知ってしまった
知ってしまった
メガネをかけたあの子がいじめられていることを
誰も助けず、それどころかあの子を貶し、蔑み、嘲笑っていた
知ってしまった
赤いリボンを着けたあの子が家庭内で暴力を受けていることを
増え続ける痣を私はただただ見てることしか出来なかった
知ってしまった
小柄なあの子が声を殺しながら泣いていることを
その時私はつい声をかけてしまった
「どうして泣いてるの?」
そしたらあの子はこう言った
「生きてるのが辛いの」
そう言ってまた声を殺しながら泣き始めた
私は何も言えなかった
知ってしまった
黒髪のあの子が首を吊ろうとしていることを
彼女の儚くボロボロの両腕が天井に垂れ下がっている縄に
少しずつ
少しずつ
近づいていく
止めてって
死んじゃダメって
私は心の中で叫ぶ
何度も
何度も
声が枯れても
何度も
何度も
私はふと気づく
何故
私は
ここにいるのだろう、と
だから
メガネを外し
赤いリボンをほどき
小柄で黒髪の私は
この理不尽な世界を
現実を
真実を
自分を
受け入れた
目を背けることを止め
前を向くために
「自分」であるために