オッサン、初めての美容院
なんか、髪の毛変やなあ…
「和子、髪切ってくれんかね」
「アンタ髪ほとんどないやん。何ゆうてんの」
「いやあ、気分転換っちゅうんかな。一応…ほら、ちょちょちょっと髪生き残っとるし」
「そんなん私が切ったらほんまもんの禿げになるで。それでもええんならええけど」
「ほうかあ…なら散髪屋さんでも行ってくるわ」
散髪屋さんって、ここやったけなあ…えらいリニューアルしたんやろか、お洒落になっとるやないか。
「ワシやで、いつもの小野さんおるか?」
「いらっしゃいま…はい?」
「あ、アンタだれや!えらい美人さんやな、新しい人か?小野さんおるか?」
「小野さん…という美容師はおりませんが」
「ほうかあ、まあええわ。ちょっとでええで、髪切ってくれんか」
「か…かしこまりました。少々お待ちくださいね」
10分くらい待ったやろか、やっと髪を切ることになった。
「お待たせ致しました。ご案内しますね」
変なとこに座らされ、タオルを顔にかけられ、頭に温もりを感じる。
「なんやここ?髪洗うんか?あー、タオルは邪魔や、いらへん。あっつ!なんや頭やけどするかと思たわ!」
「は、はい…それではカットに入りますね」
「カット?キットカットのことか?あれ旨いよなあ。ん?今頭にシュッシュッてしたのなんや?ドライヤーしないと風邪ひいてまうやん」
店員さんは無視してなんやチョキチョキ切っとる。
「そや、雑誌にキノコみたいな髪型あったやろ、あれにしてくれんか」
「マッシュルームヘアでしょうか?そうですね…やってみますけど、あれは髪量がいるので再現できるかはちょっとわかりません」
ようわからんかったが、なんとかマッシュルームへアとやらにしてくれたらしい。
「全然似とらんやん!」