相手の影に刺し、相手の動きを10秒封じる』と書いてあった。

(これって使えるのかな?)

「キュー」

 考え事をしていたエンの左側から動物の鳴き声が聞こえてきた。エンは左を向くとそこにはイルカが亀の甲羅を背負ったような見た目の動物が砂浜にいた。動物は胸ビレと尾ビレをバタバタと動かし、助けてほしそうな目でエンを見ている。

「君、海から来たの?」

「キュー」

「君を海に戻せばいいの?」

「キュー!」

 動物の返事にエンは動物に近寄り、持ち上げようとした。

「お、重い」

 しかし、何度持ち上げてようとしても動物は持ち上がらなかった。

「どうしたものかな」

 エンは海のほうを見て考えた。海は動物から見て、緩やかな下り坂になっていた。

「下り坂か、……そうだ! ちょっとごめんよ」

 エンは動物の左側に行くと甲羅に手を当て、海へ向かって押し始めた。少しずつだが、動物は海へと近づいて行った。動物に触れ続けた影響なのか動物の情報がエンの目の前に表示された。どうやらこの動物は『ムート』というモンスターのようだ。

「君モンスターなの?」

「キュー!」

「海に返したらボクに襲い掛かる?」

「キュッキュッキュ」

 ムートが不敵な表情をし始めるとエンは甲羅から手を放した。

「そうか、じゃあね」

 エンが帰ろうとするとムートは慌ててエンを引き留め始めた。

「冗談だよ」

 エンは再びムートを押し出した。

 苦労のかいあって、エンはムートを海に戻すことに成功した。

(疲れたな、1度城下町に戻ろうかな)

「キュー!」

「よかったな、ムート。それじゃあね」

「キュー!」

 城下町に戻ろうとしたエンをムートが引き留めた。

「どうしたんだ?」

「キュキュー!」

「もしかして待ってればいいの?」

「キュー!」

 ムートはそう鳴くと海に潜った。

 10分ほど経過しただろうか、ムートが浮上してきた。ムートは何か牙のようなものを咥えていた。ムートは加えていたものをエンの近くに置いた。

「キュー!」

「もしかして僕にくれるの?」

「キュー」

「ありがとうね」

 エンはムートから渡された牙を受け取った。牙は薄くかなり鋭い。どうやら[海龍魚の牙]というようだ。

(『海龍魚の牙』? どんなアイテムなのかわからないな。エッジさんならわかるかな?)

「それじゃあ、僕はもう行くよ」

 エンは城下町に帰るため、森に向かった。ムートは胸ビレを振り、エンを見送った。


「お兄ちゃん! ログインしてたんだ」

 城下町に戻ったエンを迎えたのはメルだった。

「お兄ちゃんどこ行くの?」

「知り合いの人のお店」

 エンはメニュー画面のフレンドリストを確認した。エッジはログインしているようだ。

「ボクもついて行っていい?」

「いいよ」

 エンとメルは『鍛冶屋‐黒職人‐』へ向かった。


「エッジさんいますか?」

『黒職人』に入ったエンはエッジを呼んだ。工房からエッジが出てきた。

「エン、何か用?」

「実は見てほしいものがありまして」

 エンは『海竜魚の牙』を取り出し、エッジに見せた。メルは武器や防具を夢中で見ていた。

「エン! これをどこで手に入れた?」

 エンは先ほどのことをエッジとメルに話した。

「エン、これはレアアイテムで、かなり性能のいいナイフや小刀に使える。しかもめったに手に入らないから高価格で取引される」

 エッジはエンに以前の取引価格を見せた。『海龍魚の牙』は高価格で取引されていた。

「こ、こんなに高いんですか!?」

「高い。……で、どうするエン? 私のほうでも買い取れるけど」

(どうしようかな。……薄い、ナイフ、そうだ!)

「えっと、[仕込み手甲]の刃にできないでしょうか?」

「[仕込み手甲]の? できるけどなんで?」

「[海龍魚の牙]は薄いですし、鋭いなら刃にできるかなと思いまして」

 エンがそういうとエッジは急に笑い出した。

「エンは面白い考え方をする。いいよ、加工してみる」

 エッジはそういうと[海龍魚の牙]と[仕込み手甲]を持ち、工房へ戻っていった。メルはエンに小声で「面白い人だね」と話しかけた。


 1時間ほど経過した。工房からエッジが「仕込み手甲」を腕に抱え戻ってきた。

「エン、うまくいった。さあ、今から試し斬りに行くよ」

 エッジはエンの腕をつかみ、外に出た。メルも慌てて、エッジを追いかけた。

 先ほどの森にエンたちは来た。エンの左腕には先ほどの[仕込み手甲]が装備されていた。

「エン、とりあえず何体か斬ってみて」

「……わかりました」

「お兄ちゃん、私も手伝うからね」

 剣と盾を構えたメルはそう言った。

「ありがとうメル」

 エンは飛び出してきたスライムに斬りかかった。仕込み手甲の刃はスライムをいともたやすく斬り裂いた。

「すごい斬れ味だね」

「当然」

 エッジはうれしそうだった。その時何かの声が海のほうから聞こえてきた。エンはふとムートの姿が思い浮かんだ。

「ちょっと見てくる!」

 エンは駆けだした。エッジとメルはエンの後を慌てて追いかけた。


 エンは海にたどり着いた。そこにはムートが3人に攻撃されていた。

「全然こいつHP減らねえな」

「だけどさこいつ陸に上げたら反撃してこねえからスキル上げに使えるしな」

「しっかし誰だよ、俺たちの獲物を海に逃がした奴は」

 3人の発言に腹を立てたエンは3人に襲い掛かろうとしたが、突然ムートがさっきよりも大きな声を出した。

「うるせえな、鳴くんじゃねえよ!」

 1人が剣をムートに刺そうとした。その時海から大きな水しぶきと共に龍と鮫を混ぜたような姿をした巨大なモンスターが現れた。

『我の名は海龍魚リヴァイアサン。貴様らが我が家臣を攫った者共か』

 リヴァイアサンは尾ビレを砂浜に着けた。

『我が家臣をさらった報いとして貴様らを始末してやろうと思うたが、我が本気を出せば貴様らの始末などたやすい。それではつまらん。今回は特別だ。貴様らを我が試練へ挑ませてやろう』

「試練だと?」

『内容は簡単だ。我に1太刀でもいいから傷をつけてみろ。我に傷をつけたら褒美をやろう』

「へ、へへやってやろうじゃねえか」

『それでは試練開始だ』

 3人はリヴァイアサンに斬りかかった。しかしリヴァイアサンが動くことはなかった。攻撃を受けたリヴァイアサンの体には傷1つついてなかった。

「な、なんでだよ! なんで傷1つ付いていないんだよ!」

「な、何回か斬れば流石に傷つくだろ!」

 何度も3人が斬ってもリヴァイアサンは傷つくことはなかった。リヴァイアサンは退屈そうにエンを見ていた。やがて3人のほうを向いたリヴァイアサンが

『さて、我も攻撃させてもらうぞ』

 と言い、尾ビレで薙ぎ払った。3人は尾ビレの攻撃をくらい、吹き飛ばされた。3人はそれぞれ別の木に体が当たり、HPが0となり光の塵となって消えた。

「あれは死んだときの演出。ちなみに死んだら、4時間ログイン不可になる」

「へえ、そうなんですか」

『貴様も我の試練を受けるか?』

 エンに追いついたエッジがエンにデスペナルティの説明をした後、リヴァイアサンがエンに話しかけた。

「僕ですか!?」

『貴様はムートの恩人たる所以、殺したりしない。我が試練受けるか否か?』

「エン受けてくれば?」

「エッジさんは鉄鋼の切れ味確かめるために言ってますよね!? ……はぁ、わかりました試練受けてますよ」

「私も手伝うよ! お兄ちゃん」

 そこには剣と盾を構えたメルがいた

「いつの間に来たんだよメル」

「今来たとこだよ。さぁ逝くよ!」

(何だろう、漢字が違う気がする)

 メルが走り出したのを見て、エンも走りだした。

 エン達が近づいてきたのを見たリヴァイアサンは口から太い水のビームを出した。直線状に発射されるビームをエン達は横に避けた。ビームは木に当たり、貫通した。

(なんて威力だよ!)

 エンはそう思いつつ右手のショートソードでリヴァイアサンに斬りかかった。しかし、リヴァイアサンに傷1つ付けらず、逆にショートソードの刀身に罅が入ってしまった。剣で攻撃していたメルだが、エンのショートソードに罅が入ったことを見ると魔法での戦いに切り替えた。

「【ウインドカッター】!」

 メルが唱えた風の呪文は緑色の刃となってリヴァイアサンに襲い掛かった。だがこれもリヴァイアサンに当たるが、無傷だ。

「こうなったら!」

 エンはショートソードを鞘に納め、仕込み手甲の刃を出した。

『む?』

 リヴァイアサンは仕込み手甲の刃を見ると何故かエンを警戒した。そして、エンが手甲で斬りかかろうとするとリヴァイアサンは尾ビレでエンを砂浜に弾き飛ばした。

「ぐっ!」

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

 吹き飛ばされたエンにメルは駆け寄った。何とか起き上がれたエンはメルから渡された回復薬を飲みHPを回復させた。リヴァイアサンは見ているだけで動かなかった。

「ありがとう、助かったよ」

「でもどうして、リヴァイアサンはお兄ちゃんを弾いたのかな?」

「もしかしたら手甲の刃が理由かもしれない」

「刃が?」

「他のゲームでも特定の武器でしかダメージが入らないって敵がいるからね。リヴァイアサンはこれじゃないとダメージが入らないのかもしれない」

 エンは左腕の手甲を見た

「でもそれじゃあ、お兄ちゃんをずっと警戒しちゃってダメージを与えられないよね」

 考えているメルの頭をエンは撫でた。

「僕に作戦がある。手伝ってほしい」

 エンはメルに小声で作戦を話した。メルが頷いた。

『作戦会議は終わったか?』

 しびれを切らしたリヴァイアサンが話しかけた。

「終わったよ。……それじゃあ反撃開始だ!」

 メルの盾を持ったエンがリヴァイアサンに向かって走り出した。リヴァイアサンの真下に近づくとショートソードをリヴァイアサンの『影』に突き刺した。

『貴様、何を考えて、む!?』

 急にリヴァイアサンの動きが止まった。

「【影縫】を使わせてもらったよ」

『【影縫】なるほどな。だが、10秒も止まる我ではないわ!』

「10秒も動きを止めるつもりじゃないよ。ほんの少しだけ止められばよかったんだ」

 リヴァイアサンがよく見ると盾の裏に手甲はなかった。エンの後ろからはリヴァイアサンに向かって手甲を持ったメルが走りこんできた。

『なるほどな。貴様はおとりだったというわけか。しかし甘いわ!』

 リヴァイアサンはメルめがけて水の球を放った。水の球をメルは避けたが、無理な体勢で避けたため、転倒した。

『これで、貴様の目論見も失敗というわけだな。今、影縫の効果も切れた。貴様達の負けだ』

 尾ビレをエンに叩きつけようとしたリヴァイアサンに不敵な笑みでエンは答えた。

「それはどうかな?」

『なんだと?』

「今だ、メル!」

 転んでいるメルはエン目掛けて、仕込み手甲を投げた。手甲を右手で受け取ったエンは刃を、眼前に迫るリヴァイアサンの尾ビレに当て、少し傷をつけた。しかし迫る尾ビレは止まらず、エンを砂浜に叩きつけた。

 リヴァイアサンは尾ビレをエンからどけ、エンを見つめた。

『見事、よく我が試練を超えた! 貴様の名は何だ?』

「エン・クレナイです」

「メル・クレナイです!」

『エンにメルよ、これは褒美だ!』

 リヴァイアサンは1度吠えるとエンのHPが満タンになっていた。エンが砂浜から起き上がると、エンとメルの目の前に巨大な鱗と仕込み手甲の刃よりも長い[海竜魚の牙]が落ちてきた。

『これを使い、我を更に楽しませよ! それとエン、我は貴様を気に入った! 手を出せ!』

 エンの手の上に手のひらサイズの青く透き通った石があった。

『それは[海竜魚の石]! そいつがあればいつでも我を呼び出せる。我が貴様の助けになってやろう!』

「ありがとうございます!」

『我は帰らせてもらうぞ。ムート、我の尾に乗るがよい』

 ムートを尾ビレに乗せるとリヴァイアサンは海に帰っていった。

 リヴァイアサンが帰った後、エッジが近づいてきた。

「エン、お疲れ。いいものを見せてもらった」

「死ぬかと思いましたよ」

「大丈夫、まだ死んでない」

「そうだよ! お兄ちゃんまだ死んでないよ」

「メルは元気そうだな」

「そんなことないよ、私も疲れちゃったよ」

「じゃあ城下町に帰ろうか。それとエン、[仕込み手甲]は君にあげる」

「いいんですか?」

「元々、それは君にあげるものだったから」

「それならありがたくいただきます」

 エンが仕込み手甲を再び装備するのを見たエッジは大金槌を取り出した。

「ん、それでいい。帰りは私が先導する」

 エッジの先導のおかげで城下町まで帰って来たエンとメルは噴水前でログアウトした。


 ログアウトしても縁はリヴァイアサンに一撃を与えたことに興奮が抑えられなかった。

 コンコンと部屋のドアがノックされた。縁は入るように促すと、そこには香がいた。

「お兄ちゃんすごいよ! リヴァイアサンにダメージを与えるなんて、ほんっとーにすごいよ!」

「あ、ありがとな」

 どうやら縁以上に香は興奮していたようで、だんだんと縁は落ち着いてきた。

「リヴァイアサンにダメージを与えられたのは香のアシストがあったからだよ」

 縁が香の頭をなでると「えへへ」と香は喜んだ。

(こんな体験ができるなんて、このゲーム初めてよかったな)

「もっとPossibility Onlineを楽しみたいな」

「そうだね、お兄ちゃん! でもボクとも一緒にね?」

 縁の言葉に反応した香を縁は微笑み「そうだな」と言い、香の頭をもう一回撫でた。

 ふと縁は時計を見た。時計は昼時を差していた。

(昼飯を食ったらもう少し遊ぼうかな)

 縁はそう考えると香を連れて昼飯を食べる為にリビングに向かった。


 こみっくトレジャーに出展したノベルの改訂版です。

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