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第25回 敵襲の最中の仲間割れ

 カーブンの横で胸を押さえ、苦しむウィンスにカインが優しく声を掛けている。ウィンスに聞えているのか、不明だが息遣いは更に荒くなり、呼吸が困難なのが見て取れた。暫し焦るカインは、振り返りルナの顔をジッと見つめる。落ち着いた様子のルナは、ゆっくりとウィンスの方へと足を進める。仰向けに寝かされたウィンスの胸に右手を翳すルナは、目を閉じ力を集中する。呼吸を荒げるウィンスだったが、徐々に楽になりつつあった。心配そうにしていたミーファは、ホッとしたのか、静かに息を吐き笑みを浮かべる。

 一体、ウィンスの身に何があったのだろうと、不可解に思うワノールは一度目を伏せ、静かに見開くとカーブンを睨み付ける。鋭い眼光のワノールと目を合わせるカーブンは、少々真剣な目でワノールを見返し、言い放つ。


「そんなに恐い顔をしてどうしたんじゃ? もしや、ワシがウィンス殿に何かやったと思っておるのか?」

「まぁ、そう言う所だ」

「なっ、貴様! それ以上、国王を侮辱すると――」

「よい。止めんか、フレイスト」


 カーブンの一喝にフレイストは身を引き、静かに歯を食い縛った。怒りから、微かに奮えるフレイストの右腕。自分の尊敬する父が侮辱されるのが、辛かった。だから、目を伏せ一度気持ちを落ち着かせる。

 ずっと互いの目を見つめ合うワノールとカーブン。そんな二人の横で、ウィンスがようやく目を覚ます。息も通常通りに戻っており、なんだか落ち着いた感じに見えた。心配そうに顔を見るカインに、ウィンスは少々笑みを浮かべ、「何?」と、小さく訊く。すると、カインは軽く首を振り、「なんでもないよ」と、少し涙目で答えた。

 ウィンスが目を覚ましたのに気付いたカーブンは、牙狼丸を鞘に収め静かに笑みを浮かべて、横になるウィンスの方に差し出した。すると、すぐにウィンスは体を起こし、何度か深呼吸をして、牙狼丸を両手でしっかり受け取った。


「くれぐれも、無理はしない事じゃ」

「ウッ……はい……」


 少し苦しそうな表情を見せたウィンスだが、誰もそれを見た者は居なかった。

 静かに立ち上がったカインは、ウィンスに肩を貸し階段の下まで降りると、ワノールの横に並ぶ。ルナは後列のミーファの横へと足早に移動し、相変わらず無表情のままカーブンの方を静かに見据える。急に静まる部屋の中で、何故か険悪な雰囲気が漂う。そんな時、急に部屋の扉が乱暴に開かれ、一人の兵士が入ってくる。

 目の色を変えるカーブンは、扉の方にその鋭い眼光を向ける。険悪だった雰囲気は一瞬にして、緊迫した空気へと変わり、皆の視線も扉の前に立つ兵士の方へと向けられた。少々、息遣いの荒い兵士は、背筋を伸ばしカーブンへ一礼する。その直後、響くカーブンの力強く堂々とした声。


「何事じゃ! 何を騒いでおるのじゃ!」

「北方、南方、西方、東方。全ての守備隊が魔獣達と交戦中! 至急救援を!」

「どう言う事だ! 何故、魔獣達が近付いている事に気付かなかった!」


 聊か怒りの声を上げるフレイストに、兵士が臆し一歩後退する。確かに魔獣が近付いて来ていれば、普通に気が付くはずなのだ。そして、事前に国王へ連絡が行くはず。だが、今回は違う。既に守備隊が魔獣達と交戦しているのだから。

 怒りを見せるフレイストに対し、聊か不自然さを感じるワノール。以前、都市ディバスターが魔獣の襲撃を受けた時も、この様に突然だった。ディバスターはレイストビルと違い、それほど守備は厳重じゃなかった為、突然魔獣に襲われても不思議じゃなかったが、この厳重な守備を誇るレイストビルが、何故こうも簡単に魔獣達の接近を許したのか。そこが、ワノールは気になった。

 色々と、考えを張り巡らせるが、どうも答えが出ない。姿を消していたとしたら、何故、守備隊の前で姿を現す必要があったのか。そして、何故、四方向から攻め入るのか。確かに相手の戦力を分断するには、いい考えかも知れないが、それでは、魔獣達の戦力も分断されてしまうのではないのかと、言う疑問が浮ぶ。第一、ここは鉄壁の防衛を誇るレイストビル。鍛え抜かれた兵士達が多く存在する。そう考えると、戦力を分断された魔獣達の方が明らかに不利だ。

 腕組みをしたまま難しい顔をするワノールは、顔の傷痕を少し歪ませる。そんなワノールにカインが言う。


「ワノールさん! 僕等も行きましょう! 四方向なら、手分けした方がいいですよ!」

「確かに、そうだ。カインの言う通りだな!」


 カインの意見に賛同するウィンスだが、ワノールは聊か複雑そうな表情を見せる。何故か、嫌な予感がする。それは、何を見落としている様な気がしたからだ。返事を返さないワノールに、少々苛立つカインは力強く言う。


「どうしたんですか! そんなに悩む事無いでしょ! 一緒に戦いましょうよ!」

「少し落ち着けカイン。何か不自然だと感じないのか?」


 冷静な口調でそう言うワノールだが、それに対しカインが更に力強く答えた。


「何言ってるんですか! 魔獣達は待ってくれないんですよ! こんな所で考えていたら、被害は増える一方ですよ!」

「確かに、お前の言う事も分かるがな……」

「んだよ! 結局、あんたはここがどうなろうが、知ったこっちゃ無いって事かよ!」


 ワノールにそう言い放ったのはウィンスだった。鋭い目付きでワノールを睨み付け、今にも掴みかかりそうな表情を見せるウィンスは、歯を食い縛り拳を震わせる。その視線にワノールは、小さく息を吐き目を伏せると静かに言う。


「俺は、そんな事は言っていない。ただ――」

「ただ、なんだよ!」


 すぐにそう言うウィンスに、ワノールが遂に怒りを露にした。右拳がしなやかに弧を描くようにウィンスの左頬を思いっきり殴りつける。小柄で軽いウィンスの体は、ワノールに頬を殴られ吹き飛び階段の方まで飛ばされた。左頬を押さえるウィンスは、鋭い目付きでワノールを睨み付け言い放つ。


「何すんだ! 自分の意見が通らなきゃ、暴力か!」

「……」


 ワノールは何も言わない。俯いたまま。その光景を見据えていたミーファとルナは顔を見合わせる。相変わらず、ルナは表情一つ変えていなかったが、ミーファは心配そうだった。このまま、皆がバラバラになってしまうと。何とかしたいと思っても、何の力も持たないミーファは、自分が何も出来ない事を悔やみ唇を噛み締める。

 そんな時、立ち上がったウィンスがカインに向って叫んだ。


「もういい! 俺達だけでも行こう!」

「うん。フレイストさん! お願いします」

「ああ。それじゃあ、一緒に地下の方へ」


 そう言ってフレイストは駆け出す。それに続く様にカイン、ウィンスと部屋を出て行く。扉の前に立ち尽くしていた兵士は、その場の空気に耐え切れず、そのまま部屋を逃げる様に出てゆく。残されたワノールは、俯いたままジッと動かない。そんなワノールにミーファが言う。


「いいの? あのままで」

「……」

「ミーファさん。私達はここに居ても何も出来ません。部屋に戻って、皆さんの無事を祈りましょう」


 ルナにそう言われ、不本意ながらミーファは頷く。そして、ワノールの事を気にしつつも部屋を後にした。部屋に残されたワノールにカーブンが静かに口を開く。


「仲間が大切なのは分かるが、そう心配する事もなかろう。彼等とて、幼いと言えど選ばれた者達じゃ。もう少し頼ってみてはどうじゃ?」

「俺は、別にあいつ等を信じていない訳じゃない。ただ、何か胸騒ぎがする。これが、何かをするための揺動の様に思えてしまう……」


 複雑そうな表情でそう言うワノールに、カーブンは不適に笑い出す。突如笑い出したカーブンの方に顔を向けるワノールだが、カーブンは笑い続ける。何がおかしい、と思うワノールは、鋭い眼光でカーブンを睨んだ。


 更新が遅れました。読者の皆様、どうも吸いません。

 只今、ある小説大賞に応募しようと思いまして、どんな作品を書くか模索中です。その為、多少更新が遅れています。それでですが、クロスワールドも、更新日を決めておきたいと思います。その方が、読者の方には良いと思うので。

 それで、ですが、月曜日と金曜日の週二日の更新にしたいと思います。本当、すいません。

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