FILE0 重力
常冬の国白虎。
軍神の名がついた機械が起こす物語はこの国の中学校から始まる。
外にはその日も雪がしんしんと降り続いていた。
教室内で稼働する石油ストーブは、それを眺めている生徒を催眠術にかけるかのように陽炎を作り出している。
その陽炎の映し出す揺れる世界を見つめていた生徒は、いつの間にか眠りの世界へいざなわれて行った。
教師
「えー、みんなも知っていると思うが、この星は球体では無く平らであり、この星自体には質量が非常に少ない。
にもかかわらず我々がこの星に立っていられる理由は、星の下に位置するブラックホールがこの星を引っ張り、星自体に重力がある状態に近い環境を作り出しているからだ。
また、星の真ん中には大きな穴があり、星の上から下まで貫通している。
おそらく重力に耐えられなくて開いた穴だろう、と学者は言っているが詳細はいまだに不明である。
上空にはホワイトホールがあり、ブラックホールに吸い込まれた光や空気、水などもホワイトホールから地上に降り注いでいる。
結果としてこの星を照らしているのは、繰り返しブラックホールとホワイトホールが光が反復するような形でこの地を照らしているものと、太陽光の二つあるわけだが、、、そこ!!」
教師の手から勢い良く白墨が放たれ、一番前で居眠りしていた生徒の頭に直撃した。
寝ていた生徒は、頭を抑えながらガバッと起き上がると、
生徒
「ってーなバカ教師。」
と、ものすごい声で怒鳴った。
しかし、教師の方はいつもの事だと平然とした顔をしている。
教師
「バカ教師に叱られるような事してるから悪い!
ついでだ、何故この星がブラックホールに飲み込まれないか言ってみろ夏目!」
夏目
「ホワイトホールより上に星があるからだろ。」
教師はニヤッと笑った。
教師
「不正解だ。ホワイトホールより上に天星系もしくはゾディアックがあるからが正解だな。」
※天星系=太陽系のようなもの
夏目
「天星系もゾディアックも星の集まりなんだから一緒だろ?」
教師
「星という答えだと個数が不明確だろ?
天星系は太陽を中心に円状に12の星が等間隔に回っている。
この12の星を総称してゾディアックとも言い、不思議なことに、これらの星は太陽から同じだけ離れた距離にあり、大きさも重さもなぜか同じだ。
そして、その星一つ一つが引力、つまり引く力をもっているわけだが、重さと大きさが同じ場合、引力も同じなんだ。」
夏目
「別に一個でも二個でも変んねーじゃん」
得意げに話している途中に割り込まれた教師はため息をついた。
教師
「俺がこの星は平らだと言ったの覚えて・・・ないか、寝てたもんなお前は、、、」
そういうと教団に両手を突いて、もう一度大きなため息をついた。
みんなの前でバカにされたようで、夏目は少し恥ずかしくなったのか頬をカッと赤くした。
夏目
「な、何だよ。」
教師
「この星は平らなんだよ。」
夏目
「それが何なんだよ。球体でも平坦でもかわんねーだろ?」
教師はがっくりとうなだれた後、頭を起こして夏目を見なおした。
教師
「まあいい。
つまりだな、ホワイトホールの原理は今でさえ良く分かっていないが、ブラックホールには重力を、ホワイトホールには浮力を発する力があると言われているんだ。
ようするに、ブラックホールにはこの下から星を引っ張る力、ホワイトホールは上からこの星を押さえつける力の二つがある。
しかし、この力しかないとすると、この星はブラックホールに飲み込まれてもおかしくはない状態にある。
ここまでは分かるな?」
夏目
「バカにすんなよ。」
教師
「これを浮いた状態に保ってくれているのが天星系だ。
さっきも言ったが天星系は星一つ一つが引力、つまり引く力をもっている。
それもうまい具合に円状に並んでいるためこの星の端を等間隔で引っ張り上げてくれる。
そのお陰で俺達はブラックホールに飲み込まれずにすんでいる訳だ。」
夏目
「だから星一個でもあれば十分なんじゃねえの?
とりあえず、この星を上に上げればいいんだから。」
他生徒
「そうだそうだ」
教師
(こいつらがアホなのか?それとも俺が教師向いてないのかな・・・)
教師はすっかり自信をなくしたようにガクッと頭をたれてしまった。
生徒A
「でも、それと平坦なのと何か関係があるんですか?」
生徒B
「なあなあ、何で平らだと星一個じゃダメなん?」
他の生徒も興味を持ち出したのか、珍しく熱心に話を聞いているようだ。
教師は少し嬉しいのを悟られないよう小さく咳払いして起き上がると、大きく息を吸った。
教師
「引力というものは、物体と物体との一番近いところに一番強く力が働くんだ。
球体に対して引力と引力が上下にある場合、力が分散されやすく簡単に安定する。
球体なら重量も十分あるはずだから、自分の重力だけでも十分安定し、どんな風に回転しても、ある程度なら地上にいる我々が振り落とされる事は無い。
それが平面の場合、バランスが崩れやすく簡単にひっくり返ってしまう。
これが星の端のほうを引っ張られたり乱回転でもしてみろ。
薄い分、重力が皆無にも等しいこの星の上に立っている我々は、あっという間に宇宙に投げ出されてしまう。
つまり、外周を満遍なく、尚且つ均等に引く力を保たないといけないという事だ。」
生徒A
「つまり星一個ではひっくり返ってしまうから星は不正解。
天星系なら、うまく12の星で外周を引き上げてくれるから正解ってことですね?」
一応ちゃんと伝わった事に安心したのか教師はホッと胸をなでおろした。
教師
「そういうことだ。
つまり、答えは天星系、もしくはゾディアックと言う事になる。
皆分かったか?」
他生徒
「はーい!!」
教師
「よし!」
やっと元気が出たのか教師は満面の笑みを見せた。
が、
夏目
「・・・ぐー・・・・・」
話が少し長くなったせいか、さっきまで聞いていたはずの夏目がまた夢の中に遊びにいってしまった・・・。
教師
「・・・・・・・・このやろぅ・・・」
クラスの大半がニヤッと笑って顔を見合わせつつ耳をふさいだ。
教師
「起きやがれこの大バカやろう!少しは女子らしくしろー!」
ついに連載に手を出しました。
出しちゃったよおぃ・・・
果たしてちゃんと書ききれるのか俺?
とりあえず長期連載休止中にならないよう気をつけます。
出来ればコメントいただけるとうれしいです。
ではでは。
2/20
あまりにも見苦しかったもので少し内容を修正しました。