プロローグ 【IF!IF!IF!IF!】
初投稿となります。至らぬところもありますが、読んでいただけると幸いです。
パソコンでの改ページの仕方がいまだわかってないので見にくいかもしれませんがすいません。
何が悪かったのか
いつものように起きて、いつものように学校に行き、いつものように授業を受け、いつものように帰っていたはずだった。
私は痛くなりはじめた頭を押さえた。なぜ、頭が痛くなったかって?非常に簡単なこと。
目の先に誰かが倒れているからだ。しかも怪しい恰好の誰かが
もっと前に見ていれば私は避ける。だが、この誰かさんは曲がり角に倒れていたので曲がったときに気付いたのだ。
しかも黒いぶかぶかのフードの服に黒いぶかぶかのズボンといった服装であればさらに近寄りたくない。どっかの宗教の人間じゃないのかと疑ってしまうような服装である。
見てしまったからにはどうにかしないといけないでだろう。放置したところを誰かに見られたら後々面倒だ。
とにかく、救急車でも呼ぼうか、そう考えついて携帯電話を出す。
こんな非日常さっさと終わらせてしまいたい。
とりあえず意識があるかどうかだけでも確認しとこう。そう思ってしゃがんで男を軽く揺さぶった。
「・・・ぅぅ」
意識はあるようだ、今は5月だし熱中症になる時期でもないんだけどな。
立ち上がって携帯で救急車を呼ぼうとした。
けど、その携帯は救急車を呼ぶことはなかった。
起き上がった誰かが携帯を取り上げたからだ。
「あ・・」
「ネェ、キミ」
―主人公にならない?―
そういった誰かに対して私は「はぁ?」と返したのである。
プロローグ 【IF!IF!IF!IF!】
「ならない」と答えた私にその誰かは「そう」と言ってふらふらどこかに歩いて行った。
そして一か月たった今でもその誰かは見ていないし、私の日常も何も変わっていない。
きっとあれは夢かなんかだったのだと思うのもしょうがないだろう。
そして今学校ではある男の子と女の子が有名である。
いきなりなんだと思うかもしれないけど、その二人はなんと魔法が使えるというのである。
たしか速水さんと朝倉さんだったか、その二人は街で起こる問題を解決していっている。
問題といっても世間的には大きいものではなく、おこなっていることもなくなったものを探したり、どこかのおうちの元気のなくなった植物を元気にしたというレベルらしいが。
しかしこの二人が有名になった問題は大きいものだった。
この街にはお金持ちの大きな豪邸があるのだが、それが家事になった時、二人が水を操って火を消したらしい。
そこから二人は有名になった。
みんなどうやって水を操ったとか炎を怖がらずにそんなことをするなんてすごいなんて二人をほめていた。
私も気になったが、そのことよりも気になったのが火をつけた犯人がまだ捕まっていないということだ。
つまり放火魔はまだこの街にいるのだ。
けれど周りの学生たちは二人に夢中だ、大人たちですらそっちのほうにむかっている。
魔法が使えるなら、犯人をさっさと見つければいいのに。
犯人にとって二人は恨みの相手だろう。だって、せっかく火をつけたのに消されたのだから。
こんな思考回路をするなんて推理小説の読みすぎだろうか。
私はなんにもその二人に言わず自分の日々を過ごした。
「ネェ」
七月になった最初のころ、再びその誰かはあらわれた。アイスを買いに行った帰りだった。
フードの下から赤い光がのぞいている。。口元はニンマリと笑っている。
気味が悪いというより現実離れしている。アイスが溶けそうだなんて思う、私も微妙に現実離れした思考回路しているが。
関わったら最後、嫌な予感しかしない。
しかしなぜか私の手元を見つめている。
私の手元にあるのはパプコ、二本入りのあれである。
謎の話をしていたかと思えば、人のアイスをじっとみる。完全にどこかおかしい。
私はその視線に耐え切れなくなって、パプコを一つ渡した。
「どうやって食べるノ?」
「ここをちぎってたべるんだ」
なんで食べ方を知らないかとか私は突っ込まない。めんどくさそうだからだ。
誰かはパプコを加えて私の手をひいて、ベンチに座った。
なにがしたいんだろうな、こいつ。
「哲学的な話スキ?」
「いや、好きじゃないな」
「実はこの世界はたくさんのIFであふれていてネ」
「きけよ、話」
誰かはパプコを口に話し続ける。てか、私哲学的な話好きじゃないんだけど。無視か。
「君があの時、世界の救世主にならないと選択したから起こらなかった未来があるし、起こった過去があり、こうしてキミと話す現実がある」
「はぁ・・・」
「生き物っていうのはたくさんの選択肢から一つだけ選んで生きているもので、それは思考回路が複雑なものほど、選択肢がたくさんあってさ、そしてたくさんの選択肢を捨ててるんだ」
哲学な話は分からないのに、私は返事もしていないのに誰かは話をつづけた。
「時にはその人の人生を左右する選択の場面がある。誰にでも、どんな生き物にでも」
誰かは、立ち上がって私の前に跪いた。下から私の眼を見つめる真っ赤な目
「キミの大きな選択はもうすぐくる、キット」
蝉の声がうるさい、はずだった。けど、今は誰かの声しか聞こえない。
「キミは選択しなくちゃあならない、きっと、イツカ、スグニ」
ニンマリと笑った口から紡がれる言葉の意味が全く分からない。第三者がきいたってきっとわからない。
言われた本人である私が分かっていないのだから。
「もうすぐソレは起こる。キミの選択を迫るソレが」
まったく意味が分からない。
誰かは私の眼をまっすぐ見ていた。表情はニンマリとしていたがどこか確信を持った表情だった。
「どの選択を選んでも間違ってはいない、キット。間違ったと思うのは自分が後悔してるカラ。デモネ、忘れないデ」
誰かは立ち上がって私にいった。
「絶対後悔しない選択なんてナイんだから」
誰かは陽炎のように消えた。私は体調を崩しているのだろうか。ここのところ、日常とかけ離れた出来事が起こっている気がしてならない。
ここで、よく言われたことを考えればよかったのか、それともすべて忘れてしまえばよかったのか、これもまた選択肢だったのかもしれない。
さて、何でこんな長々と話をしているのかというと、ある意味走馬灯のようなものだと思ってほしい。
なんで、走馬灯なんか見るのかって?死にかけてるからかもしれない、学校に起きた火事のせいで。
神崎 悠、17歳で死にそうです。
ちなみに火をつけた犯人は、有名人二人でした。理科室で火をつけてるのを目撃した。アルコールランプを生徒が簡単に持ち出せるようにしとくんじゃねぇよ、くっそ。
多分、金持ちの家の火付けの犯人もこの二人だろうな、自分たちで火をつけて、自分たちで消したんだ。自作自演ってやつ。
で、面白いポイントが一つあるそれは、二人が魔法とやらを使えなくなっていたことだった。
慌てふためく二人をしり目に炎はあざ笑うかのように、校舎を食い尽くしていく。
まるで意思を持っているかのように。
出入口は開かないし、魔法は使えないしで、二人は何か叫んでいた。
そんな二人を放置して私は、何とか生きようと炎から逃げ回っていたわけだが、とうとう煙を吸い続けて動けなくなってしまったというわけだ。
酸素も使っていたんだから当たり前である、馬鹿か私は。
壁に寄りかかりながらぼぉっとしていたら、あの有名人二人、速水さんと朝倉さんが廊下の先から歩いてくるのが見えた。
なぜか、どこかの物語のように黒いローブを身にまとって。
頭が酸素不足でおかしくなっているのだろうか、理科室で見た彼らは制服を着ていたはずだし、黒いローブなんてもってなかったし、鞄にだって入らないはずだ。
「これであとはこの火事が起きなかった未来をつなぎ合わせちゃえば、居場所を奪える」
「そうだねー、あー、科学の世界の人間って馬鹿なんだね。ホイホイ、魔法を信じじゃってさ」
未来をつなぎ合わせる?居場所を奪う?科学の世界の人間?まったく意味が分からない。
「やっとあの世界ともおさらばかー」
「魔法を使って金儲けしようぜ!」
つまりあの二人はこの世界の人間、科学の世界の人間じゃない?居場所を奪うってことは、あの二人は違う世界の速水さんと朝倉さん?
こんなことを考えてしまうなんてどうやら私の頭はとうとう酸素が足りなくなって馬鹿になっているようだ。
どんなファンタジーだよ。
だけど、確かなことは一つ。
私はそんな自分勝手な考えに巻き込まれてこんな目に合ってるってことだ。非常に腹が立つ。はらわたが煮えくり返るっていうのはこのことだ。
普通に生きてきて、普通に過ごして、何でこんな目に合わなきゃいけない。
思い返せばここ三ヶ月でいろいろ起こりすぎだろ、どこのファンタジーだ、どこの物語だ。
急展開にもほどがある。きっと四月から今までのことが書かれていたら読者も「急展開すぎるだろ!」と突っ込みを入れるところだ。
いろいろ考えていたら視界がはっきりしてきた、アドレナリンでも出てるんじゃないだろうか。
・・・・視界にアドレナリンって関係あるのだろうか。
「ゲッ、校舎に人がいたのかー」
「うわっ、処理めんどい」
処理とかいうな、物じゃないんだから。
二人が私に向かって歩いてくる。なんか、水みたいなもの手に集めてるじゃないですか、やだー
さっきの話の繋がりで考えるがこれが物語だとして、主人公は誰なのか。
敵に追い詰められたような私か、それとも魔法なんてものが使える異世界(仮)の速水さん(仮)と朝倉さん(仮)か。
主人公にしてはスペック低すぎるだろう私、頭も普通だし、運動神経も普通だぞ、おい。
主人公の速水さんと朝倉さんは哀れな目撃者を消した後素晴らしい魔法を使って、未来をつなぎ、幸せに暮らしました。次回作!速水さんと朝倉さんの恋物語が始まる・・・!
・・・・誰も読まないわ、こんなの。てか、私の頭は大丈夫か?今更ながら心配になってきた。
複雑なこと考えるのはやめよう、そのうち妄想と変わらなくなる気がしてきた。てか、現実逃避してるんだな、私は。
「不幸だったんだよ」
「じゃあね」
「そんな流れしらん」
私は立ち上がって至近距離にいた速水さん(仮)の顔面を殴った。鼻が折れればいい。
朝倉さん(仮)はぽかーんとしていて、速水さん(仮)は鼻血を垂らしてた。ざまぁ。
「ここは普通、『あきらめない!』とかいうものじゃないの?!いきなりグーパン?!」
「そんな常識知らない、どこの物語の常識だ」
どこかの小説のように誰かが助けに来るのなんか期待してない、何か奇跡が起きて攻撃がそれるなんて考えてない。
ここは現実で、そんな主人公補正なんてご都合主義存在しないのだ。人生ってのは思い通りにいかないことばかりで、嫌なことが多いから、そういう【ありえないこと幸せ】が好まれる。
リアルで起きちゃったらつまらないだろう。
非現実なことが起きているがご都合主義が起こらないなら、やられる前にやるしかないだろう、JK。
唖然としている朝倉さん(仮)は顎に一撃入れといた。顎をやると脳が揺れて動けなくなるって誰かが言ってたから。
頬を殴って胸倉つかんでなんか語るとかないから、生きるのに必死だから私。
「そこがいいよネ!」
「・・・あんたみたいな謎の人物って主人公が困ってる時にあらわれて、助ける感じだよね。普通」
私のはじまりの非日常的要素の誰かだ。赤い目が光ってる。
「いやここでも物語としては完璧だと思うけどネ!このあとボクと契約してこの二人を倒しちゃえばキミは物語の主人公だ!」
誰かの手が私に差し伸べられる、私はその手を・・・・・
完全にスルーした。
そしてそのまま倒れてる朝倉さん(仮)をスルーして、鼻血出してる速水さん(仮)の顎に一撃入れた。
「ええぇぇぇ!ここでスルーしちゃう?!普通」
誰かがぎゃんぎゃんいっているが知らない。なにが主人公になれるだ、こんな起承転結の起と結しかないような物語の主人公頼まれたってなりたくない。
それに
「主人公ってのは頭がいいとか、運動できるとか、どっかスペックが高いんだよ。私はそんな高いところなんてもってない」
「平凡主とかあるジャン、今がはやり時だよ」
「なんだそのお買い得だよみたいなみたいな言い方、やめい」
「お買い得ダヨ!」
「ウィンクすんな、あほか」
こんなこと話してるが周りは火事真っ最中である。あほか。
脱出の最終手段として学校の窓をたたき割ることも考えたが割れなかった。この時ほど、学校の分厚い窓を恨んだことはない。
「ていうか【科学の世界】では魔法が起こした火は、魔法での水でしか消せないヨ」
「なんだその設定、めんどくさいな。でも、アルコールランプだったぞ、火元は」
「あんなちっぽけ火元でこんなに早く火が回るわけないでしょ。魔法で広げたんだヨ。ちなみに魔法でしか消せないのは【科学の世界】にもともとないものだからネ」
どおりで消防車の音が聞こえてるのに火が消えないと思ったわ。
どこか逃げる場所がないかと周りを見渡すがない。それが現実である。
「で、ここで選択ダヨ、神崎悠チャン!」
「テンション高いな」
「ボクと契約すれば助かるヨ!だから契約しよう!!」
「スルーか、だがしない」
「えぇぇぇ!」
誰かが叫んでいるか知ったことか、嫌な予感しかしない契約なんか結べるか。
だがしかし、現実は非情である。その誰かは私の背中に飛びついてきて笑っていた口をさらににやけさせていったのである。
「しかし強制デス!ボクがキミを気に入ったので!!問答無用で!!契約してもらうヨ!!!」
「は?!おい、ふざけんな!!」
「ここで素直に契約しとけば、後が楽だったのにネ!!」
こいつが前言ってた大きな選択ってこれか?!選択が大きく分けても【契約する】しかないじゃんか!!なにがどっちを選んでも後悔するだ!選ぶ余地すらねぇじゃねぇか!!
あんなにシリアスに前振りしといて結果がこれって荒あれすぎるだろ!!
そんな私の理不尽を飲み込むかのように視界が暗くなって私は気を失った。
起きたら自分の部屋のベッドだった。慌てて起きてリビングにいけばいつも通り、母が朝ごはんを作っていて、父が新聞を読んでいた。
ニュースに学校が燃えたなんてことは流れていないし、両親もおはようといつも通り言ってきた。
学校の支度をしても何も言われなかったし、登校中も他の学生が歩いてるのを見た。
あぁ、あれは長い夢だったんだと。悪夢だったんだとそう思いたかった。
「しかし現実であったテネ」
「お前、なんでここにいるの」
誰かが学校の屋上のタンクの上でのんびりしていた。すべて夢だったらよかったのに。
誰かは高さをもろともせずタンクから飛び降りて、私のおやつを食べ始めた。おい、こら。
「キミも訳が分からない状態はいやでショ?だから説明しに来たんダヨ」
「もう訳が分からなくてもいいから私を巻き込まないでほしい」
「それは無理」
「ちくしょう!!」
誰かの顔面に大福投げたら口でキャッチされた、ちくしょう。
「前にさー、世界にはたくさんのIFがあるっていったじゃん?そのIFっていうのはその人が住んでいる世界から見たありえないことがIFって言われてるだけで、存在はするんだよ。決して交わることもないんだけどさー」
「大昔に地球に隕石が落ちてこなかったか、落ちてきたかで科学の世界と魔法の世界ができたし、科学なんて便利なものできなかったから魔法が発達したし、魔法なんて便利なものがなかったから科学が発達したし、まぁ、お互いがIF同士でさ、そのまんまIFだったらよかったんだけどネ・・・」
「なんだ、その不穏な切り方」
「魔法ってさー、本人の精神力で力が決まるからさー、弱いとろくに生活できなかったりするんだケド・・・・科学はみな平等じゃん?機械とか」
「・・・たしかにスイッチ一つでみんな使えるけど」
「それをうらやむ魔法使いが増えてネ、IF世界にあこがれる奴が出てきちゃったの。それでIF世界を研究するやつが出てきて、リンクする部分とか見つけちゃってさー。IF世界である【科学の世界】にこようとする奴らが増えちゃったの」
「なんかもうIFIFIF言われすぎてIFがゲシュタルト崩壊しそうなんだけど」
「もうちょっと頑張って。で、魔法使いが集まってIF世界につながる方法見つけちゃったんダヨ。摩訶不思議をおこす魔法を使うことによってネ」
「でもどこの誰が決めたか知らないけどさー、IF世界と現実世界は交わっちゃいけないんだヨネ。それで歪みが生まれちゃってもう大変」
「深刻な話に聞こえるのにお前の口がくわえてるカステラ棒のせいで全てが台無しだよ」
はー、やれやれって感じで肩をすくめてるけど、私のおやつをどんどん食べていくんじゃない。
私がやれやれってやりたいわ!!
「でもIF世界だから馴染めなくてさ、そこで奴らが考えたのが【存在の変換】ってやつ」
「【存在の変換】?」
「もともといる自分たちにとってはIFの存在の自分と本当の自分の存在を混ぜて、書き換えるってこと。キミが体験したみたいに魔法を使わせたりしてネ。あ、契約とかいってやったりする」
頭が爆発しそうである、もともと頭がいいほうじゃないし、どっちかっていうとリアリストだ私は。
二次元は二次元でありえないと判断しながら物語を読むタイプなのである。
つまり速水さんと朝倉さんはIFの自分と契約して魔法を使えるようになってたわけか。
「自分たちと近い存在にして、【科学の世界】のIFに近づけるとなんとその存在はすごく不安定になるんだヨ。いろいろとネ。例えば、テンションが高くなったり、普段できないことをやっちゃったり」
確かに火事なんて普通に生きていたら起こさないだろう。
「存在が不安定になったらそ周囲も不安定になって、世界も不安定になる。で、完全に不安定になったところで【科学の世界】に【魔法の世界】が入る形で混ざり合う。そこで【科学の世界】であるIFの自分をある方法で消す。すると、【科学の世界】は不安定だった部分がごっそりなくなっちゃうんだヨ。だから、不安定だった存在が起こした火事もごっそりなくなる。で、もし火事が起きなかったらっていう未来をごっそり抜けた部分につなげちゃえば何にも起きなかったことになる」
「あー、だから未来をつなげるとか何とか言ってたのね」
「そ。で、消えた存在であるところに自分の存在を入れて【固定】する。そうすると世界の修正力っていうのが効いて、不安定だった存在が起こしたことがなくなるんだよ、お金持ち放火事件もね」
「どうやって?そこが抜けたらおかしくなるんじゃないの?」
「前に選択肢の話したでショ?あれがすべて修正されるんだヨ。二人は火事を【起こさなかった】、もともと二人は魔法を【使わなかった】ってな具合に。世界が修正してるんだから普通の人の記憶も修正される。で、残るのは存在を変換した【科学の世界】にとってはIFの存在だけってわけ。厄介なことにそいつらはこっちでも魔法を使えちゃうんだヨ」
だから魔法を使って金儲けしようなんて言ってたのか・・・
つまり今私がいる世界では金持ちの火事も、学校の火事も起きなかったっていうことに修正されてるってことか。
「あれ?じゃあ速水さんと朝倉さんは?どうなったの?」
「どっちの世界からも消えた」
「は・・・・」
持っていたおやつ(酢いか)が落ちた。消えた?え、どゆこと?
「悠があの黒いローブ着た二人が来た時点で【科学の世界】の二人はすでに消えてたし、悠と契約したボクが力を使ってここにいるのはおかしい【魔法の世界】の二人を消したからどっちの世界からも存在が消えて世界は元々いなかったって判断した」
当たり前のように、それが当然だとでもいうようにそいつはニンマリ顔のまま言い放った。
「でも【魔法の世界】のやつらは覚えてる。戒めとして、起こり得る現実としてネ」
「起こり得る現実・・・・?」
「そ。魔法ってある意味何でもできちゃうから起こった出来事は絶対忘れないようにされてるんだヨ。で、大変なのはここから」
そいつはカステラ棒の棒をゴミ袋に入れて立ち上がって、両手を広げた。
「さっきもいったようにさすがに世界が混ざり合うなんてことが起きちゃったから歪みが生まれちゃって世界はお互いに修正しようとしてさらに歪んじゃってサ!そこで二つの世界はある一つの結論にいたっちゃって!!」
「・・・結論って?」
「世界が二つあるからおかしくなる、だったら一つにしてしまえっていう結論。でも、おんなじ存在が二つあるわけだからどっちかを消さなきゃいけない。【世界が一つになる時】がきたらどちらかが消える。つまり合計で世界一つ分の存在が消えちゃうってワケ」
あまりにスケールの大きい話についていけなそうになる。どこのSF映画だと声を大きくして言いたい。
「それが起きるとなくなった存在を周囲を修正しようと修正力が働いて、いろんなところを修正される。でも【科学】と【魔法】どっちかの存在が全部消えるわけじゃないからそれに合わせた修正が働いて、でも合わなくてまた習性が働いて・・・・てな感じにループしてコロコロ歴史ならなんやらが変わる世界ができちゃうんダヨ!」
「元気に言ってるけどそれって結構やばいよね?!」
「うん、そんなの非現実的だし、でもその世界に住む人は気づかないしで、ぐちゃぐちゃになって最終的にはなんにもなくなる。無だけが残るヨ」
私は完全に頭を抱えた。もうあまりに現実的な話ではない。下手なミステリー小説のほうがまだマシである。
「まぁ、無になる前にさすがに修正力にガタが来ていろんな人が気づくと思うけど・・・そしたら現実的に争いが起きたりするんじゃないかな」
「完全なる滅亡フラグじゃないですか、やだー・・・」
すべていきなりすぎる。五月に倒れてる変な奴に出会って、六月に魔法を使える人間が現れて、七月に再び変な奴にエンカウント、そして同じ月に火事に巻き込まれて、そして現在それらはなかったことになっている。
そして私は
「それをなんとかするのが主人公になったキミ、神崎悠チャンなんだけどネ!」
「完全に強制的にだけどな」
強制的にこの物語の主人公にされたらしい。すいません、泣いていいですか?
誰が望んでこんな急展開の物語の主人公になりたいものか!!
せめてゆっくり起承転結をふんで進んでくれよ!!
「あ、ちなみにボクの名前ユガミっていうから、気軽にユガミくんって呼んで」
「自己紹介おせぇよ!!」
前途多難な気がしてならない。