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第9回 儚き命の償い

 大きな爆音に、寝静まっていた村人達も目を覚まし、家々に明かりが灯る。どの家の窓からもランプの光が外に漏れていた。その窓の向うには村人達のシルエットが浮び、窓から外を窺っているのが見て取れる。微かに流れる冷たい風が舞い上がる土煙を吹き飛ばし、魔獣達の姿をはっきりと映し出した。

 四足歩行の額に二本角を生やした魔獣と二足歩行の頑丈そうな尻尾をしならせた魔獣。二体はまるで品を定めるかの様に、村の中を見回し嬉しそうに微笑む。そんな中、二足歩行の魔獣は真っ直ぐ伸びる広場の奥に目をやる。向かいには、包帯を体に巻いたカインの姿。それを見るやいなや、「ビンゴ」と、小さな声で呟き不適に笑みを浮かべた。

 薄暗い中、魔獣が不適な笑みを浮かべたのが見えたのか、ノーリンはカインを隠す様に体を微かに動かし、両手首を軽くまわす。そして、右足首、左足首と準備運動をする様な行動を取り、最後に静かに息を吐く。カインはノーリンの背中を見据えながら青空天の柄に手を掛ける。その時、微かに金属音が聞えた。それは、ごくごく僅かな小さな音だったが、ノーリンにははっきりと聞えた。柄を握ったカインでさえ聞えない程の小さな音を。


「カインとか、言ったな。お前は戦うんじゃねぇ。どうせ、その怪我じゃまともにゃ戦えないだろ」


 後ろを振り返る訳でもなく、カインにしか聞えない程度の声でそう言うノーリンに、カインは真剣な眼差しで答える。


「大丈夫です。この位の怪我で幾度と無く戦ってきましたから」

「こいつ等は、お前の思っているほど弱者じゃねぇ」

「分かってます。僕はあの角の生えた奴にやられたんで!」


 力強く自信満々にそう答えるカインだが、急に間が空く。首を軽く傾げるカインに、背を向けたままのノーリンは、唖然とし肩をがっくしと落とした。「どうかしましたか?」と不安そうな声を上げるカインに、左手で頭を掻くノーリンは「なんでもねぇ」と呟き渋々と言った感じで、カインが戦うのを許す。

 四足歩行のザノメは、興奮しているのか鼻息を荒げ「ガフー……ガフー……」と、変な声を出している。目の前には飯(人)が沢山いるためだろう。もちろん、そのことに気付いている二足歩行の魔獣は、ゆっくりとザノメの頭に左手をのせ小さな声で言い聞かす。


「あの金髪は食べるな。奴はロイバーン様が調べるらしいからな」

「ガウウウッ!」

「そう怒るなって。奴以外は全員食っていいからよ」

「ガウッ! ガウッ!」


 歯と歯をかみ合わせながらそんな声を発する魔獣は、右後足で地面を何度も掻きながら鼻から息を吐き出す。視線はノーリンの方に向けられ、今にもノーリンに突進して行きそうな雰囲気を醸し出す。

 軽く拳を作る様にした手を構え、ゆっくりと開いているのか分からない目でザノメを睨む。そして、小さな声でカインに言葉をかける。


「ワシがあの四足歩行の奴はやる。お前の体じゃ、あいつの突進を受け切れん」

「はい。あれは、ノーリンさんに任せます。僕、あれは苦手です」

「まぁ、相性ちゅうもんがあるからな」


 微かに笑みを浮かべるノーリンは、激しい足音に身構える。ザノメがノーリンに向って走り出したのだ。地を蹴る度に地面の砕け大きな音を起てる。右足を静かに退いたノーリンは息を吸い込み、目を見開く。開眼されたノーリンの目は鋭く、奥に見える瞳が獲物を狩る獣の様な目に見えた。直後、重々しく何かがぶつかり合う音が村中に響き、その衝撃が家々の窓をカタカタと揺らす。


「ワシにゃ、この程度の突進は効かんぞ」

「ガウウウウウッ!」


 突き出された右手の平でザノメの角と角の間を押さえ、左手でザノメの右の角を握る。角の切っ先はノーリンの腹に刺さる直前で止められている。ピクリとも動く事の出来ないザノメは、後ろ足を奮わせ力一杯地を蹴るが、地面が砕けるだけでノーリンの体を押すことさえ出来ない。


「す、凄い……」


 ノーリンの力に驚きを隠す事の出来ないカインは、暫し圧倒されていた。だが、すぐに青空天を抜き振り向き様に蒼い刃が閃く。その瞬間、タンッ、タンッと、地面を蹴る音が聞こえ、魔獣が尻尾をしならせながらカインの事を見据える。青空天を振り抜いたカインは、その瞬間に体を襲った痛みに表情が歪む。もちろん、魔獣はそれを見逃さない。


「体が、痛むみたいだね」

「ウウッ……。多少の痛みは耐えられます」


 強がりだ。カインの体に走った痛みは、耐えられるものじゃない。それでも、カインは痛みを堪え魔獣に向って青空天を振るう。その度に、背中と胸に激痛が走り、それがカインの体を蝕む。魔獣はそんなカインが繰り出す刃を軽々とかわしている。


「ほらほら、全然当たって無いぞ。ちゃんと俺を見て剣を振るえ」

「クッ!」


 奥歯を噛み締め力一杯青空天を振り抜く。刃は初めて魔獣の体に触れた。が、その瞬間、刃が金属音を奏で、その刃に走る振動が柄を握るカインの手を弾く。青空天は夜空に舞い回転し弧を描きながら、地面に突き刺さる。疼く胸と背中、右手は先程の振動で痺れ拳も握れない。


「言い忘れてたけど、俺の体は硬質物で出来ている。そんな鈍らな剣では傷一つつかん」

「ハァ…ハァ……。クッ……」


 そのカインと魔獣のやり取りに聞き耳を立てるノーリンは、未だジッと動かずザノメの体を押さえつけている。ザノメは幾度と無く脱出を試みるが、体はピクリとも動かずこのままの状態が続いていたのだ。元の細目に変わっているノーリンは、右目を軽く見開くとボソッと呟く。


「ここらが、潮時か」


 息をゆっくりと吸い込むノーリンは、目を見開き腕に力を入れる。すると、筋肉がギシギシと音を奏でる。引き締る腕には血管が浮き出て、今にも切れそうな勢いだ。角を掴む左手は徐々に上に持ち上がっていき、ゆっくり静かにザノメの体が宙に上がる。足が地に着かず、宙を蹴り続けるザノメは、「ガウッ! ガウッ!」と吠え、ノーリンに噛み付こうとする。だが、ノーリンは目を見開いたまま口を開く。


「残念だ。もうちょっと、力比べの出来る奴だと思っていたが……。実に残念だ」


 静かにノーリンの足が地から離れる。巨体のノーリンの体が空へと上昇して行き、更に森の木々の頭を越える。次第に村は見えなくなり、辺りには森の木々の頭だけが広がった。周りは星空が広がり、下には森が広がる。空に掛かった薄い紺色の雲が月を半分隠す。月の光で微かに光る雲を見据えるノーリンは静かに口を開く。


「今宵の月は綺麗だが、雲が無ければなお美しかろうに……」


 残念そうなその声に、ザノメが答える訳も無くノーリンが言葉を続ける。


「この様な日には、殺生は好まぬが、村に出向いたウヌ達が悪い」


 静かにそう言うノーリンは、右手を魔獣の額から放し、角を握った左手の力を少しずつ抜く。角はノーリンの左手から解き放たれ、体が重力に引っ張られザノメの体は落下する。小さくなっていくザノメを見下ろすノーリンは更に言葉を続ける。


「命は短し儚いもの。ウヌ達はどれ程の魂を砕いた。訊いた所で分かるまい。分からぬ程の多くの魂を砕いたウヌ等の罪は重いものなり。その罪、地の底で償ってもらう!」


 急に小さくなり行くザノメに向って頭から突っ込んでいく。風を切る音が耳の奥まで響き、着ている衣服の裾が激しくはためく。その落下速度は加速しザノメの体を捕捉する。右手でザノメの首を掴み上げ、地面に勢いよく突っ込んだ。

 第八回 キャラクター紹介! もうバリエーション無いぞ。このまま、キャラクター紹介行っちゃいます!


 名 前 : ウィンス=カージェス

 種 族 : 風牙族

 年 齢 : 14歳

 身 長 : 150cm

 体 重 : 40kg

 性 格 : いつも元気な熱血系、何に対しても全力を尽くす

好きなモノ: 風・木登り・鳥・自分の住む村・姉

嫌いなモノ: 村を襲う奴・犬


作者コメント:

 風牙族の村の族長の孫。強い風を操り、代々伝わる刀(牙狼丸:まだ、小説無いでは名前を明かしてません)を扱える唯一の者。まだ、不安定ではあるが一度爆発すれば、どんな風でも呼ぶことが出来る。

 身長の低さをコンプレックスに思っており、日々身長を伸ばそうと努力している。


 以上、第八回 キャラクター紹介でした。次は……まだ、そんなに出てないが、『フレイスト』の紹介をしたいと思います。

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