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第7回 亀裂! フォン対ワノール

 鬱蒼と生い茂った木々の間に一本の長い山道が続く。道は悪路で凹凸が激しく少しぬかるんでいる。日の光は何とか入ってくるものの、それも太陽が真上に向いている時だけの話で、夕暮れ時になれば、もう暗くて足場など見えないほどだ。

 そんな閑寂な森に、複数の足音が響く。カサカサと微かに草を揺らしながら歩み進む。

 木々がそんな足音に気付いたのか、微かに葉を揺らしザワメキ立つ。森の中に暮す動物達もカサカサと茂みを駆け、山道を歩く者達の監視をする様だ。そして、それらの動物に紛れ、複数の魔獣達が息を潜めていた。



「ぐう〜っ……。何で、こんなに歩き難いんだよ……」


 幼いフォンの声が、不満そうにそう言う。相変わらず、最後尾を歩くフォンは、この悪路が気に食わず、先程からずっと文句ばかりをぼやいている。そんなフォンの文句を聞くのが、フォンの前を歩くルナだった。長く伸びた金髪の髪は腰まで届き、それを靡かせながらルナは落ち着いた様な声で答える。


「――フォンさん。先程から、文句ばかり言ってますね」

「だってさ〜」

「ルナ。奴に付き合うと疲れるだけだ」

「何だと! ワノール! もっかい言ってみろ!」

「五月蝿い! 黙れ! 暑苦しい!」


 フォンに力強く克素早くそう言い放った。流石のフォンもこの言葉に足を止め、俯いたまま拳を震わせた。それに気付いたルナは足を止め振り返り、フォンの事を見つめる。俯いているため表情が見えないが、あの拳の震え方はきっと怒っているに違いないと、思うルナが優しく声を掛け様としたその時、フォンが顔をあげた。そして、大きな声で笑い出した。


「アハハハハッ!」

「どうかしましたか?」

「これが、笑わずに居られるか! このまま怒れば、奴の思う壺だ!」

「はぁ?」


 少し疑問に思いつつも微かに頷くルナは、軽く首を傾げた。「いくぞ!」と、フォンに言われルナは前に向き直りまた歩き出す。その時、近くの茂みがざわつく。皆足を止め、いつでも戦闘態勢に入れる様にする。茂みの一番近くに居るカインは、緊張からか口の中が乾く。そして、ゴクリと唾を呑み込んだその刹那、茂みから大きな角を二本額から生やした大型の魔獣が飛び出してくる。素早く腰の青空天を抜こうとしたカインだが、それより早く魔獣の角がカインの脇に入った。


「グッ!」

「カイン!」

「カインは大丈夫だ! また来るぞ!」


 ワノールはウィンスに一喝入れる。その声にウィンスは辺りを警戒するが、それでもカインの事が心配だった。もちろん、ワノールもカインの事が心配だったが、カインなら大丈夫だと何と無くだが感じた。

 木々の間を駆ける音が聞える。物凄いスピードで何度も木々に衝突しながらも、魔獣は立ち止まらない。角と角の間に挟まれ身動きの取れないカインは、その魔獣が木にぶつかるたびに、木と魔獣の頭に体を押しつぶされ、口元から血を滴らせていた。魔獣が激突した木は軋み悲鳴を上げながら地面に倒れ、土煙を舞い上げる。その度、動物達は怯え隅へ隅へと逃げてゆく。その光景を薄れゆく意識の中見たカインは、何としてもこの魔獣を止めなくてはならないと歯を食い縛る。


「ぐうっ! ウウウッ!」


 両手で角の根元を握ったカインは、受け止めようと力を入れるが、足が地に着かず踏み止まる力が出ない。必死に足を伸ばすカインだったが、その直後全身に激しい衝撃が走った。口から血が吐き出され、カインの骨が背後の木と同じ様な軋み声を上げる。全身に痛みが走り、両腕が力なくだらけた。意識は完全に無くなり、魔獣の角と角にぶらぶらとぶら下がっているだけだった。


「ガウウウウウッ」

「オイオイ。ザノメ。そいつは食べるなよ。一応、色々と調べなきゃいけないんだからな」


 木の上から二足歩行の魔獣が一体降り立った。長く頑丈そうな尻尾を軽くしならせながら、口元から薄ら伸びた牙を煌かせる。ザノメと呼ばれた魔獣は不思議そうに彼の方を見て首を傾げ、唸り声を上げる。


「ガウウウッ?」

「ほら、そいつ置いてあっち行ってな。用がある時に呼んでやるから」

「ガウウウッ!」


 ザノメはカインの体を下ろすと森の中へと足早に消えてゆく。残された魔獣は、ゆっくりとした足取りでカインに近付く。だが、その時足音と話し声が聞えた。自分の姿が見られては不味いと思った魔獣は、とっさにカインを茂みに隠し木の上へと隠れる。


「こ、この辺で、大きな音が聞えた」

「ま、まさか、魔獣じゃねぇだろうか?」

「そんな怯えるこたぁねぇ。わし等にはノーリンさんがいるでぇねぇか」

「でも、あの人本当に信用していいのか? 食うだけ食って、金盗んでとんずらするかもしれないんだぞ!」

「何言うてるだ! ノーリンさんがそんな事する人なわけねぇ!」


 この近くに村があるのだろう。複数の村人達がカインの方に近付いてくる。オドオドと辺りを警戒する村人達。一歩一歩と茂みへ近付いてゆく村人達の一人が、横たわるカインの体に躓き転ぶ。


「いてててっ! 何かあっぞ。ンッ? た、たたた大変だぁ! 皆人がたおれてっぞ!」

「本当じゃ! 大変じゃ! 皆、村に連れてくぞ!」


 村人達はカインを囲む。そして、力を合わせてカインを抱えると来た道を引き返してゆく。村人達の姿が見えなくなると、木の上から魔獣が降り立ち小さく舌打ちをする。眉間にシワを寄せ、村人達が去っていった道を真っ直ぐ見据え、何か思いついたのか、薄らと不適に笑みを浮かべ、指笛をならした。すると、何処からとも無く足音が響き、ザノメが森の奥から現れた。


「ガウウウッ!」

「行くぞ。お前にたらふく飯を食わしてやる」

「ガウウウウウッ!」


 魔獣の言葉にザノメが嬉しそうに遠吠えをあげた。その遠吠えは森中に響き渡った。


 魔獣の遠吠えが遠くの方から聞えた事から、近くに魔獣が居ない事を感じ取ったフォン達は、集まり話し合いをしていた。話し合いと言うより、もめていたと言う方が正しいのかもしれない。その原因はワノールにあった。


「どう言う事だ! カインを探さないって!」

「理由は言った筈だ」

「道が分からなくなるからって、それだけの理由でカインを見捨てるのかよ」


 フォンとウィンスはひたすらワノールに意見を述べるが、ワノールはそれを訊きうけようとはしなかった。かたくなに首を振るワノールに、フォンは掴みかかるが、それを簡単にあしらわれる。勢いそのままに地面に横転するフォンは、激しく肘をすりむいた。


「フォン! 大丈夫か?」

「オイラは、大丈夫だ。くっそ! オイラは一人でもカインを探しにいく!」

「勝手な行動はするな。すれば、俺が黒苑で切りつけて無理にでもつれてゆく」

「やれるもんならやってみろ」


 フォンの言葉にワノールが黒苑の柄を握り、一瞬で刃を抜く。鞘と刃が擦れ合う音が微かに聞え、フォンは身構える。何も言わずそれを見据えるルナと、どうするか悩むウィンス。カインなら間違いなくとめるが、今のウィンスにこの二人を止める術は無い。睨み合うフォンとワノールの間に緊迫した空気が流れる。

 微かに風が流れ、突起した地面がほんの少しかけ、乾いた音が僅かに響く。それと同時にフォンとワノール、両者が互いに向って地を駆けた。怒りから僅かに獣になりかけたフォンのスピードは、狭く歩き辛いはずの悪路でも衰えず、すぐにワノールとの間合いが狭まる。瞬時にワノールは右手に握る黒苑を振り抜く。黒い刃は滑る様に横一線に走るが、その刃は宙を切り、フォンの体がその刃より高い位置に見える。その瞬間、ワノールは奥歯を噛み締め、攻撃に備える。その直後、激しい衝撃が体を襲った。


「――ッ!」


 合わさった白い歯の間から、薄らと血が流れ出し、ワノールの体は前のめりになる。この時、すでにワノールはフォンの鉄拳を腹に喰らっていたのだ。いや、正確にはワノールが黒苑を振り抜くその前に。ガクガクと両膝が笑い出し、力が入らず体を起こす事も出来ない。口の中に広がる血が、食い縛った歯を開くと同時に、地面に一気に流れ出す。

 足元がフラフラのワノールに、フォンは右足を横に真っ直ぐに伸ばしワノールの頭部目掛けて垂直に落下する。このままだと、ワノールが危ないと思い、ウィンスは足の裏に風を集め地を蹴る。


「止めろ! フォン!」


 そう叫びながら、ワノールに向って落ちて行くフォンの体に、ウィンスは体当たりした。二人の体がぶつかりあい、衝撃で体が互いに反発しあう方へと吹き飛ぶ。フォンの体が空中で何回転したのかは不確かだが、既に自分の体がどちらに向いているのか分からず、フォンは頭部を巨木にぶつけ意識を失う。その瞬間、鈍く大きな音が森中に響き、鳥達が一斉に空に飛び立った。一方、ウィンスは風を操り、体への衝撃を最小限に抑え、地面に倒れる。


「イッ……。何とか、納まったか?」

「その様ですね」

「何で、そんなに落ち着いてるんだよルナ。少しくらい止め様と思わないのか?」

「止め様とは思いますが、私にフォンさんやワノールさんを止める力などありません。それに、もし止めに行けばきっとウィンスさんの足手まといになっていたとおもいます」


 相変わらずの口調に、ウィンスは半笑いする。その時、今まで何とか倒れるのを持ちこたえていたワノールの体が、ドサッ、と音を立てて地面に崩れ落ちた。黒苑は刃を地面に転がる石にぶつけ、澄んだ金属音を微かに響かせる。

 どうも! やってきました! 第六回 キャラクター紹介! 今日は『ワノール』です。


 名 前 : ワノール=アリーガ

 種 族 : 烈鬼族

 年 齢 ; 27歳

 身 長 : 189cm

 体 重 : 72kg

 性 格 ; 正義感が強く己の意思を貫き通す

好きなモノ; 剣術を磨く事・読書・酒・タバコ・妻

嫌いなモノ: 努力しない奴・甘い食べ物・獣人・魔獣


作者コメント:

 元・黒き十字架の総隊長。右目に眼帯をしており、その顔には痛々しい傷痕が。扱う剣『黒苑』は漆黒の刃で、自分の気持ちはどんな時も揺らがない様にと言う意味があるとか、無いとか。

 かなりの愛妻家で、妻との約束で酒もタバコも今はやめている。独自で生み出したその剣術は、誰も真似する事は出来ない。


 以上! 第六回 キャラクター紹介でした。次回はまだほんのちょっとしか出てない『ブラスト』の紹介でも。きっと、皆忘れちゃってるよね(笑)

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