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最強魔王の夢物語(ユニバース)  作者: チャミ
第二章 夢幻祭《フェスタ》
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第29話 もう一人

 喧嘩にも近い言い争いが目の前で起きている。

 大の大人が、だ。

 それをニックとリナは止めることもできずにただ呆然と見つめていた。


「あれどうしよう……」

「どうしようって言っても……僕達じゃ止められないし。止めようとしたら殺されそうな勢いだけど……」


 三人の周りを殺意にも近い感情が渦巻いている。しかし、傍から見れば子どもの喧嘩だ。堂々巡りを繰り返している。


「とりあえずどうにかして止めようか……」


 ニックは苦笑する。

 これは見ていられない。半分諦めでニックとリナはシルヴァたちの元へと近づくと、その奥から見知らぬ人がゆっくりとこちらへ向かって来ていた。


「突然飛び出すもんだから何事かと思ったら……なるほど、どうりで騒がしいわけだ」


 ルークたちと同様に白い鎧を着た青年。

 その容姿はニックたちより少し上の好青年。鎧の上からなので分かりにくいがガッチリとした体格と滲み出る濃い魔力。ブロンドに輝く短髪は外に跳ねており、空気を和ませるような穏やかな糸目と笑みがその場を包み込む。

 ルークがその者に気が付き、険悪な空気が一瞬にして紐解かれる。


「……ラインハルト」


 ルークはラインハルトと呼ばれる青年を振り返った。


「遅かったな」

「君が速すぎるんだよ」


 ハハッ、と苦笑する。

 ルークはラインハルトが来たことにより正気を取り戻したのか静かに剣を鞘に収めた。その様子にレイラも諦めたようにシルヴァに目配せをくる。シルヴァは少し不満そうに手をひらつかせる。それが、もう終わりだと告げていた。

 くして謎の喧嘩はラインハルトの乱入により鎮火した。





「そんで誰だ、お前ら。勝手に割り込んできやがって」


 シルヴァは、二人を睨みつける。レイラも「そうだ、そうだ!」と横で不満を溢す。

 あなたの知り合いでしょう!とニックは心のなかでツッコんだ。

 しかし、ルークはともかくラインハルトと呼ばれる人は見たことが無い。温厚、紳士そんな言葉を体現しているかのような空気を男から感じる。

 ラインハルトと呼ばれる金髪の男は、シルヴァたちを品定めするかのように順に見つめる。そしてリナを見て目を見開く。


「その赤い髪に、その顔!! もしや君がレイラさんのご息女ですか!?」


 興奮したようにリナに近づく。リナの体に触れそうな勢いだ。

 ニックは、いきなりのことで瞬時に反応できない。別にボディーガードをしているつもりはないが、よく分からない人をリナに触れさせるわけにはいかない。


「ちょ……!」


 だが、ニックの行動より早くそれを阻止する者がいた。


「それ以上私の娘に近づかないでももらえるかしら? 風穴開けるわよ」


 喉元に刺突剣レイピアを突き立てながら、レイラが明確な殺気をラインハルトに向ける。あと一歩近づいたらその命はないといわんばかりの殺気だ。もし自分にその殺気を向けられたら立っていられるかどうかわからない。

 しかし、ラインハルトはそんな殺気を感じていないかのようにあっけらかんとわざとらしく手を挙げて返す。


「何もしませんよ、怖いな~」


 レイラは少し考え込んだ後、盛大なため息をつき殺気が静かに薄れる。輝く刀身をしなやかに鞘へ戻す。ラインハルトは、悪意の一切ない微笑みでそれ以上は近づかずリナを注意深く観察する。上から下へ、下から上へ。


「……えっと……」


 もちろん、よくわからない人にじっと見られていい気はしないだろう。リナが、耐えかねてラインハルトに声をかける。レイラの目がギラリと光る。


「ラインハルト、それ以上は本気よ」

「おっと、これは失礼。……やはりレイラさんのご息女、素晴らしい魔力だ。まるでほむらの如く熱く美しい、加えて絹のような滑らかさ。その美貌もさることながら赤き瞳には魔術の未来も見据えているとは。これはなかなか……」


 うんうん、とまるでワインをテイスティングするソムリエのようだ。

 リナが恥ずかしそうに顔を伏せる。


「あ、ありがとうございます……」

「いえいえ、こちらこそお会いできて光栄です。レイラさんから、よく話は伺っていたので。……そして」


 その視線が流れるようにニックとシルヴァに向けられる。


「君が噂のニック・ハーヴァンス君。と、その使い魔(・・・)さんですか」


 含みのある笑みを浮かべながら二人に話しかける。

 シルヴァはその反応にイラっと来たのか、眉間にシワを寄せる。 


「バカにしてんのか」

「いやいや、とんでもない。僕は噂のコンビを見れて嬉しいんですよ」


 にこやかに笑いながら首を振る。

 噂のコンビ。ニックとシルヴァのことだろう。魔王を召喚したことは、アーサーに知られている。それはつまり、城にいるものには知る機会があるということ。城内で噂になっていても不思議ではない。しかし、あまり噂話にされるのは気分が良いものではない。内容が内容だ。広まってほしくはない。

 ラインハルトは、ニックとシルヴァを交互に見つめる。リナのときと同じように目付きが鋭い。


「おい、いい加減にしろ」


 シルヴァが、一歩前に出る。それに合わせてラインハルトは一歩下がる。


「さっきからテメェはなんなんだ」

「おや、名乗ってませんでしたか」

「あぁ。それにそこのお前も」


 ルークに指をさす。


「貴様に教える名はない」


 しかし、ルークは目を伏せながら言い放つ。シルヴァの額に青筋が浮かぶ。


「そうかよ、殺す」

「ちょちょちょ!」


 ニックが思わずシルヴァの前に出る。


「落ち着いてシルヴァ! もう、戦闘はおしまい! ね!」

「そうですよ〜、これ以上暴れられたら僕たちも動かなきゃいけなくなる」


 ラインハルトが困った顔で肩を上げる。


「けど、名乗らないのも礼儀としてなっていない。でしょ、ルーク」

「……お前がそう言うなら合わせる」

「そう来なくちゃっ!」


 指をパチンと鳴らす。

 わざとらしくコホン、と一息つき姿勢を正すラインハルトはルークに目配せする。渋々とルークはそれに付き合う。


「僕は、聖王騎士団が一人。副団長ラインハルト・グリム・ロア!それで、彼こそは我らが団長――──」

「……ルーク・エインズウォーカーだ」




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