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第69回 飛行艇での戦い

 空を悠々と飛行する飛行艇。

 真っ赤なボディーは、青い空では目立っている。

 風を切る二枚の翼は、激しい風を浴びながらも、機体を平行に保っていた。

 その飛行艇の上層部にある甲板に、バルドの姿が窺えた。長い緑の髪が、激しい風に大きく流され、細身の体はその風に吹き飛ばされてしまいそうだ。鋭い目付きの奥に輝く茶色の瞳は、飛行艇の行く先を真っ直ぐに見据え、奥歯をガリッと噛み締めた。

 静かに背負っていた弓を取り出すと、空穂うつぼから矢を数本左手で取る。吹き荒れる風に顔を顰めるバルドは、一度弓を構えたが上手く構えることが出来なかった。その為、弓と矢をしまうと、静かに奇妙な彫り込みの入った長い刃のナイフを右手に持つ。


「厄介な事に……巻き込まれたもんだ……」


 静かにそう呟いたバルドは、青い空の一点を見据えた。その先には、微かにだが、黒い影が複数見えた。それが、魔獣である事にバルドは気付いていた。いや。目の良いバルドだからこそ、気がついたのだ。意識を集中するバルドはその黒い影の動きを追う。


「右に――十二。左に――十四。下に――二十。上に――十。大層な数だ……」


 面倒臭そうなバルドは、チラリと後方に視線を送った。その視線の先には、少しだけ嬉しそうな笑みを浮かべるティルが、壁にもたれて立っているのが映る。


「何か……言いたそうだな」

「いや……別に」


 軽く首を左右に振ったティルは、右手の人差し指で天翔姫のボタンを押す。すると、キューブ型だった天翔姫が、瞬時に赤い亀裂の入った白い細身の刃の剣へと変った。軽々と剣を回すティルは、バルドの横へと並んだ。

 目を細めるバルドは、迷惑そうな表情を見せるが、ティルはそれを気にする素振りすら見せず、真っ直ぐに青い空を見据える。バルドには影が見えるが、それはバルドが人並み外れた視力の持ち主だからで、ティルには全く見えていなかった。


「……? 俺にはさっぱり見えんが……」

「お前の視力では、見えんだろうな。だが、確実に近付いているぞ」

「そうか。なら、さっさと持ち場に着かないとな」

「持ち場?」


 怪訝そうなバルドは、眉間にシワを寄せたままティルを睨む。半笑いを浮かべるティルは、「睨むなよ」と、軽い口調で言うと、出入口の方へと顔を向けた。そこには、気分の悪そうなカシオと、相変わらず穏やかな笑みを浮かべるブラストが立っていた。少しだけ嫌そうな表情を向けるバルドに、ブラストは楽しそうに微笑みながら言う。


「そう怖い顔するなって。一緒に戦うんだから」

「お前と一緒には戦わん」

「何だよ。そう冷たい事言うなよ」

「そうだぞ……。皆で――ウブッ!」


 両手で口を押さえるカシオは、両頬を膨らし、今にも吐き出しそうな勢いだった。そんなカシオに冷たい視線を送るティルとバルドは、ため息を一つ吐く。


「足手まといだ」

「今すぐ消えろ。出なきゃ、今すぐ射抜く」

「うぐっ……。酷い……酷すぎる……。俺、体調悪いのに――」


 酷い罵声に泣き崩れるカシオ。その後姿を見据えるブラストは、呆れた様な笑みを浮かべていた。しかし、そんなカシオにトドメを刺す様に、バルドとティルは冷たい言葉を吐き出す。


「居るだけ邪魔。目の前から消えてくれ」

「体調が悪いなら出てくるな」

「うう〜っ……少しくらい、優しい言葉を――」

「うるさい! とっとと部屋に戻れ!」

「あう〜っ……。ティルなんて……ティルなんて――うぐっ」


 叫ぼうとしたカシオだが、吐き気に襲われ両手で口を押さえてその場に屈みこんだ。両肩を落とすティルは、左手で額を押さえると、軽く左右に首を振った。呆れてモノも言えないと、言った所だろう。

 そんなティルに、弱々しく顔を上げたカシオは、両手で口を覆ったまま、涙ぐんだ目でティルを見つめる。その目がうっとうしく、苛立つティルは額に青筋を浮かせ、眉間にシワを寄せ怒りを堪えながら、静かに口を開く。


「いいから、黙って部屋に行け……」

「ううっ……ティルなんて、大ッキライダ!」


 カシオは最後にそう叫び部屋へと走り去っていった。その言葉に怒りで拳を震わせるティルは、静かに息を吐き心を静める。だが、ブラストはティルを馬鹿にする様に、右肩を二度叩くと、「大ッ嫌いだってさ」と楽しそうに笑いながら言う。ムスッとした表情のティルは、ブラストを睨んだ。

 ようやく、ティルとブラストの視界にも、黒い影が見える距離まで迫った。先程まで緊張感など無かったその場が、一瞬にして緊迫した空気へと変り、ティル・ブラスト・バルドの三人は真剣で鋭い眼差しを見せる。ティルは右翼、ブラストが左翼、そして中央はバルドと言う配置になった。

 右翼に立つティルは、顔にぶつかる風を、左腕で凌ぎながら真っ直ぐに、向って来る影を睨む。この風とこの足場では、自分達が不利だと分かっているティルは、顔を顰めると、軽く舌打ちをした。だが、風の音でその舌打ちは誰にも聞こえはしなかった。


「来るぞ!」


 バルドの叫び声に、ティルとバルドは素早く武器を構える。そして、遅れる事十秒。数体の翼の生えた魔獣達がそれぞれに一斉に襲い掛かる。多少前屈みになるティルは、素早く天翔姫を振るい、魔獣達の翼を切り裂く。一方、甲板で戦うバルドは、彫り込みの入った長い刃のナイフで、魔獣達の心臓を一突きする。返り血なんて気にする様すも無かった。

 落ち着いた様子のブラストは、飛び交う魔獣の攻撃を紙一重でかわしながら、二人の様子を窺っている。しかも、戦う気が無いのか、一向にボックスを武器に変換する素振りすら見せない。顔の横数ミリの所を、魔獣の爪が通り過ぎる。正確には、ブラストが顔を僅かに右に逸らし、攻撃を避けたのだ。その後も、ブラストはその場から僅かに動く程度の動きだけで魔獣の攻撃を次々とかわすが、自ら攻撃を仕掛ける事は無かった。

 戦いながらもその様子を目にしていたティルとバルドは、少しばかりブラストを気に掛けるが、次々と魔獣が襲い掛かってくる為、考えている暇は無かった。

 約四ヶ月ぶりの更新でしょうか?

 長らくお待たせしてすいませんでした。

 これからも頑張って、クロスワールドを完結できるようにしていきたいと思います。

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