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第97回 激突

 舞い上がる土煙が、風で薄れていく。

 亀裂が入り陥没した地面があらわになり、大剣が地面に突き刺さっているのが見えた。ひび割れた土が崩れ、大剣が地面から抜かれる。傷一つ無い刃が朝日を浴び美しく克不気味に輝きを放った。

 特殊な砲弾を受け体から僅かに煙を上げるリオルド。衣服が破け傷一つ無い強靭な肉体が露となる。両肩が小刻みに震え、腹の底から吐き出した様な声で笑う。


「クククククッ……。この俺に傷を付けた代償はテメェら全員の命で償ってもらう!」


 大剣が地面を裂き、破片が宙を舞う。

 おぞましい笑い声が響く中、城門から姿を見せたアルドフは、その視線をリオルドへと向けた。魔獣人と対峙するのは初めてだが、その圧倒的な身体能力の高さをマジマジと感じていた。


「あれが、魔獣人か……」


 ボソリと呟くと、やや後ろに立つレヴィが、淡い赤髪を揺らしながら静かな口調で答える。


「その様ですね。私達はハズレを引かされた、と言う事になりますね」

「ハッ。バカを言うな。ハズレじゃなくて、アタリに決まっているだろ」

「……お言葉ですが、ショックで頭がおかしくなりましたか? それとも、元からおかしいんですか?」


 上官に対し毒を吐き、冷やかな視線をその横顔に向ける。

 無精ヒゲを左手で摩り、右手で腰の柄を握り締めた。鉄の擦れ合う嫌な音が聞こえ、煌びやかな刃があらわとなる。年季の入ったその剣を静かに構えたアルドフの表情から、優しさが消えた。目付きは鋭く、表情は引き締まっている。

 呼吸を整える様に静かに息を吐き、ゆっくりと右足を一歩前に出す。その動きにリオルドの瞳が向けられた。殺意の篭ったその視線に、アルドフの後方に居たレヴィは思わず身構えてしまう。それは本能的に取った行動で、一瞬自分の胸に刃を突き立てられた錯覚を覚えた。


「――クッ! ハァ…ハァ……」


 呼吸が荒れ、視界が眩む。よろめくレヴィを背に、静かに呼吸を整えるアルドフは、落ち着いた口調で、


「レヴィ。お前は下がってろ。それから、他の兵士にも伝えろ。奴には近付くな、と」

「し、しかし――」

「安心しろ。アイツとは俺がやる」

「そ、そう言う問題では――」


 レヴィが言い終わる前に、アルドフが地を蹴りリオルドへと突っ込んで行く。そんなアルドフの行動にニヤリと笑みを浮かべるリオルドは、右手に持った大剣を力強く振り抜く。風を切る音に遅れ、凄まじい太刀風が土煙を舞い上げる。

 太刀風を浴び、表情を顰めたアルドフだが、怯む事無く真っ直ぐにリオルドに向う。

 土煙が薄れ両者の視線が重なり、澄んだ金属音と衝撃を周囲に広げた。ぶつかり合う刃が擦れ合い、両者の足元に僅かに土煙が漂う。


「青髪に大剣。その血に飢えた眼差し。お前がリオルド。国王の命を奪った魔獣人か!」


 刃を弾き距離を取る。大剣の重量に僅かに仰け反るリオルドだが、すぐさま体を捻り体勢を戻す。

 静かに息を吐くアルドフ。怒りを沈め、自分自身を落ち着かせる。

 そんなアルドフを見据え、不適に笑うリオルドは、静かに口を開く。


「赤き龍。貴様の事は知っている。この国の守護者とまで謳われる貴様の力、見せてもらう」

「随分と古い名を知っているな」

「俺は強い奴の名は覚える様にしている。貴様の起こした奇跡とやらを見せてもらう」

「奇跡? 何の事だか分からんね」


 右足を踏み込み、刃を突き出す。鮮やか克鋭い突きを軽く首を右に傾きかわすと、お返しとばかりに刃を突き出す。瞬間的に右斜め後ろに体を捻る。大剣の平がアルドフの胸を沿うようにして通過する。

 体勢を崩すアルドフを見据え、不適な笑みを浮かべるリオルドは、刃を素早く振り上げた。

 全身に走る危険信号と共に、アルドフは唇を微かに動かす。小声でボソボソと言葉を続けていると、大剣を振り上げたリオルドが何やら異変を感じその場を飛び退いた。その瞬間、突風が吹き荒れ、リオルドの目の前を何かが通過し、直後にリオルドの体を衝撃が襲う。


「ぐうっ」


 地面を転げるリオルドは、大剣を地面に突き刺し勢いを止めた。土煙が道を作るようにリオルドとアルドフの間に真っ直ぐに伸びる。口角から血が漏れ、リオルドの目付きが変わった。


「やってくれるじゃねぇか。流石、赤き龍」

「だから、その名は当に捨てたと言っただろ」


 真っ赤な鱗を纏った右腕が、白煙を上げ元の腕に戻る。握った剣を構え直し、静かに口から息を吐く。吐き出された息が僅かに白く染まる。熱気を帯びているのか、吐き出された息により、僅かにアルドフの顔が揺らいで見えた。



 時刻は深夜。アルバー王国旧都市ディバスターから程よく離れた森に不時着した赤い飛行艇。夜の闇にも映えるその外壁。窓からもれる光り。そして、慌ただしく響く無数の足音が、静かな夜をざわめかす。

 何も知らず、飛行艇の側まで戻ってきたミーファとルナは、その異様な騒がしさに胸騒ぎを覚える。急ぎ足で機内に戻り、その騒ぎのする方へと足を進めた。

 床に倒れるブラスト。激昂するワノール。それを抑え様とカシオとフレイストが二人の間に入る。


「や、止めろよ。ワノール。ブラストだって何か考えがあっての事だと思うしさ、それにここで俺等がもめてもしょうがないじゃないか」


 この状況下でも相変わらず口数の減らないカシオ。産まれもってのお喋り体質なのか、場を和ませようとしているのか、どちらか分からないが、必死に舌をまわす。

 口の端から血を流すブラストは、静かに立ち上がりミーファとルナの方に目を向け、渋くいつもより低いトーンの声で、


「悪いがキミ達は部屋に戻っていてくれ」

「えっ、で、でも――」

「ミーファさん。行きましょう」


 静かにそう述べたルナはブラストに軽く会釈し部屋を出た。その後に続く様に、ミーファも渋々と部屋を出る。部屋の扉を閉め、暫くその場に立ち尽くす。前を行くルナは、そのミーファの行動に気付き振り返った。


「ミーファさん。何をしてるんですか?」

「ルナは気にならないの? 何の話をするつもりなのか」

「別に気にならないわけではありません。ただ、私達がその話を聞いた所で、何も出来ないのは事実。信じましょう。皆さんを」


 落ち着いた口調のルナに、じと目を向けるミーファは不満そうに、


「何だか、肝が据わっちゃったね。さっきまで自分は必要無いとか言って泣いてたのに」

「ミーファさん。人は常に変わっていくんですよ。過去に囚われてしまっては――」

「あーっ。わかった。分かったから。さぁ、部屋に戻りましょう」


 ルナの話を無視してミーファはルナを追い抜いた。


「ちょ、まだ話は終わってません! ミーファさん!」


 自分の話を無視したミーファに対し、そう叫んだルナは早足で後を追いかけた。

 大分話がゴタゴタとしてまいりました。

 もうすぐ100回目を迎えると思うと、時々急激に落ち込みます。

 前作から見て、もう200回目を迎えると、言う事になるわけですから……。長い……ですよね……。

 力量も無いのに、こんなに長々と……本当、読者の方には感謝しています。

 もっと綺麗な文章で、もっと上手く纏められれば良いんですけど……。

 まぁ、そこは努力していく次第であります。

 無事に完結までいける様、全力で頑張りたいと思います。

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