表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/181

第2回 森の中の三つの影

 森の中を彷徨う三つの影。

 森の中は静かで、鳥の囀りと生い茂る草を踏みつける音だけが響いている。風は時折吹いては、木々の葉を擦り合わせ、ザワザワザワっと囁く様に声を上げる。足元には伸び切った草と、地中から突起した太い木の根が足場を悪くしていた。木々の葉の隙間から微かに射し込む日の光が、薄暗い森の中を照らしている。

 茶色のコートに身を包み、額から汗を滲ませる少年。鋭い切れ目で、真っ直ぐ広げた地図を見据え、口からゆっくりと息を吐き汗を拭う。

 そんな切れ目の少年の背後には、腰まで伸ばした金髪の髪の少女が居た。黒のワンピースに身を包み、落ち着いた様子の表情を見せている。ふっくらとした胸元に、首筋から汗が流れた。それを、ハンカチで拭い静かに息を吐く。流石に、足場の悪さとこの暑さで少し疲れが見えるが、それでも少女は表情を変えていない。

 最後尾にはフードを頭に被り、厚手のコートを着た少年が「ぜぇ、ぜぇ」と息を荒げながら歩いていた。ただでさえ、暑い中厚手のコートを着るこの少年は、大量の汗を額から流している。背中に背負う自分の背丈程の鞄で、分からないが背中は既に汗でビショビショだった。フードの隙間から覗く茶色の髪の先からも、点々と汗がたれ苦しそうな表情を浮かべている。


「てぃ、ティル……。本当に、ここであってるのか?」

「ンッ? 何か言ったかフォン」


 苦しそうな表情を浮かべる茶髪の少年フォンの方に、綺麗な黒髪を靡かせながら切れ目の少年ティルが体を向ける。前髪が目を隠すほどまで伸びているティルは、それを左手で掻き揚げフォンを真っ直ぐに見据える。


「ルナ。疲れてないか?」


 ふと金髪の少女ルナを気遣うティルは優しく声を掛けたが、ルナは表情を変えず答えた。


「私は平気です」

「そうか。あんまり無理はするな」

「はい」


 そんな会話をしてルナとティルは最後尾のフォンの方に顔を向けた。息を荒げながら、ようやく二人に追い付いたフォンは、鞄を木の根の上に置き座り込む。ため息を吐くティルは、呆れた口調で言う。


「お前な。暑いならコート脱げばいいだろ?」

「で、でも、虫が頭の上に落ちたら、どうするんだよ」

「何もそこまで警戒すること無いだろ?」

「お、お前、虫の怖さを知らないからそんな事がいえるんだぞ!」


 鼻息を荒げながらフォンがそう言う。呆れたような目でフォンを見つめるティルは、首を左右に振りルナの方に目をやる。表情は相変わらずだが、少し顔色が悪い。きっと、疲れが溜っているのだろう。ティルはそう判断し、ここで一時休憩を取る事にした。

 足元の草を天翔姫で刈りとり、何とか座れるようにしたティルは、ルナに休むように促した。ルナもその好意に答える様に一度頭を下げ腰を下ろした。


「なぁ、ティル」

「何だ?」

「本当にこの道で確かなのか?」


 不満そうにフォンがそう言う。少々考え込むティルは、地図を開き現在地を確かめる。


「あぁ。一応、あってると思うが、俺にも詳しく分からん」

「ティルって、意外に無責任だな」

「黙れ。だったら、お前が地図見て先導しろ」

「オイラが、地図見て方角わかってたら、すぐそうしてるさ」


 能天気な声でフォンはそう言い笑う。呆れたように右手を額に添えるティルは、ため息を吐き地図をしまった。静かに座り込んでいるルナの方に、視線を向けるティルは、低い声で優しく言う。


「大丈夫か? 顔色が優れないぞ」

「大丈夫です。少し休めば――」


 そこまで言って急にルナが倒れた。


「ルナ!」

「オイ! どうした!」


 フォンとティルは驚きの声を上げルナの傍による。やはり顔色は優れず、少々頬が赤い。息遣いも荒く、少し苦しそうだった。ルナの体を抱えるティルは、ルナの額に右手を当て熱がある事に気付く。


「ルナの奴、熱があるぞ!」

「熱! 大変だ! す、すぐ病院に!」

「こんな森の中に病院があるわけ無いだろ」

「そ、それじゃあ、町に急ごう!」

「町って、この近くに町なんて」

「あーっ! そんな事言ってる場合じゃないだろ! とりあえずこの森を突っ切ればいいんだよ!」

「お前、よく考えろ! この鬱蒼と生い茂る木々の中をどう突っ切るって言うんだ!」

「こうすりゃいいだろ!」


 フォンは立ち上がり一本の木の前に立ちはだかり、勢いよく左足を踏み込む。右拳が大きく振りかぶられ、上半身を限界まで捻る。全身のバネを圧縮したフォンは、それを一気に解き放ち上半身が力強く右拳を押し出す。右拳は木に当たる直前で止められ、突風が森中を駆け巡り、木々が倒れる音が何処からとも無く聞こえる。あまりの風の強さに目を閉じるティルは、目を開いて唖然とした。

 フォンの前に聳える木の後ろに生えた木々は、それぞれ左右に大きく倒れ、根っこが地中から顔を出し、真っ直ぐな道が出来ていた。そのお陰で、日の光が森の中を照らし、穏やかな風が吹き抜けて来ていた。苦笑するティルは、呆れたように言葉を発した。


「お前、意外と大胆な事するんだな」

「それより、急ぐぞ! 早く医者に見せるんだ!」

「医者に見せるって、この道であってるかわからんぞ」

「つべこべ言わず、行くぞ!」


 全員分の荷物を担ぎフォンはティルを急かす。この道で大丈夫なのかと、心配を過ぎらせながらティルはルナを抱え走った。地面から突き出した根っこの間を走るティルは、フォンの力の恐ろしさを初めて知った。

 ようやく、森を抜けた。全力で走り一時間で。流石に、フォンもティルも息が切れ、肩で息をしていた。目の前には、茶色の道が一本伸び、その周りには草原が広がっていた。

 そして、その一本道の先の方に白煙が青い空に向って伸びているのが見えた。おそらく、そこに町か、村のどちらかがあると二人は確信した。


「白煙が立ち上るって事は村か?」

「多分、そうだと思うが――」

「何だよ。何か気になることでもあるのか?」

「別に、また、あそこまで走るのかと思うと、気が遠退きそうでな」


 半笑いを浮かべるティルに対し、フォンが怒りの声を上げる。


「お前、ルナがどうなってもいいって言うのか!」

「俺は、そんな事言ってないだろ! 大体、俺はお前みたいに体力があるわけじゃないんだぞ!」

「あーっ! もういいだろ! こんなとこでもめてる場合じゃない!」

「俺も、お前の意見に同感だ。無駄な体力使わないで、とっととあの白煙のところに行こう」

「そうだな」


 落ち着きを取り戻し、二人は草原を二つに分ける茶色の一本道を駆けた。

 前回、言った様今回から登場人物の紹介をしていきたいと思っています。その記念すべき第一回は、獣人のフォンです。それでは、行ってみましょう!


 名 前 : フォン  

 種 族 : 獣人

 年 齢 : 16歳(一応)

 身 長 : 167cm  

 体 重 : 55kg

 性 格 : 明るく優しいが、計画性が無い

好きなモノ: 肉・お風呂・笑う事

嫌いなモノ: 寒い場所・長話・争い事・虫


作者コメント:

 この物語の主人公です。困った人を見捨てる事が出来ないかなりのお人よしで、争いは好みません。でも、仲間を傷つける奴や人々を苦しめる奴は許せず、止む終えず戦いをする事が続いてます。

 自分の好きなキャラクターの一人でして、多分一番

活躍してんじゃないかと思います。



 以上、第一回キャラクター紹介を終ります。

 最後の作者コメントは要らない気がしますね。次回は、もう一人の主人公ティルの紹介をしたいと思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ