その2 主さまとの再会
自分がその時、お稲荷さんがむしょーに食べたかったんです。(笑
自分的イチオシは、生姜のお稲荷さんです!
大きなダイニング テーブルの上に、出来た料理を次々に置いていく。
「お腹が空かれているようなので、ご飯ものも一緒にお出ししますね。
お稲荷さんは、きんぴらや、ヒジキを混ぜ込んだ「五目」と、わさびの茎を細かくして混ぜ込んだ「わさび」、細かくした生姜を混ぜ込んだ「生姜」を用意しました。
大根と手羽先の煮つけに、だし巻き卵。レンコンのきんぴらになります。
あとは、ほうれん草のお浸しと、ゆず白菜。
お味噌汁は、なめことお豆腐にしましたが、大丈夫ですか?」
いわゆる、家庭料理ばかりだが、本当にいいのかしら、と心配になってくる。
先ほど、主さまに再会した。
おおよそ、…年数を数えるのは止めにしよう。
「佐保ーーーーーっ! 会いたかったっっ!!」
私のお仕えしていたのは、当時の地方領主の姫さまだった。
あの時代には、珍しく女領主でいらしたて、能力にも長けた、稀有な存在。
諸々の理由もあったのだけれど、それは、まあ、置いておいて…。
「ひ、姫様っ、苦しいですっ! そんなに抱きしめては、お胸が苦しいですってー!」
相変わらずのナイスバディで、私をぎゅうぎゅうと抱きしめてくれました。しかしその豊かな胸で窒息させそうになっていますってっ!
お会いした途端にお胸で窒息死したら、笑えませんよ。
「あら、ごめん。 なぁに、佐保は少しは育った?
食糧事情は格段にいいんだから、頑張りなさいね。
あ、そうそう、お腹すいたらごはん作って。詳しい話は食べながらしましょ!」
「はい、承知いたしました」
…姫様、マイペースなのは、変わりませんね。変わったのは…。
まあ、いいです。ごはんにしましょう。
そんなこんなで、ごはんです。
皆でいただくごはんは、とても幸せな気分にしてくれます。
「ああ、佐保のごはーん。美味しい〜! 幸せすぎるー!!」
姫様は、お箸を握りしめてプルプルしています。
こんなに喜んでいただけてうれしいです。小さい時から家事をやっていてよかったと思える瞬間ですね。
白河のお姉さま達も、手伝ってくださったんですよ?
結局、今日、椿館にいる10人分を作ったので、一人では無理だったんです。
圧力鍋で作ったので、箸でほろりとほぐれる手羽先とこっくり仕上がった大根煮。アツアツのだしまきは、大根おろしを添えてみた。うん、まあまあかしら。
「ねぇ、佐保、ごはんを作るのは、嫌い?」
「いいえ、好きですが」
家事の中で、料理が一番好きかも。次点は、お洗濯です。
「じゃあ、寮のご飯係りしない?
朝は準備だけ、昼はなし、夜は、下拵えは通いの人がしてくれるから。
ご飯係りをしてくれたら、ここの寮費は免除。
よろしくね!」
「それは、構いませんが…」
なんだか、お手伝いレベルで、寮費免除って…いいんですか?
「今の椿寮は、余裕があるから、個室を上げる余裕があるの。
寂しかったら、誰かと二人部屋でもいいわよ。
小夜と、希世の双子は、二人部屋にしているしね。」
「いえ、一人で大丈夫です。」
そうかー、あの一緒に侍女をしていた、さよちゃんと、きよちゃんも転生しているのね!
嬉しい。後で会えるかしら。会うのが楽しみー。
「んじゃ、白河の向かいの個室を使いなさい。白河、お願いね」
「承りました、姫様」
白河のお姉さまは、上品に礼をして承諾の意を伝える。
いつ見ても流れるような所作が美しい。いつか自分がああなれる日がくるとは思えない・・・。
「学校は、月曜日から通えるわよ。って言っても高校は、ウチの高等部に決まったんだし、
のんびり学校の雰囲気になれて頂戴。
不得意科目があるなら、今のうちに潰しておきなさいな。頼りになる先輩もいることだしね」
だし巻き卵を、優雅に食べながら姫様は次々と質問と決定を繰り返す。
なんでしょう、白河のお姉さまも、緑子姉さまも、さりげなく目をそらしていらっしゃるような。
嫌な予感がいたしますわ。
「あ、肝心な事を忘れるところだった。
今ね、友達とシュミレーションゲームを作っているのよ。
そうね、最近できた友達なんで、佐保は初対面だと思うわ。
今度、会わせてあげるわ。向こうも佐保に会いたがっていたし!」
「はぁ、光栄ですわ・・・」
にっこり笑って、ゆず白菜に手を伸ばす。
うーん、お漬物は、もう少し種類をお出しした方がいいかも。
「でね、くじ引きの結果、佐保が、今回の乙女ゲームのヒロインになったから。
これは、決定事項ね。
あ、ヒロインの報酬として、学費免除、奨学金も給付よ。返済の義務もないからね。」
お稲荷さん、おいしーっ!って言うのと同じ口調で、姫様が言いました。
何の話でしょうか。
えーと、ヒロイン? 乙女ゲーム??
主さま、貴女様は今世で、一体、何をやらかしているんですかっ!!
何よりも、「乙女ゲーム」とは、何でございましょう。
私は、説明を求めますっ!!
さて、今世において、主さまは何者なんでしょうか?という話が次回です。