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第27回 狙われた国王 蒼髪の男との激突

 東西南北の出入口でそれぞれが戦っている中、グラスター城の玉座に座るカーブンの笑い声が響く室内。ワノールの目が鋭くカーブンを睨む。何がおかしいと、言いたそうな目で。だが、笑いを止めないカーブンは、既に分かっていた。自分の命が僅かであると。そして、これもまた、運命であると言う事を。

 笑い続けるカーブンが急に笑うのをやめ真剣な顔付きに変わる。そして、目を閉じゆっくりと、呼吸を繰り返す。そんなカーブンの顔を不思議そうに見据えるワノールは、殺気を感じ素早く黒苑を抜く。鞘と刃の擦れ合う金属音が辺りに響き姿を現す、漆黒の刃。艶やかに黒く輝く黒苑を構えるワノールに、カーブンは落ち着いた声で言う。


「来たようじゃな。ワシの命を狩りに……」

「どう言う事だ! 命を狩りに来たって――」


 ワノールがそう叫んだその時、鋭く突き刺さるような冷たい視線を背中から感じた。その瞬間、とっさに身を翻しすぐに体を視線の方に向けた。そこには、蒼く尖った髪をした男が壁に凭れ、腕組みをしたままこちらを見ていた。鋭く切れた目は、とても冷ややかで、幾人もの人を殺してきた目をしている。背中には鍔の無い大きな剣を包帯に巻いたまま背負い、腕周りの筋肉は凄まじい。その鋭い目を見据えるワノールは、右足を一歩引き黒苑を低く構える。

 それを見ても、表情一つ変えない蒼髪の男は、薄ら笑みを浮かべると静かに首を振りながら拍手を送る。それが、誰に向けられたものかは分からない。ただ、いえるのはこの男が強いと言う事だ。気配も無くしかも、この鉄壁とも言えるグラスター城に一人で忍び込んだのだ。よっぽどの力の持ち主なのだろう。

 黒苑の柄を握るワノールの手は汗が滲み出て、喉も渇く。緊張、いや。完全に相手の殺気に飲み込まれているのだ。壁から背中を放し、ゆっくりと足を進める。そして、ワノールの目を真っ直ぐ見据えて言う。


「まさか、一人残るとは思わなかったぜ!」

「――!」


 突如振りぬかれた大きな刃。まだ、包帯が刃には巻かれているが、気にせずワノールに襲い来る。咄嗟に、低く構えた黒苑を振り上げる。


「――ッ!」


 互いの刃がぶつかり合い、激しく交錯する。澄んだ金属音が一瞬響き、衝撃が刃を弾く。もちろん、重さ的にも不利な黒苑は、軽々と弾かれ、衝撃が柄を握るワノールの手にも伝わる。重々しく、それでいて鋭いその襲撃にワノールは、表情を歪めるが、必死にその場に踏み止まった。だが、すぐに幅の太い刃がワノールに襲い来る。


「クッ!」


 もう一度相手の剣を受け止めようと、黒苑を刃とぶつけ合ったその時、黒苑の漆黒の刃が、甲高い音を響かせ、中間部から真っ二つに折れる。そして、突如ワノールの体に凄まじい衝撃が襲い掛かった。その衝撃に耐え切れず、吹き飛ぶワノールは壁に背中を打ちつけ、円形に壁がくぼむ。亀裂の走った壁が、ワノールが落ちると同時に細かな瓦礫を落とし音をたてる。折れた黒苑の切っ先は高い天井に突き刺さり、漆黒の刃を少し覗かせていた。


「ケッ! 軟な刀を使ってやがる。たった二回受け止めただけで折れちまうとはな。折角楽しめると思ったのに」

「グッ……」


 口元から血を薄らと流すワノールは、苦しそうに体を起こし男を真っ直ぐに睨み付ける。右手に持った黒苑は、もう使い物にならないと悟ったワノールは、柄を捨てると壁に立て掛けられていた三日月形の刃の剣を手に取る。それを、見据える男は、不適に笑みを浮かべ言い放つ。


「オイオイ、ふざけてんのか? そんな装飾用の剣でこの俺様を切り裂こうってか?」

「目的は、国王の命か!」

「それ以外にここに来る理由があると思うか?」


 大剣を持ったまま右手首を軽く回す男は、不服そうな表情を浮かべる。そんな男の気を引くワノールだが、カーブンはその場を動こうともせず、ジッと男の顔を見据える。逃げる気が無い。そんな感じが窺える。全く、カーブンの考えている事が分からないワノールは、頭の中で様々な考えをあげていくが、答えなど見つからなかった。歯を食い縛るワノールの表情が歪んだ、その時、男が静かに口を開く。


「そうそう。一つ良い事を教えてやろう。この俺の他にも、十二魔獣が四人東西南北の守備砦を襲撃している。内、一人は、この俺よりも遥かに強い。まぁ、お前は俺に殺されるんだ。関係ないか」

「クッ。やっぱり、罠か……」


 そう呟くワノールに、男は大きな声で言い放つ。


「オイオイ。人聞きの悪い事を言うなよ。これは、戦力を分断する戦略って言うんだよ。まぁ、このリオルド様がいりゃ戦略なんて関係ないがな」

「やはり、五百年前と、同じか……」


 静かに口を開くカーブン。「アアッ?」と、不機嫌そうな声を上げるリオルドは、鋭い視線をカーブンの方に向ける。堂々たる鋭き瞳をリオルドに向けるカーブンは、イスから立ち上がり力強い口調で問う。


「リオルド。我が命はくれてやろう。じゃが、若き次世代を背負う者達の命は助けたやってくれ!」


 その言葉に薄ら笑みを浮かべるリオルドは、大剣の切っ先をカーブンの方へと向け力強く床を蹴る。その瞬間、ワノールも勢いよく床を蹴りカーブンに迫るリオルドに向って一直線に駆ける。階段を駆け上るリオルドに背後から追い付くワノールは、右手に持った三日月形の剣を振りぬく。だが、リオルドは上半身を捻り、大剣を振り抜く。キンと少々短めの澄んだ音が聞え、ワノールの柄を握る手に衝撃が走る。三日月形の剣の刃が切られたのだ。あまりの衝撃に足が階段から離れた。宙に投げ出されたワノールの体。そして、微かに舞う黒髪。これは、ワノールの前髪だった。微かにリオルドの刃が掠ったのだろう。

 階段から吹き飛び、激しく床に背中から叩きつけられるワノールは、少量の血を口から吐いた。一瞬息が止まり目の前が真っ白になる。剣の切っ先は、ワノールの足元の床に突き刺さり微かに震えていた。表情を引き攣らせながら体を起こすワノールは、霞む左目でリオルドを睨み付けた。



 レイストビルから少し離れた森の中、太い木の枝に佇む一人の男。草木が揺れる度に黒髪を揺らすその男は、眠そうに欠伸をすると右手に持った包みを見据え、目を閉じる。その男の背後に音も無く背中に槍を二本担いだ男が現れた。サラサラの黒髪を靡かせた槍を担ぐ男は、目の前の男に静かに言う。


「ゼロ。作戦は巧く行った。北方ではジャガラがあの男の息子と激突している」


 その言葉に薄ら笑みを浮かべたゼロは、「ふ〜ん」と言いながら頷く。まるで興味の無さそうな声だ。確かに、今少し他の事を考えていた。この先の事を。だから、少し上の空になっていたが、すぐに男に返事を返す。


「ヴォルガは、行かなくていいのか?」

「ああ。俺はまだ平気だ。それより、まだ報告があるが聞くか?」

「報告って、西方ではロイバーン。東方にはレイバースト。南方にはディクシー。とか、何だろ。別に興味ないな。奴等が誰の相手をして様とも」


 その言葉に、小さな声で「そうか」と、呟いたヴォルガは暫し遠くに見えるレイストビルの方を見据える。あまりに小さくて誰が何処で、どんな風に戦っているのかは見えない。だが、確実にレイストビルの東西南北の守備砦が破壊されていくのだけは見る事が出来た。

 こんばんは……。崎浜秀です。

 今回、スランプもありまして、更新が遅れてましたが、ようやく更新できました。

 しかし、これからも、大分更新が遅れると思います。読者の皆様にご迷惑おかけします。

 更新が遅れる理由は、僕が今度、小説大賞に挑戦しているからです。

 こんなに未熟なのに、小説大賞なんかに挑戦だなんて、無謀だと思うんですが、今の内一度挑戦しておいた方がいいだろうと、思いまして挑戦するしだいです。

 色々と読者の皆様にはご迷惑を掛けると思いますが、出来る限り更新できるよう努力したいと思います。これからもよろしくお願いいたします。

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