表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

その5. 緑紅(くれない)に映ず

ひ、久々の更新ですっ!

眼鏡を、メガネ男子を出さないと気が済まないっ!(マテ)


ということで、ようやく攻略対象さま登場ですー。


なんでしょう、壇上のここからみえる光景は。


・・・巨大な黒い塊りですね、男子の制服を着た人の集団です。

ひ、人って集団になると、こんなに迫力があるんですね。特に黒い学生服なんか着ていると更に圧迫感が。


そのうえ、そ、その上、殿方、いえ、男の人ばっかりーーーっ!!(泣


すでに涙目になりながら、白河のお姉さまの袖を引っ張ります。


「ね、姉さま、お、男の人ばっかりですぅーーーっっ」


前世から通して、こんなにたくさんの男の人が近くにいたことなどないのです。

今世では、半引きこもり学校へもあまり行かない自宅警備というか家事労働に従事しておりましたし、前世で姫様のお近くで侍女をしていた時も、侍女仲間で暮らしておりましたし、警護にあたっていたのも、女武者のお姉さま方でした。


唯一、男の方でお姿を拝見したり、お話をしていたのは、姫様の弟君の碧さま位でしょうか。

あとは、碧さまの警護の若武者さま方が数名・・・。こちらは見かけるだけ。


・・・当時、10歳位の若君とそのご学友でしたので、・・・怖くなかったんですよ。


「可哀想だけど、この学校は、9割が男子生徒なの。女子は私たちだけなのよ・・・」

はい? 今、なんておっしゃいました??

 男子が9割、嘘でしょおっ!


「入学式の入場が別なのもそのためなの。佐保、あの黒い集団の中に並ぶ自信、ある?」

思いっきり左右に顔を振って、NOのサインです。

黒い狼の中に、真っ白な子ウサギを放り込むって、なんのイジメでしょうか?それはいくらなんでも虐待に近いものを感じますっ!


「まあ、すぐには無理だと思うけれど、少しずつ慣れていきなさい。

 壇上にいる男子は、生徒会の役員たちよ。下の獣どもよりはマシだからね。ここから慣れていきなさいな」

 のんびりと恐ろしい事を緑子姉さまがおっしゃる。下の皆さまは、獣なんですか? この学校はどうなっているんでしょうか!?


「さぞかし、あの集団の中に女子が居たら目立つだろうねぇ。『緑、紅に映ず』って奴かな」

漢詩の一説を引用してみせたのは、一緒に壇上に上がっていた見上げる長身を黒い制服に包んだ男子生徒。

どうやら二年生、先輩のようです。秀麗を言われる容貌に細いフレームの眼鏡をかけて柔らかな笑顔で話しかけてくれています、が、メガネの奥の目はあまり笑っていない気がいたします。


うーん、でも、この男の人はあまり怖くない。

油断がならないとは思うけど、近寄りたくないって思う程じゃないなあ。こんな人も居ると思うと、ちょっと安心をした。


「さて、落ち着いたところで式を進行させてもらおうか。ああ、僕は副会長の長利おさり 霧人きりとです。

 どうぞ、よろしく」

彼は自己紹介をしながら、軽くマイクを握ると、その柔らかい笑顔のままで気負うことなく淡々と式を進行させていった。


既に来賓の挨拶や、学校長の挨拶も終わり、これから始まるのは対面式だそうです。

新入生と、在校生がこの出会いを喜び、お互いに挨拶をかわしあうという主旨のものであると、副会長さまのご説明でわかりました。


・・・なるほど、私たち女子が別にされていたのがよくわかります。

退屈な挨拶の最中、あの黒い集団の中に放り出されたら・・・結果は火を見るより明らかですね。


「では、在校生代表は、邑上おうがみ 祥太郎しょうたろう。新入生代表は、大貫おおぬき 佐保さほ。前へ!」

「は…いぃ?」

呼ばれた在校生代表の方は、これまた大きくて私の身長では見上げるしかありません。

少しウェーブのかかった黒髪をかきあげながら、壇上に上がって来た先輩も、また眉目秀麗、意志を思わせる眉に鋭い目を笑顔で上手に隠し、唇に薄く笑を浮かべながら私の前に立ちます。

この学校の男の人は、みんなこんなに美形ばっかりなんでしょうか? 凄いです。


とはいえ、促されて、いざ向かい合ってみるとその身長差に驚くばかりです。

な、ナニを食べるとこんなに大きくなっちゃうんでしょうね、男の子って。

もう、さっきから見上げてばっかりで首が痛いですー。


内心でブツクサ文句を言いながら、在校生代表の邑上さまと向き合います。

「互いに、礼っ!」

副会長さまのよくとおる声で命令がありましたので、その場で深くお辞儀をします。


「よ、よろしくお願いいたしますっ!」


・・・が、その目の前の邑上さまが、ですね・・・近い、近いですよっ!!

私がお辞儀をしている間に、なぜか邑上さまは私に向かって跪いていたのです。


下から覗き込むようにして、ニッコリ笑ったかと思うと、そっと私の手をとり、リップ音をさせて手のひらにキスをしました。


「そうだね、どうぞ、これからもよろしく♪」

「・・・っきゃあぁぁぁっ!!」


な、な、なんで、なんでっ!挨拶ですよね、挨拶って言ったのに~っ!

なんで、手にキスしているんですかぁ~っ!!


会場は、私の叫び声をかき消すほどの男子の野太い声の雄たけびや、冷やかす声、怒号も乱れ飛び、そのまま式は終了したのだった。



☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡



「あー、もお、いいじゃんよー。」

「良いワケがあるか、この馬鹿ものっ!」

阿鼻叫喚の入学式アンド対面式が終わった後、騒ぎの元凶である邑上は生徒会の男子用控室で副会長の長利にガミガミと説教をされていた。


悪びれる様子のない邑上が、被害にあった新入生のところへ謝罪に向かった(正確には向かわせるのだが)ところで新たな火種を呼ぶだけだ。同じ生徒会に所属しているとはいえ、女子の生徒会役員は彼女ら独自でかなり強固な結束力を見せている。


その女子生徒会役員たちの可愛がっている新入生の後輩を壇上で辱めたをなれば、正式に抗議どころか、女子役員全員からつるし上げにされてもおかしくないのだ。


「辱めたって、大げさだなー。手にちょっとキスしただけダロー!」

「阿呆っ!それで、十分だ!!」

悪ふざけと言えばそれまでだが、ちょっかいを出した相手が悪すぎる。ただでさえ男子に免疫のないという噂の姫神のお気に入り新入生だ。


この学校には、姫神がおわす。

その姿を見たことがあるものは、数えるほどだが、確かに学園ここにおわすのだ。そしてその存在は、学生の間で先輩から後輩へと語り継がれる。その恐ろしさも含めて。


姫神の可愛がっている女子生徒に悪事を働いた男子生徒がどうなったか、2年生以上で知らない者はいない。女子役員に、姫神。両方に睨まれて、学園生活が無事に済むわけがない。


「無事にこの学園を卒業したければ、自重しろ! いいな!!」

「はいはい、りょーかいです」

のんきに返事をする邑上に向かって深いため息をつきながら長利副会長はお説教を切り上げた。完全に飽きている邑上相手に、これ以上何を言っても無駄だとしっているのだ。


長利はとりあえずこの場を収めて生徒会室へ戻ろうと、手早く周囲の書類などをまとめてファイルに突っ込む。後で分類整理すれば問題ない。あとは開いている窓を閉めて、施錠をするだけだ。


「邑上、中庭側の窓を閉めてくれ、施錠確認をして控室のカギを返さないと・・・」

「んー、・・・あれ、中庭に誰か・・・チッ! 長利っ!」

邑上は依頼にこたえて眠そうにしていた体を軽く伸ばすと窓際へ行き、ふと中庭に目を落とす。

途端に窓を閉めようとしていた邑上が鋭く長利を呼んだかと思うと、そのまま躊躇なく二階の窓から中庭へと体を躍らせた。

呼び声に振り向いた長利が止める間もない程の素早い行動に、驚きと緊張を走らせる。


「あんのっ馬鹿がっ! 後で もう一度説教だっ!」

窓の下を見て邑上の無事を確認すると、文句を言いながら自分も窓の桟に足をかけ、中庭へと体を躍らせたのだった。


☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡


「あ、あのっ! 私は寮の方へ行きたいのです。こちらは違うのではっ・・・!」

いくら学園が不案内な私でも、この方向に寮がないことは解る。案内を申し出してくれた人たちの間違いではないかと、聞いてみることにしたのだ。しかし・・・。


「だからちゃんと校内を案内してやるって言っているんじゃん」

「なんだよ、俺たちの案内を信じられないっていうのか?」

「さすがは女子役員どのだよなぁー。俺たちごときでは信じられないとさ!」

そういうと、先ほどまで笑顔で案内をしていた三人の先輩たちに手首をつかまれ引きずられるように中庭へとつれてこられた。その行く先には掃除用具などを置くための古びた倉庫が見える。


「・・・っや、ですっ!はなして・・・っ!!」

にわかに、人気のないこの場所に連れ込まれる事の意味を思い至り、抵抗をしてみるが男子生徒に力ではまるで敵わない。

彼女を捕えている男子たちは、その華奢な少女の抵抗を楽しむように、腕をつかむ力を誇示するように強めていく。

佐保は助けを呼ぼうと更に大きく叫ぶ直前に、ありえない光景を目にした。


背後にドンっ!と大きな音がして、人が落ちてきていたのだ。


「・・・おお、結構何とかなるもんだな。無傷じゃん、俺!」

「お、邑上せんぱい・・・?」

大きな音に驚いて、体を捻ると先ほどまで一緒に壇上にいた邑上がうずくまっている。


「大丈夫ですか・・・・っえ?・・・副会長さま?」

怪我でもしたのかとうずくまっている邑上に駆け寄ろうとしたら、更に自分の横に大きな音と共に何か大きな者が降り立った。

これまた先ほどまで一緒に壇上にいた長利副会長だった。


二度も人が降ってくるという事態に佐保の脳みそのキャパはとうに超えてしまった。


・・・この学校の男の人は、どっかから落ちてくるようにできているのかしら、などと見当違いも甚だしい方向へ思考を飛ばしていた。


立ち尽くす男子たちから佐保を引きはがして、自分の腕の中に囲い込むと同時に、長利はつぶやいた。


「馬鹿なのか、貴様は」

先ほどの愛想のいい笑顔はなりを潜め、不機嫌という表情をあからさまに見せる長利副会長の低い声に、思わず正直に答えてしまう。


「え・・・と、頭はあまりよくないですっ!」

「あ、そこ、認めてしまうんだー」

制服についた埃を払いながら立ち上がる邑上が、のんきなコメントを返してくる。


正直に答えたのに、なんでそんな残念な子を見るような目でみるのでしょうか?

長利さまも、邑上さまも、ため息をつくのは止めてくださいってば!


「貴様への説教は後だ。その前に・・・邑上」

「押ー忍っ!」

ポケットに手を突っ込んだ状態で、急な邪魔者の登場にあっけに取られていた三人の男子に向かって、邑上がふらりと近寄る。

三人の顔をざっと見た後に、歌うように宣言をする。


「ふぅん・・・サッカー部、柔道部、陸上部か、お前ら、一か月間の部活停止な」

「なっ、なんでっ!」

「横暴だぞ、生徒会っ!」

「俺たちがなにを「したか、自分らで解っているよな?」」

ふわりと邑上の体が傾いたかと思うと、素早い動きで三人の足を払い飛ばし、その場に転倒させた。


「嫌がる女の子に手を出すのは、犯罪なんだよ。

 お前ら、おんなじ目にあってみるか?」

「ひっ・・・!」

何が起きたのかわからないままに転倒した男子たちの頭のすぐ横に足を踏み出す。いつもの薄笑いはなりを潜め、恐ろしく冷たい目をして倒れる三人を見下ろしている邑上がいる。


「やめろ、邑上。お前が言うと冗談にならない」

「おれは、冗談なんて言っているつもり、ないのになー。」

ため息混じりに長利が邑上に声をかけるが、平坦な声で返事をする邑上は三人から目線を外さない。


つまり、このまま許すつもりはないという意志表示だ。


「邑上生徒会長、止めろと言っている」

「・・・っち!」

不満げに舌打ちをして、一気に興味を失ったように三人から視線を外し、長利と佐保の方へ向き直る。

その時には淡い笑顔を張り付けた邑上に戻っていた。


「まあ、邑上さまって、生徒会長さまですの・・・」

「今、言うことが、ソレなんだ」

え、だって知らなかったんですよ。呆れたという顔で佐保の頭をこつんと小突く。


「さて、子ウサギちゃんは、こっちにおいで。

 ダメだろー、群れから離れたら!ここには怖い狼さんがたくさんいるんだからねー」

「え、えっと・・・」

くるりと体を反転されられて、今度は邑上の腕の中に囲い込まれた。自然と先ほどの三人組の姿が見えなくなり、代わりに長利が動く気配がした。


しかし、しっかりと邑上の腕に囲いこまれ、覗き込むように『お説教』という名の事情聴取をされている佐保には、長利が一体何をしていたのか、気付くことはなかった。


まあ、知らない方がいい事も、ある。


「あのっ、寮へ戻りたかったのです! 私だけ先に戻りたいと姉さま方にお願いをして。でも、その、迷ってしまいまして・・・邑上さま、離してくださいーーっ」

「ふぅん、椿寮でしょ? 完全に反対側に来ているから、かなり時間かかるよ?」

「で、でも、戻らないとっ!!」

そうなのだ。もとはといえば、早く寮に戻りたくって皆と別行動をしたのに、なぜかイロイロな事に翻弄されて未だに学校にいる。


何としても、早く寮に戻らないとっ!!


「あのっ、帰り方を教えていただけませんでしょうかっ! 帰らないと・・・」

「方向音痴がナニを言うか」

ううっ、それを言われると何も言い返せません。

式典で壇上から降りてからも、何度も出口を間違え、控室を間違えたので、この件についてはまるで信用がないのです。短距離でコレですから、長距離なんて・・・。


「はぁ、自転車、乗れるか?」

「・・・いえ」

自転車、乗れるようにしたいですね。便利そうな気がします。


「みんなの安全の為にもその方がいいな。とりあえず、行くぞ。

 俺の自転車は荷台があるから、そのまま座ればいい」

「んじゃ、俺が伴走するわー」

なんでしょう、私の夢を真っ向否定された気がします。そんな私を置いてきぼりににしてテキパキと物事が進んでいく。お二人はそれぞれの自転車をもってきて、簡単に打ち合わせている。


私が状況についていけず、あわあわしている間に長利副会長さまの自転車の荷台に座らされ、邑上会長さまが軽やかに先行で自転車を走らせるのでした。


自転車が走り出すと、ぐんぐん景色が変わる。

敷地の中は緑が豊かだし、通学路の周囲も木々が生い茂る。

そして時期は春だ。朝通った桜並木を猛スピードで駆け抜けるのは、少し怖いが舞い散る桜に見入ってしまう。いつもはひらひら舞う花弁が、今はあっという間に通りすぎて見えなくなる。


「絶対に落とさないけど、怖くなったらしがみ付いておいで」

長利さまがスピードを上げた時、シャツを握る手に力が入ったのがわかったのか、からかうようにそんな事をいった。


「へ、平気ですっ!」

迷惑をかけ、更に送っていただいている恩人に、そんな疑うようなこと・・・、と思ったが、急な下り坂に差し掛かったら今まで以上にスピードが上がり小さく悲鳴を上げて、背中にしがみ付くこととなった。


・・・なんでしょう、このダメな感じはっ!


前にいる長利さまも、並走をする邑上さまも、笑っている。


結局その後、スピードが緩むことはなく、寮につくまで長利さまの背から顔を上げることはできなくなり、結果、私は自力で立つこともままならず、そのまま寮に運び込まれる体たらくとなったのだった。


ナニが、残念ってこんだけ長いのに、美味しいモノ記述がないっ!(痛恨っ!)

さらに、佐保ちゃんが残念キャラになっているっ! ヒロイン属性なのか、本人の素なのかは、不明!


次回こそは、ごはんもの出しますっ!(本筋が違うぞっ!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ