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転生を断ったら、日替わりでチート能力を届けられるようになった  作者: おもちさん
第2部  転生を断ったら、女神と旅をすることになった
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第4話  身だしなみはキチンと

不快。

気疎けうとい。

うっとおしい。


今の心境に調度良い言葉はどれだろう。

言葉に弱いオレにはわからんが、そんな心境だった。


今はエレナリオの街に向かって街道を進んでいる最中だ。

ロックレアを通りすぎたので、道程は残り6割といった所だ。

みんな文句ひとつ言わず歩いてくれるのはいいんだが、ひとつだけ気になっていることがある。

それがさっきの暴言にもつながるのだが。


視界の端でヒラヒラとなびくスカートの裾。

これが本当にうっとおしい。

興味など無いが、目につくから気になってしまう。

これを指摘するかどうかでしばらく悩んでいた。

言ったら確実に面倒な事になるだろう。

でも口をつぐんでいるのも腹立たしいので、意を決してから当人に告げた。



「なぁ、レイラ」

「なに? そんな怖い声だして」

「そのスカートがうっとおしい。何とかしろ」

「ちょっとー、どこ見てんのよぉ? 男の子だから気になっちゃうのかな、ホレホレ」



勝ち誇ったように両手で摘まみ、挑発するようにスカートをなびかせた。

予想していたとはいえ、実際にやられるとイラッとくるな。

お召し物ごと灰にしてやろうか。



「お前はパンツをみせびらかしたいのか? そういう性癖か?」

「そんなわけないでしょ! ちゃんと下着が見えないように、裾の重さや仕草は研究済みなんだから」



なんだその無駄な努力は!

デュボンをはけ、デュボンを。


やり取りを耳にしたシスティアが、指を一本ピンと突き立ててから会話に混ざってきた。



「でもレイラさん、この前バッチリ見えてましたよー」

「ウソ?! いつの話?」

「みんなで魔法防御してた時の話ですよー。

ほら、鉄のお化けが攻めてきたじゃないですかー」


きっと機鉱兵による光の攻撃の事を言ってるんだろう。

オレでさえビビった一撃だというのに、コイツは人の下着なんか見てたのかよ。

大物、あるいは阿呆だな。



「スカートの事言い出したらイリアさんだって仲間じゃない。いつでもその格好だもんね」

「はい。主にご安心いただけるよう、常に同じ装いを心がけております」



イリアも常にスカートだが、レイラのそれとは雲泥の差だ。

ふくらはぎを半分ほど覆い隠す長さだし、上半身だって首のボタンまでキッチリ閉めている。

半裸で外をうろつくような、生肌テロリズムなんか感じようもない。



「やっぱりイリアさんも研究してるの? パンツが見えない動作とか」

「私のは見えようがありません」

「すごい自信ね。イリアさんが言うと様になるけど」

「何も履いておりませんので、見える道理が無いのです」

「え?」

「は?」

「えぇ……?」

「なんじゃと?」

「ウソでしょ?!」



弾かれたように全員が顔を向けた。

その視線を、いつもの表情で流すイリア。

こいつの心臓ははがねで出来てんのか。



「事実でございます。陛下に仕えてより、一度も下着に足を通しておりません」

「ハァァアー?!」



まさかのド変態発言。

背筋を伸ばした、りんとした居住まいな所がまた腹が立つ。

何でそこまで堂々としていられるのか。



「またまたぁ、冗談よね?」

「いいえ、偽りありません」

「姉様、今もその中は……?」

「あられもない姿、と申しましょうか」

「なぜそのような事を。理由を聞いてもよいかの?」

「陛下は大変お若くございます。そのような年頃の男子であれば、性欲のコントロールが難しいと聞いております。ですので、いつでも発散できるよう……」

「そんな未来は永劫えいごう来ない。とりあえず黙ってろ」

「承知いたしました」



発散とかサラッと言うな。

バカなんだな、何というか……もうバカだろお前!



「誰か余分なの持ってないのか? 一枚くらい分けてやれよ」

「そうしますと、私のはダメですよね。子供用ですし」

「私はパスで。人に分けられるほど持ってないわ」

「私もですー。というか、そんなゆとりは誰にも無いと思いますよー?」


そうだった。

オレたちは相変わらず無一文の浮浪者集団。

アシュレリタに帰れば衣類はあるが、人間世界の金なんかあるはずもない。

すなわち調達する手段がない、証明終了。


それからの旅は面倒さを増した。

みんながソワソワして、地に足が着かなくなってしまった。

強風が吹く度に、ちょっとした段差を乗り越える時に、岩場に腰かける時でさえ心配が付きまとうようになった。

本当にお荷物さんの多いパーティーだな。



ノーパンメイドの鮮烈な告白によって、イリアの異名が修正される事になった。

魔人たちが何らかの書を記す事があったとしたら、このように書かれることだろう。



 『叡智の王の傍に一人の女有り。

  王の手足となりて、数々の難事、立ち所に収める。

  親しき同輩の者、この女人を評す。

  

  ーーみんなも憧れる、完璧に危険なメイド(パンツ履いてない)、と』



『危険』って言葉が別の意味に聞こえるね、不思議だねフフフ。


ちなみにレイラは「履いてない人が居るんだから、スカート丈が短いくらい何て事ないわね」などとぬかしやがる。

結局オレの指摘は何も解決をせず、トラブルの種を増やすだけに終わった。

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