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第8回 用心棒 ノーリン

 日が暮れた。

 森の中は完全に光を遮られ、足場が見えないほどの闇に包まれている。その闇の中に何か硬い物がかち合う音が響き、微かに光が解き放たれた。だが、それは、ほんの一瞬で消える。何度も光っては消え、光っては消えと繰り返していた。暫く続いた音が止むと、先程まで光っては消えを繰り返していた光が、薄らと森を照らす。

 日が落ちたせいか、昼間よりも更に静けさ漂う森の中。聞えてくるのは、微かに流れる風の音と、虫達の小さな鳴き声。時折、何かが飛び交う音も聞えるが、何が飛んでいるのかは分からない。

 闇を照らす焚き火に、枯れ枝を投げ入れるウィンスは、ワノールの治療をするルナの方を見る。今、ワノールの体がどういう状態なのか、ウィンスにはわからないが、治療に時間が掛かっている事から、酷い状態なのだと感じた。一方、フォンの方は目は覚まさないものの、頭を軽く打っただけなので心配する事は無いだろうが、ウィンスは少し気になる事があった。


「ルナ。フォンは大丈夫かな?」

「どうしたんですか? フォンさんなら、頭を軽く打って気を失ってるだけですよ」

「いや、そう言う事じゃなくてさ……。何て言うのかな……。う〜ん」

「もしかして、変化……の事ですか?」


 微かにだが、ルナの表情が変わる。何処か、悲しそうな顔に。焚き火を見つめるウィンスは、そんな事には気付かない。そんなルナの言葉に、ウィンスは何か思いつめる様な表情をしながら答える。


「そうなんだよ。最近のフォンって、初めて会った時に比べて、何処か少し変わった気がするんだ。何処が変わったのかって、訊かれると分からないけど、何と無くそんな気がするんだ」


 深刻そうな表情のウィンスは、小さなため息を吐く。そんなウィンスの表情を横目で窺うルナは、誰にも聞えないほど小さなため息を吐いた。それは、ルナがウィンスと同じ事を心配していたからだ。そして、近い内に今のフォンがフォンでなくなってしまう気がしていた。



 森の奥の小さな村。丸太で作った柵が、村を囲っている。入り口は一つしかなく。夜はその入り口も丸太で作られた扉でふさがれている。このため、野生の魔獣達はこの村に入る事は出来ず、この村は魔獣に襲われる心配は無い。もし、この柵を突破されても、それを防ぐ為の策も既にこの村には備え付けられている。その為、村人達は安心して夜寝る事が出来た。

 全ての家が明かりを消し寝静まる頃、一軒の家の明かりが灯る。家と言うよりも、物置小屋に近い。その家の中には、部屋の半分を占める大きなベッドがあり、他にテーブルやイスなどの小物が並んでいた。天井に吊るされたランプには火が灯っており、それが部屋を隅々まで照らしている。

 部屋の半分を占めるその大きなベッドには、包帯を巻かれた小柄なカインが寝かされており、ベッドが大きいせいか、カインの体が更に小さく感じる。そんなベッドの脇には大きなイスがあり、そこに体格の大きな男が座っていた。

 少しゴツゴツとした顔付きの男だが、その右頬には横並びで三つの星の刺青が彫られていた。腕組みをするその腕周りは太く筋肉質で、太股も脹脛も強靭な筋肉でガチガチに固められている。軽く欠伸をする男だが、目が開いているのか閉じているのか分からないほど細いため、眠っているように見える。そんな大柄の男は立ち上がると、頭が天井に届いてしまうんではないかというほどだった。


「あいつら、何で怪我人をワシのベッドに寝かしてやがる……」


 ガラガラ声で男はそう言うと、右手で短髪の白い髪を軽く掻き毟った。ふと、視線を感じ目線を落すと、ベッドで寝ていたはずのカインが目を覚ましていた。まだ、傷が痛むだろうが、カインは体を起き上がらせ申し訳なさそうに頭を下げた。


「すいません……。勝手にベッド使って……。今、退きます。どうぞ、お休みになってください」

「あぁ! 怪我人が何気ぃつかってんだ!」

「えっ、いや……」

「それに、ワシは夜は眠らねぇ」


 男は自信満々にそう言うと、軽く笑顔を見せた。唖然とするカインは、「はぁ……」と、小さく言うと軽く頷いた。男の好意に甘え、ベッドにもう一度横になったカインに、男は握り飯を差し出す。男の手に乗った握り飯は一見普通の大きさに見えたが、それは男の手がゴツゴツと大きな手で持っているからで、カインからしてみれば結構な大きさだ。その握り飯を両手で受け取ったカインは、少し苦笑いを浮かべながらそれを口に運ぶ。その瞬間、男の目が輝いた。


「食ったな! 今、一口でも食ったな!」

「エェ……。食べましたけど、何か?」

「150ギガ払ってもらおうか」

「――ッ! えーぇ! 待ってくださいよ! 今、差し出したのは――」

「誰も、ただでやるとは言って無いし、お前に食えといった覚えも無い」


 詐欺まがいの男の行動に、焦るカインは早口で抗議するが、何を言っているのか聞き取れない。あまりにも、カインが慌てているので、男は大きな声で笑いながら言う。


「冗談だ! 冗談! 怪我人には優しくしないとな。それに、見た所お金は持ってなさそうだからな」

「な、何ですか! ちょっと失礼ですよ! えっと……」

「あぁ。ワシはノーリン=バジーヌだ。一応、用心棒をしている。それから、こんな顔してるが、実はまだ二十代前半だぞ」

「ノーリンさんですか。僕はカイン=シュライフです。仲間と旅をしてるんです」


 ニコニコと笑みを浮かべながらそう答えたカインに、ノーリンは少し怪しむ目でカインを見る。だが、その目付きは相変わらず開いているのかも分からない程の為、カインはそのことには気付いていない。暫く沈黙が続くが、カインは笑顔を絶やさず、楽しそうに微笑んでいる。そんなカインを見ていると、いい仲間と一緒に旅をしていたのだと感じた。


「それで、その仲間とやらは何処へ言ったんだ? 置き去りか?」

「実は、魔獣に襲われまして……。僕一人はぐれちゃったんです」

「ふ〜ん。今頃探しているぞ。きっと」

「いや。多分、それは無いと思いますよ」


 ニコヤカにそう言い放つカインに、少し不満げな顔を向ける。落ち着いた面持ちのカインは、不満そうな表情のノーリンに軽く腕を振りながら「違いますよ」と言うと、ノーリンは「ワシは何も言っとらんぞ」と言って腕を組む。そんなノーリンに、カインはゆっくりと答える。


「僕達は、今やらなきゃいけない事がありまして。先を急がないと行けないんですよ。だから、僕を探している暇は無いかと」

「何だ。意外と冷たい仲間なんだな」

「ち、違うんです! 皆、とっても優しい人達なんです。種族は皆バラバラだけど、とってもいい仲間なんですよ」


 必死に説明するカインに、ノーリンはため息を吐きながら言う。


「わかった、わかった。そんなに騒ぐな。傷が疼くぞ」

「だって、ノーリンさんが……」

「それで、やらなきゃいけない事って何だ?」

「さっき、種族がバラバラって話しをしたじゃないですか」

「ああ。してたな」


 ノーリンが軽く相づちを打つ。


「それで、仲間が一人ある事件で行方が分からなくなりまして、僕等はその人を探してるんです」

「行方の分からなくなった奴を探してるのか? そんなに大切な奴なのかそいつって。まぁ、生死も分からないのにな」

「何言ってるんですか! 生きてるに決まってるじゃないですか!」

「まぁ、落ち着け。傷が疼くぞ。それで、何でそいつを探すんだ? 探す必要があるのか?」


 少し笑みを浮かべながらそう言ったノーリンだったが、カインがそんなノーリンに睨みを効かせていた。引き攣った笑顔を見せるノーリンは、「そんなに怒るなよ」と、軽く苦笑いを浮かべながら言う。


「次、言ったら許しませんよ」

「わーってるって。そんなに怒るなって」

「話を戻しますが、その行方不明の仲間は、時見族なんです」

「時見族? カイン。お前、ワシを馬鹿にしてるのか? 時見族は五百年前の大戦で全滅したって。今更、いるわけ無いだろ?」


 馬鹿にする様に大笑いするノーリンに、カインはムスッとした表情を見せた。その時、爆音が外から響く。それは、村を囲う丸太の柵が何者かによって破壊された音だった。すぐさま外に出るノーリンに続くように、痛みを堪えながらカインが外に出る。


「ひふ〜っ。流石、ザノメ。お前のパワーの前じゃ、こんな柵どうってことないぜ」

「ガウウウウウッ!」


 土煙舞い上がるその奥から、魔獣二体の声が響いた。

 第七回キャラクター紹介! 本日で、七回目と言う事ですが、一体何人キャラクターでとるんじゃ! と、まぁそんな事を感じながらも始めたいと思います。


 名 前 : ブラスト=イルハン

 種 族 : 天賦族

 年 齢 : 29歳(小説内で、27と書いてありましたが、29の間違いです。すいませn)

 身 長 : 189cm

 体 重 : 74kg

 性 格 : 穏やかで何処かしら威厳がある

好きなモノ: 剣術の稽古・自分の国の人々と話す事・魚類

嫌いなモノ: 権力を振り回す奴・人々を苦しめる奴


作者コメント:

 東の大陸をおさめるフォースト王国の若き王様。天賦族と言う事もあり、何かを作るのが趣味で、色々な発明をしている。その発明のおかげか、フォースト王国は四大陸の内最も優れた文化を持ち、一番豊だとか。

 城の兵士達曰く、よく城を抜け出すため、仕事が溜りに溜っているとの事。でも、やる時はやるし頼りになる王様。

 剣術も凄い腕前でティルに一時期剣術を教えた事も。非常に国民から愛される王様だ。


 本日は以上! 次回は……『ウィンス』です! と、言うかブラストの事、皆覚えてたかな?

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