第47話 終わり、そして始まる
「方針は決まったが、どうやってあれをグラウンドまで落とす気じゃ?」
「今のまま落ちれば、校門の方に落ちちゃうね」
「そうなるな。つまり、自力で移動させなきゃならん、と」
『そりゃ、随分と面倒だな』
「そうじゃ、シルヴァ。お前がそれを押して移動させるというのは」
『お前、時々バカになるよな』
「なんじゃと!?」
シルヴァとロゼリアはいつの間にこんなに仲良くなったのか。打ち解けるのは別に構わないのだが今はそんな場合ではない。もっと真剣にして欲しいのだが。
「あの……今は時間が……」
「分かっておる。あれが、落ちてくるのにおそらく10分もかからんじゃろう。移動させる時間も考えると……タイムリミットは、5分。それを過ぎれば建物にぶつかる可能性が大きくなる。出来れば被害は最小限に留めたい」
『時間制限ありのうえに、被害は最小限に、か。全く課題が多いな』
「そこは、シルヴァ。頑張れ、応援しとる」
『丸投げする気がテメェ』
「せんよ……。時間がない。各自役割を決めるぞ」
ロゼリアが真剣な目に変わる。そして、ニックとリナに視線を向ける。それが何を言いたいのか瞬時に理解した。
「え、もしかして僕たちも何かするんですか?」
「あたりまえじゃ、人数は多い方がいいからの」
驚いた表情をするニック。もちろんリナも同様に。
リナはともかく、自分に何が出来るのだろうか。魔術も使えない、魔力も全然回復してはいない。今のニックは全くといって良いほど何も出来ない。
「シルヴァ。お前今、同時に何個まで魔術を使える?」
『中位魔術、2つが限界だな。片方は『飛行』を使ってるから後1つだ』
「そうならと必然的に通信は切ることになるのか。……分かった。シルヴァ、お前は今すぐ通信を切って『念力』でそれを動かせ!」
『……分かった。そっちはお前らに任せるぞ』
悩むような沈黙の後、シルヴァは託すように言葉を残し通信を切った。
すぐにロゼリアはリナを見る。
「リナは落ちてくる瓦礫とか土とかを出来るだけ多く壊して被害を抑えろ。下位魔術でもリナなら壊せるじゃろ。校門の方から頼む」
「は、はい!」
戸惑いながら校門の方に炎のような赤い髪を左右に揺らしていく。足は治ったのかその動きはいつものリナだ。だが、その後ろ姿を不安な思いを押し殺しながら見つめた。
「ニック」
「はい、僕は何を──」
何かを投げられる。慌ててそれを受け取る。手に伝わる硬い棒のような感触。視線を下ろし、それを見る。
「これって……ロゼリア先生の杖じゃ……」
捻れた木の一番上に深緑の宝玉が埋め込まれた杖。ダイスを倒した杖で、ニックとリナの頭を襲った杖だった。
眉を八の字する。魔術も使えないのに杖を持っていても意味がない。杖は本来、自分が自分流に魔術を使いやすくするための魔術器具だ。つまり、別の人に渡したところで使い所と言ったら殴るしか……。
「もしかして、これで落ちてくる瓦礫を殴って壊せってことですか!?」
「んな訳あるかぁ!」
ですよね。分かってました。
「お前は、その杖から魔力を吸い取れ」
「え?」
ロゼリアは何を言っているのだろう。魔術器具には術式が刻まれてそれに魔力を通す事でしよう可能となる。言い換えれば、魔力を本体は持ちあわせてはいない。だから、杖から魔力を吸い取るのはどう考えても不可能なのだ。
「先生、どうやってこれから魔力を取れば……そもそも魔力なんて……」
ない。と言おうとして止めた。なぜなら魔力を感じるのだ。ニックが持つ杖から。
「なんで……」
「その杖は、まぁ、ちと特殊でな。中に魔力を蓄積できるんじゃよ。……じゃから、その杖から魔力吸うことも可能じゃ」
聞いたことがない。魔力を蓄積できる魔術器具など。ただニックが知らないだけと言うことも否定は出来ないが、こんなものがあるのなら普通世界中で話題になるはずだ。
「お前の魔力はシルヴァへと流れていく。シルヴァが魔力切れになればシルヴァは消えるし、この学園も甚大な被害が生じる。そうならない為にお前の役割は魔力をシルヴァに送り続ける事じゃ。魔術を使えなくともそれくらいはできるじゃろ?」
「……」
「ニック。聞いているのか?」
「え、あ、はい」
やることは分かったが、杖が気になってしまう。
「しっかりしてくれよ。お前が魔力をしっかり送るか送らないかで全てが決まるかもしれんのじゃからな。頼むぞ、ニック」
ニックの腰辺りを叩く。体がふらつくが踏みとどまる。ロゼリアの方を向くとすでに白衣姿が遠くにあった。
叩かれた腰をさすりながら初めて気が付く。
「体、全然痛くない」
あの数分でロゼリアはニックとリナの怪我をどちらも治してくれたのだ。
変な事を考えている場合じゃない。ちゃんと自分の役割を果たさなければ。直接貢献できるわけではないがニックの役割は重要な役割だ。今は、それに応えなればならない。
ニックは杖を両手で握りしめ、魔力を吸い取ることを意識しながら瞼を下ろした。
ロゼリアは走りながら肩越しに後ろを振り返る。そして、すぐに前を向く。
「やはり、あれを見せるのはマズかったかの……じゃが、あーでもせぬとこの状況は打破出来んからな。まぁ仕方がない」
色々思うところはあるが、今はニックが気が付かなればそれでいい。しかし、ニックの様子からして明らかに怪しんでいた。
「別にバレても構わんのだがな……むしろ教えた方がいいのかも知れぬが、あれは危険なものじゃ。その存在を知って呑まれては意味がない」
だから、秘密にしよう。ニック自身がそれを知り自分に聞いてくるまで自分からは何も言わない。
「今はやるべき事をするかの」
この事を考えるのは止めだ。上を見上げる。
「わしも本領発揮かの」
口角を上げながら走るスピードを少し上げた。
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通信を終えたシルヴァは落下する巨大な物を見下ろしながら首と指をポキポキ鳴らす。
念力でこれを動かせ、とロゼリアに言われた。
「無茶な事言うよな、あいつ。明らかに魔術で動かすようなデカさじゃねぇだろ、これ」
魔力が満タンの状態ならすぐにでも止められる。が、今は違う。魔力はニックから送られてくる僅かな量だけ。これだけの大きさの物を動かすのには足りない気がする。
そもそも正直な所、なぜこんなにやる気になっているのか分からない。別にこれがどこに落ちようと自分には関係ない。なのに、やらなきゃならない。という感情が溢れてくる。これも使い魔になってしまったからなのだろうか。
「ったく、訳わかんねぇ。……けど、ニックにもあんな事言っちまったし、やらねぇ訳にはいかねぇよな」
肩を軽く回し筋肉をほぐす。体はまだ痛むがやると言った以上は引き下がるわけにはいかない。
「よし……」
気合いを入れ落下する物に両の手のひらを向け念力を発動した。
瞬間。体を持っていかれるほどの重みが腕に乗る。
「ぐおっつ!?」
思わず変な声が漏れる。両腕の筋肉が一斉に悲鳴を上げた。
「おいおい! なんて重さしてんだよ!!」
いつものシルヴァなら虚無の手を使い意気揚々とこの巨体すら持ち上げてみせよう。
しかし今使っているのは、上位の虚無の手ではない。中位の念動魔術、念力だ。精々重いものを軽く一個持てる程度の魔術。単純に魔力が足りてないのもあるが、この魔術では落下部屋を抑えきれてないのだある。
腕に全ての重圧が乗る。
「これ絶対五分以上かかるな……」
まずい。中々にピンチである。
ひとまず、グラウンドまでの距離を地を見下ろし確かめる。校門から、上からでも分かるほど大きなグラウンド。その距離は、約五百メートル程。
「…………意外と遠いんだが」
精々二百メートルくらいかと思っていた。ちくしょう。
「ちっ……! こうなりゃ!」
落下する物に近付き。両手でそれに触れる。そして、全力で押す。シルヴァの後ろで突風が起きる。念力で補助をしながら、飛行を使い自力で押す。
これなら、ギリギリ五分でたどり着けるはず。
まさか、ロゼリアの冗談を実行することになるとは。不服である。
「くっそ! ぜってぇ、運んでやるからなぁぁ!」
その雄叫びは、空一面に広がった。
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「うわ~、すごい。動いてる……」
走りながら空を見上げる。あんなにも巨大な物がゆっくりと動いてグラウンド側に向かっていく。あれを動かしているのがシルヴァだと思うと尚すごい。
運動神経はそれなりに良い方なので案外早く校門まで辿り着けた。これもロゼリアの治癒魔術のおかげである。右足首の痛みはすっかり消え最初から何もなかったようにその存在を忘れている。
校門を通る巨大なものから時折降ってくる瓦礫を下位の火焔魔術で弾いていく。
「シルヴァも頑張ってるみたいだし、私も──」
目の端に映るそれにリナは足を止めた。
校門近くに広がる大きな窪み。まるで隕石が落ちたように円形に凹んでいる。校門から本校までを繋ぐ石畳が完全に途切れている。
「これ……何かが上から落ちてきたみたい……」
出なければこんな風にはならない。隕石ではないと思うが、別の何かが上から勢いよく落ちた。だが、中心には何もない。何かが落ちた証拠が全くない。
リナを不安が襲う。半歩後ろに退がる。
ふと、上を見上げる。
「もしかして、あそこから落ちてきた……?」
シルヴァによって移動を続ける落下する部屋。もしそうだとしたら、一体あの上には何があったのか。あの上で何があったのか。そして、落下してきたのは一体……。
「……って、もうあんな所に! や、ヤバい! 学園が壊れちゃう!」
知らぬ間にリナと落下する部屋との距離が離れており、必死に後を追う。
凹みの事はあとでロゼリアに伝えておこう。今はあれに集中しなれば。全力で来た道を戻った。
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タイムリミットまであと一分。
「ぜってぇ、間に合わねぇぞ! これぇ!」
シルヴァは、押しながら叫ぶ。
現在、グラウンドまでの距離約二百メートル程。結構頑張った方ではあると思う。すでに落下する部屋は、地上からハッキリと確認でき何も知らない者が見れば口をあんぐりと開けて驚くことだろう。
「やべーな。さすがにこれ損害無しってのは無理があるぞ!」
愚痴を溢すシルヴァ。腕の筋肉はすでに疲労がピークに達している。さっきまでの戦闘の後だ。シルヴァ自身の気力もそろそろ限界に近い。
ニックから送られてくる魔力は徐々に増えているが、念力と飛行を同時に使っているため帳消しになっている。
念力はあくまでも補助。持ち上げられない以上落下はする。もう上からでも本校のレンガを数えられるくらいは近付いた。これ以上は……。
「シルヴァぁぁぁぁぁああ!」
名前を呼ばれた。その幼い声の持ち主は、シルヴァにこんな事を押し付けた張本人。どこから呼んでいるのかは分からない。
その声を聞いて無性に腹が立った。
「おい、ロゼリア! これ以上はもう俺じゃ無理だぞ! テメェ、どうにかしろぉ!」
「分かっておる! シルヴァ! 近くに屋上があるのは見えるか!」
「屋上?」
下を見渡す。本校の上に周りを柵で囲まれた屋上があった。
「見えるぞ!」
「なら、そこに降りてこっちにありったけの魔力を使ってグラウンドに投げろ!!」
「はぁ!? バカかお前! んなこと──」
「時間がない! はよせんか!」
あんにゃろ。無茶言いやがって。
「だぁ! 分かったよ! どうなっても知らねぇからなぁ!!」
飛行を解いて屋上に降りる。両手は現在進行形で落下中のそれに向けたままだ。全力で屋上の端から端まで走る。
狙うはグラウンド。ロゼリアがどこにいるのかも、何をしようとしているのかも分からない。
一瞬なら行けるか……!
飛行を解いた今。魔力に少しの余裕は出来た。なら、念力で飛ばすより、虚無の手で安全かつ正確に投げたほうが得策。
今ある魔力ギリギリまで両手に籠める。たった数秒の上位魔術の展開。腕が少し軽くなる。これなら……!
最後の一歩を踏む。
「おら、飛んでけぇぇぇ!!!!」
両腕を投げる動作で振った。落下しているそれは、少し勢いをつけてほんの少し弧を描く。下に付いている土はボロボロと崩れていき。上にある瓦礫も落ちてくる。それを小さな炎が砕いていくのが見えた。
「投げたぞ! ロゼリア!!」
シルヴァが叫ぶ。
だが、明らかに足りない。このままではグラウンドに届かない。
どうすんだ、ロゼリア。何をするというのだ。
落下する物を見ていると緑色の何かが高速で巻き付いていく。二つに割れていた物が一つになっていく。
「なんだ、あれ……!」
細い緑色の何か。目を凝らしてよく見てみるとそれが蔓だと気が付いた。色んな方向から巻き付き一塊となる。
「シルヴァ! 今すぐグラウンドに来い!」
また呼ばれた。
魔王使いが荒すぎる。
「あのやろぉ、まだなんかしろってか!」
軽く助走をつける。柵を踏んで蹴った。柵がぐにゃりと曲がったが今は気にしない。
シルヴァの体は弧を描く。体を異様な浮遊感が襲い、落下する時にくる内臓を押し上げられたような感覚が気持ち悪い。旋風魔術で空を飛ぶのとは少し勝手が違う。
緑が巻き付いた落下する物を通り過ぎグラウンドの土を滑る。
顔を上げると金髪の少女がこちらに走ってきていた。
「ロゼリア! 今度は何しろってんだ!?」
「来たか、シルヴァ! すまんの! じゃが、これで片付く!」
色々文句を言ってやろうと思ったのに、謝られては気が抜ける。
ため息を一つつく。
「んで、何をすれば良い」
「近くに蔓が地面から出てるじゃろ? それを思い切りこっち側に引っ張って欲しいのじゃ。そうすれば、グラウンドにあれが落ちるじゃろ」
周りを見渡すと地面から一本蔓がピンと張って出ていた。だいぶ細い。切れたりとかしないのだろうか。よく見るとロゼリアが使った魔術のようだ。なら一先ずは安全。
蔓を両手で握り呼吸を整える。
今から行うのは単純。引っ張るだけ。
「よし、ロゼリア。準備出来た。お前も──」
「それじゃ、頼んだぞ。シルヴァ。後は任せた!!」
すでにその場を退散しているロゼリアの後ろ姿。
目を疑ったが、事実だ。
「ろ、ロゼリアぁぁぁぁぁああ!! テメェェェェ!!」
叫ぶがもう遅い。舌打ちをし蔓を力強く握る。腕になけなしの魔力を込め全力で引っ張った。足が地面にめり込む。奥歯を噛みしめ腕が千切れそうなほど強く引っ張る。
落下する物が勢いよくこちらに向かってくる。
ほぼ怒りという感情で引っ張っていた。もちろん、その相手はロゼリアだ。
「後で絶対ぶん殴るからな! 覚悟しとけよぉ! ロゼリアぁぁぁ!!」
血管が切れそうだ。体を反って引っ張る。
瞬間。プツンッ。
何かが切れる音がした。やべ、血管切れたか? と思ったが違った。
切れたのは引っ張っていた蔓だった。伸びていた蔓が途中で音をたてて切れた。体がよろける。転ばずには済んだ。危ない、危ない。
見上げる。
こちらに飛んでくる巨大な落下物。
「──────あ」
爆発のような音と共にそれはグラウンドに落ちた。
「シルヴァー!」
杖を持ってグラウンドまで走ってきたニックは名前を叫ぶ。後ろには、リナがついてきている。落下していたそれは、しっかりとグラウンドに落ちていた。落下した時に盛大に壊れたのか瓦礫の山と化していた。
辺りを見渡すが、落とした本人が見つからない。
落ちた物を見つめていたロゼリアに近付く。
「先生!」
「よぉ、ニック。それにリナも。二人ともよく頑張ったの」
「あぁ、いえ……って、そうじゃなくて! シルヴァは!?」
「あそこじゃよ」
ロゼリアは何故かグラウンドに落ちた物に向かって指をさす。一瞬、何を言いたいのか分からず沈黙する。
「……えっと……」
「じゃから、あそこじゃよ。あの瓦礫の山を積んだものを一人で引っ張ったんじゃ。んで、そのまま……」
「それじゃあ……シルヴァは……あの瓦礫の下に?」
信じられない。まさか、シルヴァが……。
なぜか、目の奥が熱くなる。折角仲良くなれたと思ったのに。まだ特訓も全然してない。教えてくれるって言ったじゃないか。なのに、
「し、シルヴァぁぁぁぁぁ!!」
瓦礫が弾けた。
「え?」
音がした方向に視線を向ける。そこには、息を荒げたシルヴァの姿があった。体は、傷だらけで上半身は裸である。ふらふらと一歩一歩前に進む。
「シルヴァ!!」
思わず駆け寄った。
ニックの存在に気が付いたのか、視線が重なる。
「よぉ、数時間ぶりだな、ニック」
「シルヴァ! 大丈夫なの!?」
「あたりまえだ、言っただろ。失敗しねぇって」
小さくシルヴァが笑う。初めて見るシルヴァの顔だった。優しくて、頼もしくて、とても魔王には見えない。無性に泣きたくなる。
「おい、泣くんじゃねぇよ。涙脆すぎだろ。お前」
シルヴァの手がニックの頭に乗る。その手は温かくさっきの笑顔のように優しかった。
「やはり生きておったか、シルヴァ」
「良かった! シルヴァ。無事だったんだね!」
ロゼリアとリナがニックの後を追って来た。二人は、シルヴァの無事を喜んでいるのかいつもより笑顔が眩しい。
そんな笑顔を見たシルヴァは、二人に近付いていく。正確には、ロゼリアに近付いていく。
そして、とんがり帽子の上からロゼリアの頭を鷲掴みにした。
「なぁ、ロゼリア……覚悟、出来てんだよな………?」
「……な、なんの事じゃ?」
明後日の方向を向くロゼリア。
「テメェのせいで危うく死にかけたんだ。それにあんな作戦聞いてねぇぞ。お前、これも全て計算の内だっただろ。俺が蔓を引っ張り、蔓は千切れる。その勢いでこのグラウンドに落とす。……だろ? なぁ」
ロゼリアの頬を汗が伝っていく。
「いや、その……」
「反論あるか、ロゼリア?」
沈黙。ロゼリアの目が泳いでいる。だが、諦めたようにシルヴァに向き合う。大きく息を吸い吐く。
「許してちょい」
上目遣いのロゼリアに大きな音を響かせてげんこつが叩き込まれた。ニックもリナもそれを見て笑みが溢れる。安心が生まれた瞬間だった。
これで一件落着。だから、ニックは三人の顔を笑顔で見つめた。
「みんな! お疲れっ!」
これで終わったのだ。二人の悪魔とのニックたちの戦いは。約一時間の死闘。互いが命を懸け戦い、命を懸け守った。
しかし、彼らはまだ知らない。これがほんの始まりに過ぎないことを。




