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最強魔王の夢物語(ユニバース)  作者: チャミ
第二章 夢幻祭《フェスタ》
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第4話 特訓再開

 今日も無事に午前の授業を終えた。テストまであと二日だからなのか、今までの復習やまとめが主な授業内容だった。一週間も授業を受けてなかったので、復習やまとめは素直にありがたい。こんなに授業に感謝するのは初めてだ。もうこんなことは絶対に起きてほしくない。

 そして、リナから伝えてもらったシルヴァの伝言(脅し)通りにニックは前回特訓をした場所まで歩いていた。

 午前の授業が終わってすぐに教室を出たのだが、リナは少し遅れると言って別れた。そういえば、前回も遅れてきたっけ。その時は、サンドウィッチを作ってきてくれた。それで思い出したが、昼はいつ食べるのだろうか。まさか、食べずに特訓をしなければならないのだろうか。果たして体力が持つかどうか……。

 思わずため息が漏れてしまう。


「特訓か……」


 シルヴァに教えてもらうのは全然苦ではない。むしろ、ありがたい。

 しかし、それに応えられないのが辛いのだ。前回の特訓では、ガラス玉のようなクリスタルを使ったものだった。そのクリスタルには、魔力を通すと形の変わる形状変化。そして、時間が経つと元に戻る自動再生。この二つの術式スペルが刻まれていた。

 それに魔力を通し魔力操作の特訓だったのだが、結果的に一度も成功できなかった。何度もクリスタルを割り戻ったら割りの繰り返し。自分の才能の無さに肩を落としたことは、昨日のことのように思い出せる。

 そのせいか、歩む足が重く感じる。しかし、遅れると色々まずいのでため息をつきながら重い足を無理矢理動かした。








「おせぇよ、いつまで待たせんだ。試験の点下げんぞ」


 第一声はこれだった。横暴にもほどがある。権力の悪用だ。

 銀色の髪が風に揺られているが、気にせず仁王立ちでニックを睨む。快晴のような青い瞳が、不満百パーセントで見下ろしてくる。さっそく帰りたくなってきた。

 シルヴァは、教師用の軍服のような制服を着ている。その上から黒いコートを着てることで、元々かっこいいシルヴァにワイルドさが追加されていた。今日は、メガネは掛けていない。これでサングラスとか掛けてたら完璧だったな。

 ニックは、シルヴァの元へ駆け寄る。


「そんなすぐには来れないよ。教室からここまで遠いし」

「走ればすぐだろ」

「シルヴァ基準で考えるのやめてくれます? ってか、僕そんな足速くないし」

「なら、速くなれ」


 ダメだ、この人。話が通じない。

 シルヴァは、悪態をつきながら白い手袋を着けた手で頭を掻く。


「まぁ、んなこと言ってねぇでさっさと始めるか。地味に暑いし」


 太陽を見上げているシルヴァにニックは一つ疑問をぶつけてみた。ここに来るまでに思い付いた疑問だ。


「それは、良いけどさシルヴァ」

「なんだ文句か?」

「文句っていうか、いいの? こんな昼間っから特訓してて。他の人とかに見られたら色々な面倒なんじゃない? だから、前は朝と放課後だったんでしょ?」


 放課後は結局、悪魔の襲来で特訓できなかったが、本来は人気ひとけの無い時間帯を狙って特訓する予定だったはずだ。

 さらに、シルヴァがニックの使い魔だということは、秘密なのだ。なのに、シルヴァがニックに魔術を教えているのは明らかに怪しい。それに、シルヴァは今教師という立場にある。もしかしたら、不正を働く気なのではないかと疑われてもおかしくはない。

 ニックもシルヴァも立場が悪くなるのではないだろうか。


「大丈夫だ。その対策はとってある」

「対策?」

「まぁ、正直見られてもなんも問題はねぇんだけどよ」

「いや、問題あるでしょ。僕と教師であるシルヴァが一緒にいたら怪しいなって普通思うでしょ」

「思わねぇよ。お前は、この学校で一番魔術が使えねぇんだろ? ならそんな可哀想なやつに俺が魔術を教えてるって見えるだろ」


 クソっ、酷い物言いだが事実だから反論できない。


「それに、リナにも教えてるし、他の奴らにだって教えてる」

「…………へぇ」


 確かに、リナに教えている以上不公平さは無いか。ただ他の生徒にまで教えてるのは意外だ。ニックが安静にしている間にシルヴァの教師力が上がっている事に驚いた。


「それに、昨日お前らと一緒に俺も図書室に居ただろ。その事で、お前は誰かになんか言われたのか?」

「いや、言われて、ないけど……」

「じゃあ、んな心配は無用だ」

「確かに。そうですね、はい……」


 非の打ち所の無い反論だ。

 なら、対策とは何なんだろう。


「それで、対策って?」

「もちろん、結界だ」


 結界とは、防御魔術の応用の使い方である。防御魔術の防御壁ディフェンド神の盾イージスとは少し違う。上位魔術の絶対防御の結界パーフェクトフィールドがそれにあたる。あの黒いドラゴンの放った炎を完璧に弾いたように、結界とは拒絶する魔術をさす。

 しかし、それらしきものは辺りを見渡しても見つからない。絶対防御の結界パーフェクトフィールドならば、水色の膜のようなものが見えるはずなのだがそんなものは見えない。


「そんな結界見えないけど」

「当たり前だ。そういう結界だからな」

「どういうこと?」

「お前、ちゃんと勉強してんのか? ──俺が張った結界ってのは人払いの結界だ」

「あぁ、人払いの結界か……」


 人払いの結界は、文字通りの意味だ。使えば無意識に人はその結界から離れる。だが、術者より魔力が高い者やそういう魔術を見破る魔術器具を持っている場合は例外である。

 確かにそれなら、人は近付いてこない。ここを通ろうとした人たちには悪いことをしてしまった気持ちになる。


「俺より魔力高いやつは居ないとして……魔術器具持ってるやつもそうそう居ないだろ。もし仮に居たとしたらそん時は、さっさととんずらすれば良い」

「そっか、それなら昼間からでも特訓できるね……」


 さすがは、シルヴァぬかりない。そのぬかりなさが逆に恐ろしい所ではあるが。

 と、ここであることを思い出す。


「あ! そういえば、リナも特訓に来るんだった! ってなると、リナはここまで──」


 言い終える前にシルヴァが答える。


「それなら、安心しろ。あいつには、特別な魔術器具を持たせてある。それさえ持っていれば、いつでもこの結界に入れる。もちろん、結界を壊さずにな」

「……用意周到過ぎてホント怖いな」


 シルヴァのすごさを改めて実感した瞬間だった。







 時刻は十二時を過ぎた頃。

 太陽は一番高いところまで上がり、こちらを照らしている。風は微かに吹いていて気温が暑くなっている中、その風は心地良い。


「んじゃ、早速始めっか」


 そんな中、シルヴァの一言で三回目の特訓が始まった。





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