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主人公になりましたが夏休みです 1

強制的に主人公とはいかがなものか?の続きです

この主人公は学生です。

 拝啓、いろんな世界の主人公様へ

 学園一のイケメンとラブコメしたり、さらわれたお姫様を救うために魔王と戦ったり、元の世界にもどるために問題を解決したり、どこかで謎を解いていたりと忙しくお過ごしでしょうか?

 きっとある意味で充実した日々を過ごせているのではないかと思います。

 かという私も先日、強制的に(←ここ重要)主人公なってからある意味充実した日々を過ごしていますよ。

 いきなりですが主人公というのは戦うものです。魔王であれ、ライバルであれ、ボスであれ、なにか倒すべき相手がいます。生き物でなくとも問題をやっつけなくてはいけません。

 なぜこんな話をするのかというと私も戦っているからです。そう・・・・・

「夏休みの宿題という名の敵とな!」

「学生の敵だよネェ、それ」

 人が一生懸命問題解いてる横でポテチくってるこいつをしばいて構わないと私は思うのです。


 神崎 悠、十七歳。性別は女で、身長は高くもなく低くもなく、成績は中の中から中の上をうろうろして、運動神経は普通。

 先日強制的に世界を救う主人公にさせられました。

 そんな私は今、家で宿題と戦っております。高校三年生なので受験勉強もある。それが現実である。

 別に主人公になったからと言って頭が急によくなったり、運動神経が急に跳ね上がったりするわけではないのである。やらなきゃ落ちる。

 そして隣でぼりぼり人のポテチくっているフード被った謎の人物は先日私を気に入ったとかで強制的に主人公にしたすべての元凶ユガミくんである。

 どこから来たかなど一切不明で、先日の事件もどうやって解決したか訳が分からないままである。

 私が分かっているのは、世界の問題をなんとかしないとなんだか大変なことになってしまうということである。

 しかも解決方法を聞いたら一言。

「知らない」

 私はこいつを殴っても許されると思う。普通なんか指針としてあるだろ、JK。

「大体関係した魔法使いが多すぎて、魔法が複雑に絡み合ってるんだヨー・・・核の魔法使いを今やっつけても近くにいる奴が核になっちゃうし・・・外から絡みをとってかないと核がなんだかも、誰だかわからないし、直し方もわからないんダヨ」

「なんだその長編になりそうな設定、展開がグダグダだと読者もあきるぞ」

「読者じゃなくても、ボクが飽きちゃうよ」

「だめじゃねぇか」

 世界の説明が終わった後、話はそこで終わり、時間が過ぎて夏休みがやってきた。

 そして問題が浮上した。

 両親が海外に赴任してしまったのである。いきなりすぎる、なんだこれ、主人公補正か?

 そしてなぜか親戚という形で家にやってきたのが、このユガミくんであった。

 今ならわかるが、ユガミ君がいたその存在の場所は誰かほかの人物がいたはずである。そう、本当の親せきが。

 両親が空港に向かった後、ユガミくんにそれをきいてみると、なんとまぁ、すでにその親戚さんは【魔法の世界】の自分に存在を変換されていたらしく、ユガミくんがさらに存在を書き換えてきたとのこと。

 疲れるから二度としたくないといっていた。

 回想している場合ではない。夏休みの宿題をさっさと終わらせて、受験の勉強をしなければいけないのだ。

 いつ起こるかわからないイベントより、必ず提出しなければいけない宿題を終わらせるのが先である。

「ボクは【歪み】を感知してうごいてるからナァ・・・なんか【科学の世界】ではありえないことが起きないと認識できなかったりするんダヨ・・・会えばわかるケド」

「だがしかし、外にいってる暇と体力はないぞ。ただでさえ温暖化で外が熱くなっていっているのに外なんかに出たら倒れる」

「激しく同意。あー、ボタン一つで冷たい風が来るなんてシアワセ!」

 こんな主人公と相方で世界は救われるのだろうか、すでに選択を誤った気がしてならないのは、多分、気のせいじゃない

「そういえばユガミくんって人間なの?魔法使いなの?」

「知らない、ボク、気づいたら生まれてたし……それで歪みを感じて世界を救わなきゃって思ったしナァー」

「なんだその設定があとのせさくさくできそうな設定は、本当に大丈夫なのか」

「いいじゃん、あとのせさくさく美味しいよ」

「バーロー、あとに混乱するわ。あれ?こんなのあったっけ?ってなるわ」

  数学の丸付けは単純作業で飽きる。

 あ、間違えた。どこで間違えたんだ……ん?この計算間違ってたのかー、あーめんどくさい

「てか、なんであとのせさくさく知ってるんだ」

「タベタ」

「おのれ、夜食を勝手に食べたな」

 よし、丸つけ終わり。次は社会のワークだ、教科書を用意せねば……

 いそいそと机から立ち上がって自分の部屋から教科書を持ってくる。

 自分の部屋で勉強しているとユガミくんがドアで太鼓の◯人し始めるのだ。非常にうるさい。

 本人いわく暇だそうで。

 本当に一回、私はこいつを殴っても許されると思う。

 リビングに戻ってくるとユガミくんが数学のワークを眺めていた。

 ……落書きとかしようとしてないよな。

「この数学ってやつ魔法の構成に似てる。やっぱり取り扱いが違うと出てくる答えも違うだろうネ」

「へー……」

 今は魔法に近い数学よりこの世の歴史である。

 教科書とワークを開いて、説明してある場所を探す。

「はー……暇ダァ」

「知らないよ、私の部屋でゲームでもやってきたら?」

「エロ本探していい?」

「私、健全な女だからエロ本持っていないよ」

「えぇー……ここは実は持っててキャー的な展開だろ、jk」

「お前、私になに求めてんの?」

 一段落したところでワークを閉じる。今日はここまで、続きは明日だ。

 自分のゲームをリビングに運んでセットする。テレビの後ろは埃がたまりやすいので気を付けよう。

「大乱闘で」

「二人で大乱闘やって何が楽しいんだ」

 ユガミくんが私のとなりに座ってコントローラを握る。

 私は数あるゲームカセットの中から赤いおじさんの車のゲームを取り出す。

「バナナを装備したボクに勝てるものはいない!」

「たまに仕掛けすぎて自分でははまってるけどな」

 スタート音共に一斉にたくさんの車が走り出した。

 本当に私が主人公でいいのか、自分でも何度か非常に心配である。


 ゲームも一段落して、コントローラを置く。

 長時間やると目が痛くなる、適度な休憩をしましょう。

 時計を見ると午後5時ちょっと過ぎたころ、夕方に向かう時間だ。

「ユガミくん、コンビニにアイスでも買いに行こうか」

「ヤッタ!ボク、ハーゲンがいい」

「あほか」

 ユガミ君の頭をはたいて財布を用意する。「アッイス、アッイス」と嬉しそうに玄関にいくユガミくんにため息をついた。

「うれしいのはわかるけど、浮かないでくれ。あまりに不自然だろう・・・」

「あ、ヤッベ」

 音を立てずにユガミくんの足が床につく、本当にどうやって飛んでるのだか

 それを聞いてもやはりユガミくんはわからないというのだ。

 ユガミくんは自分がどうやって魔法を使っているのかもわからず、だれが親なのかもわからず、なんで歪みを感じて世界を救わなきゃいけないのかもわからない。

 わかっているのは自分がどうにかしないと世界が終わるっていうことと、性別、名前、そして歴史だった。

 玄関を出てむわっとした空気を感じてすぐに家に戻りたくなる。

 ユガミくんも顔をゆがめていた。

 あぁ、あとユガミくんについてわかったことはいろいろある。

 甘いものが好き、ぐうたらするのも好き。そしていつも笑ってるけど感情豊かであること。

 笑顔なのに表情が変わるのは不思議だと思う。

 もうすぐ日が落ちるだろうコンビニへの道を歩きながらユガミくんとたわいもない話をする。

 パ〇コを買って二人で分ける。店員さんは地味にやる気のない声でお礼を言った。

 このまま何も起こらずに世界破滅の危機がなくなってしまえばいいのにと思う。

 私は主人公になったけど、見知らぬ人の命のために自分の命を張れるような正義感は持っていないし、戦うのは好きではないし、冒険するのは面白そうだが命はかけられない。

 つねに『命を大事に』だ。

 でも世界はそれを待ってくれないようで。

「悠、主人公らしさ出す時ダヨ」

「激しくお断りしたい」

 前のほうをふらふらと歩くそれは人ではない。人型をしてるけど人ではない。

 人は頭の上に耳なんて生えてないし、あんなとがった爪もしてない。

 そして尻尾も生えてない。というかあれはただのコスプレではないのか?

「現実逃避したい気持ちもわかるけど、今は集中しないとやばいネ!」

「にこにこしながら言うことではないな!!」

 こちらを見た顔はところどころ毛にまみれたいたが人間に近いものだった。

 けれど口からみえるとがった犬歯が、ゆっくりと四足歩行の形に入る姿が、それが人間ではないことを表している。

 こんな暑いときに走ったら熱中症で倒れるんじゃないかと思いながらも、自分の体は素直で後ろを向く。

 そして走り出した。


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