第4話「終わりと始まり」
お読みいただきありがとうございました!
今日も11時オーバーの投稿ですね…。(恐らく)
それではどうぞお読みください!
―――エース―――
『ドォォォォォォォォン!!!!』
音とほのかな風がエースを包み込んでいった。その風は今まで受けた風の中で最も優しく、暖かかった。
その音でエースは暗く深い眠りから目を覚ます。
(…何だあの光は?)
エースが瞳を向けた先からは暖かい光が放たれていた。その光よりも手前にこちらへ走ってくる者が見えた。
逆光でエースからは見えなかったが、少しだけ体を起こして相手をよく見る。両腕にかなりの痛みが走る。腕は未だに痙攣していて、血が少しずつ流れ出ていた。
(…誰………?)
エースはその場に仰向けになって力なく倒れる。空は今日も青かった。
その空が何者かによって遮られた。駆け寄った者はしきりに自分の名を呼んでいた。
―――P-X跡地―――
水が心配そうに神風やエディクの行った方角に目をやる。それを見ていた炎が水を元気付けようとする。
「大丈夫だよ、水。…いつものように帰ってくるよ。」
炎の言葉は水に向けられた愛情が込もっていた。水が返事をする。
「分かってるよ、炎。…でも…何かあったらって考えちゃうと…。」
水の目に涙が溜まってゆく。水はついにこらえ切れずに泣き出してしまった。炎は水の肩を抱き寄せ、自身も泣きそうな声で慰める。
武蔵と蜘蛛は自分達の主を待つ2人を見てどうにもできない自分の不甲斐無さに腹を立てていた。
肝心な時に戦いに参加できない悔しさ。自分が強ければ…と何度思ったことだろうか?
2人はどうにもならない気持ちで仲間と主が進んで行った方角を見る。その時遠くからこちらへ向かって走って来る2つの人影を見つけた。
「「…あれは!!」」
2人は同時にそう言い、水と炎を呼ぶ。水と炎は出入り口から靴も履かずに飛び出して行った。
―――ダーク―――
3名がこの周辺から離れ、自分の大切な者の場所へと向かった。
ここに残った者は6人中3人。悪魔、ジョーカー、ライトだった。
ジョーカーとライトの体はさっきまでは死にかけの重傷だったが、ダークの力で何とか立って歩けるほどに回復し、悪魔の力で全快した。
2人を元の状態に戻した後、ダークは最後の能力を使った。
それはこの世界全ての超能力者の能力を消すものだった。
その能力は既にこの世界を覆い尽くし、自身の体を支えていた能力さえも消し去った。
「…抵抗もできずに死ぬ奴の前で、お前らは何やってんだよ?」
ダークは3人にそう尋ねる。3人の内1人悪魔がダークの問いに答えた。
「…最後にお前は世界と俺の大切な奴らの為に死を選んだ。…こうも言いたかねぇが、その死を少しは…惜しんでいるんだと…思う。」
悪魔の言葉には優しさが込もっていた。ダークが呟くように言う。
「何人も殺してしまったがな…。悪人の死を惜しんでどうするんだよ…。」
ダークはそう言って自嘲的に嗤う。だが、その後すぐに真剣な表情に戻って口を開く。
「シリウスとクラルテ……お前達2人の『本当の名』だ。」
ダークはそれだけ言うと一気に生気が失われていくように顔色が青くなっていく。
「待て!最後に何故それを…!?」
悪魔…いや、シリウスがダークに尋ねる。ダークは瞳を開くことなく答えた。
「『名』とは、人が親から授かったものの中で、体に次ぐ宝物だ。それを返さなければならないと思ってな。」
ダークの口が閉じられ、ダークの呼吸が停止した。
ライトは静かにダークを持ち上げ、彼の妻が眠る墓へと歩いて向かった。
ライトの後をクラルテとシリウスが追いかけて行った。
―――10年後―――
世界は10年前のライトが覚醒する前まで戻された。完全とは言えなかったが、世界はしっかりと機能し、裏や闇で見られる悪事が無くなっていることはすばらしいことだった。
P-Xのメンバー達がどこで何をしているか?
それは誰にも分からなかった。世界の静かな場所で余生を過ごしたり、世界を変えるために日々世界のトップで権力と戦っているかもしれない。ただ言える事はひとつ。
どんなに世界が変わっても彼らは永遠に仲間だという事だ。
『P-X』完 作:真叉風巳
お読みいただきありがとうございました!
完結です!!
やっとここまで辿り着くことができました!
感動で目が…(涙)
皆様には本当に感謝してもしきれないほどたくさんの励ましや応援をいただきました!今回の「P-X」書かせていただいたことは私にとって初めての事ばかりでしたが、ここまでやり通す事ができたのも皆様のおかげだと思います!
明日、活動報告で書いた感想などの書こうと思っています。
それではこれまで長い間読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!
真叉風巳