その3.主さまは・・・ジョブチェンジしていました
物凄い遅くなりましたっ!
主様、マイペースです。
ご飯の後は、熱めの緑茶。
でも、食後少し経ったらほうじ茶をお出しする。
なんでしょうね、転生しても好みって変わらないものなのかしら。
「わあ、ありがとー。佐保のお茶って、美味しいわー!」
はあ、恐れ入ります・・・と返しながらも、この主さまの後ろでピコピコ動いているのは何でしょうか。
ずっと気にはなっているのですが、ちっとも説明をしていただけないのですが。
「あのね、転生したら、姫じゃなくて、一応、姫神になっちゃったのよ、私」
「はぁ?」
「でね、神仲間もできちゃって、たまに飲みにも行くのよー
そんな時に、最近、下界じゃあ「乙女ゲーム」って流行っているんだって?って話になり、
どうせなら、俺らで作ちゃう?、乙女ゲー!・・・って事になっちゃったのよー。」
お茶請けのお漬物をポリポリとかじりながら、まるで昨日見たドラマの粗筋の話して聞かせるような主さまに、お茶を継ぎ足しながら、生返事を繰り返す。
・・・神って、そんなの簡単になれるんでしょうか。
そして、その後ろのお尻尾は、どう見ても九尾のお狐さまのもの。
主さま、いつからそんなものをお持ちになったのでしょうか。
「あ、今度会せるわね、神友達の、海ちゃんと山ちゃんが遊びに来たいって言っているし。
ご飯食べさせてあげてねー。」
…主様、わたくし、神様に食べていただくような物は作れる自信がございませんよ。
あ、主様が、すでに神かぁ…あははは
「佐保、しっかり!ここで現実逃避しちゃダメよっ!
ちゃんと話を聞いておかないと、大変なことになるのは、前世で学習済みでしょう!?」
はっ、お姉さまの言う通りです。
まあ、いいんじゃない?で過ごしたせいで、何度えらい目にあったことか。
ここは踏みとどまらないとっ!!
「やあねぇ、人を詐欺師みたいに。
可愛い佐保に、そんな変な事をするわけないじゃないー」
「…姫様、その台詞、わたくしの目を見て、言っていただけますか?」
「や、やだなぁ、白河ってば!」
「目が泳いだ時点でアウトだと思いますが?」
流石は、お姉さまです。
追求の手を一切緩めないとの姿勢、見習いたいものですっ!
とはいえ、拒否権はないのですよね、この時点で。となれば、する事は一つ。
「乙女ゲームのヒロインとは、なにをすればよろしいのでしょう?」
そう、まずは敵を知らなくては!
「そりゃー、乙女ゲームのヒロインって言ったら、逆ハーでウハウハになるのがお約束でしょう~」
逆ハー? ウハウハ?? 困ったわ、すでに言葉が通じないみたい・・・。
「姫様、ちゃんと教えてあげないなら、あすの夜からはごはん抜きです!」
「ひどっ! 一応、私、姫で、神なのにっ!!」
ニヤニヤと笑いながら、お行儀悪く漬物を口に放り込む姫様を、白河の姉さまがたしなめる。
見慣れた風景に、心が和みます。ええ、こんな場合でも。
はあ、と、緑子姉さまがため息をついて、説明をしてくれた。
「あのね、乙女ゲームっていうのは、大体が恋愛シュミレーションゲームなの。主人公が、攻略対象者トイロイロなイベントを経て、仲良くなって、やがては恋人になるというお話なのよ。」
まあ、ヤンデレとか、BLとかのものもあるが、知らなくてもいいだろうと、緑子は判断した。
これ以上、ヘンな情報を詰め込んだら、佐保がパンクしてしまうだろう。
「はぁ、なるほど・・・。では、私は、殿方と仲良くするのが使命ということですね」
とは言ったものの、殿方と仲良くする・・・解ったような、解らないような・・・。
実際のところ、ここ数年、殿方とお話する機会もなく、たまに見かけるのは、寮の管理人さんと、ストーカーだけですね。
ですので、どのような会話をすればよろしいのか、まるで解りません。
「はじめまして、攻略されてくださいっ!」というワケにもいかないでしょうし。
「まあ、気軽にやってごらん。期間は1年だ
佐保が気に入った奴がいたら、付き合えばいい。ただ、それだけだよ」
主様は、そう言って微笑んだ。
そんなわけで、私は神様主催の乙女ゲームのヒロインをやることとなりました。
私は、「恋」をすることが、できるのでしょうか?
それは、とても難しいことのように思えて、少し怖いことのようにも思えます。
命短し、恋せよ乙女!ですからね。
佐保ちゃん、頑張れっ!