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最終話ダイジェスト

わたし、どこにでもいる普通の彗星の如く現れた孤独の覆面脱法ヤク中電波ゆんゆん湯けむり倫理アンドロアイドルエセエルフ・オブ・ダブルフェイスで世界の敵となった救世主メル・BAN・マックスウェル。

だったんだけど、今はそうした過去を全部捨てて、ただの旅人メル・BAN・マックスウェルになった。

わたしは王国に追われ、正体を隠しながら全国を巡っていた。

第二第三のエスターテが現れたときに備えて、各地でシン・シングル・フォースを伝承することにした。

特に彗星被害地区では、後遺症で魔術が使えなくなった人たちへの代替技術として快く歓迎された。

もちろん全てがうまく行くばかりではなかったが、そう遠くない未来、世界はより良くなっていくだろう。

今はただ、それを願うばかりだ。

















「それは嘘だな」


頭の中に響くのはシン・シングル・フォースの声。すなわち、わたしの意思そのもの。



「一体いつまで、人の目なんか気にしてるんだ?」


シン・シングル・フォースを使えば使うだけ、その声は大きくなっていった。



「『過去を捨てた』? そうじゃない、現実から逃げているだけだ。『世界をより良く』? 違う、格好つけて罪悪感から目をそむけているに過ぎない」


エスターテの策略でマックスウェル家は没落、共に戦った学友は全員命を落としていた。

わたしは過去を捨てたのではなく、永遠に失ってしまったのだ。


たしかにエスターテは悪であったが、もしあのときエスターテの誘いに乗っていれば、少なくともそうした命は救われたはずだ。

代わりに失われる命はあったかもしれないが、わたしはこれまでの恩を仇で返すようなことにはならなかったはずだ。

そうだ、少なくとも過去に学友を救うために行商人の命を奪っている。

それなのに何故、今回はみんなの命を奪うような選択をしてしまったのだろうか。

わたしは目先の正義感に囚われてしまったのだろうか。

本当に正しい選択だったのだろうか。

あらゆる決定への自信を失い、ただ惰性で生きるだけの日々が続いた。


わたしは罪悪感から逃れるために全国を転々としているに過ぎない。

人々からの感謝と承認で、後ろめたい気持ちを誤魔化しているだけなんだ。

向き合うこともできず、かといって苦しみから逃れるために命を絶つような勇気も行動力もない。

人目を避ける逃亡生活に加え、そうした精神的疲労から、わたしは徐々に消耗していった。


最近は食欲も落ち、寝ているだけの日も増えた。

いずれこうやって死んでいくのだろうかと、ぼんやりとしたイメージが浮かぶ。

野営の寝床に入って空を見ていると、ふいにわたしを看病してくれたジェスティ・ブラウンのことが思い出される。


思えば遠くに来てしまった。

普通の女学生でCクラスのナンバー91だったあの頃には二度と戻れない。

どこか暖かくて、なんでもないことの幸せで満ちていたあの頃。

もう一度だけ戻りたい。

これがわたしの本当の気持ち。

長らく乾ききっていた感情に熱が戻る。

ふつふつと湧き上がるなにかに、思わず涙が出た。

これが、嘘偽りなく、かっこつけず、ずいぶんと遠回りしてようやく辿り着いたわたしの本音だ。

覚悟を決めた、わたしの最後の戦いが始まる。


自在の力、シン・シングル・フォースの出力は使用者の意思に依存する。

だから今ならわたしは何だってできると思った。


まずは時間の確保だ。

シン・シングル・フォースを使って現在時間を微小区間Δに分割。

極限まで分割された時間Δの総数は無限に等しく、わたしはそのひとつひとつを渡り歩きながら悠久の時のなかで魔術と時間についての研究を進めた。

そもそもシン・シングル・フォースは意思であり、そこから新たな人格を作り出すことも可能だ。

わたしは二百人のわたしを作り出し、合議制ニューラルネットワークを構築した。

そこから研究は加速、時空の流動性に辿りつくまでにはさほど時間もかからなかった。


作戦は次の通り。

はじめに、運命を変える意思を埋め込んだ人格を新たに形成し、過去の時系列にその因子を送り込む。

名前はいくつか候補に挙がった中からアレン・ウィングフィールドに決めた。

過去のわたしとアレンの運命は、複雑に交錯するよう仕掛けてあり、ここから今に至るまでの歴史を徐々に改変させる。


不確定な要素も多いし、失敗するかもしれないが、幸いにも時間はいくらでもある。

わたしの意思が潰えない限り、パラメータを変えて何度でも続けてみるつもりだ。

二百人のわたし、洗脳意識、妖精、シン・シングル・フォースの意思、すべてのチェックが済んだ今、記念すべき第一回目の歴史改変を試みる。

わたしは少し先の未来を想像してわくわくしながら、万感の思いを込めて時空転送の術式を唱えた。

世界が少しずつ暖かい光に包まれていく。

ここから、わたしの本当の物語が始まるのだ。


(以下本文は、出版契約上の都合から省略させていただきます。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。)


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