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スノーフレーク  作者:
出会い
9/20

第9話

 結衣は一人で待っていた。皆の事を掃除をしながら待っていた。そしてこのときの時刻。それは時計の短い針が6をさしていた。約束の時間から後少しすれば....と言う思いで待った。しかし2時間経っても彼らは現れなかった。さすがに心配になり結衣は部屋の外へ出た。これが間違いだったのかもしれない。しかし以前杏夜が結衣に告げていたあの忠告は杏夜が記憶を消した事によって一緒に消えてしまっていた。


”夜はあの部屋に近づいちゃ行けない”


 その言葉はこのときの結衣の心には残っていなかった。しかしこれが運命だと言うのか。そうだとすれば、なんて残酷な事だろう。母親とは離ればなれ。その前には父親との別れもあった。しかし何も知らない結衣はこの運命に突き進んでしまった。


「杏夜?あの....さ?勉強の事なんだけど」

 どうなっているの?って言おうと思ったら部屋の中から叫んでいる声が聞こえた。

「てめぇ.......。なんでここにいんだよ!」

 そして次に聞こえたのはリオでも紫斗でも杏夜でもない聞いた事の無い年配の男性の声だった。

「俺の子供を捜しにきた。」

 子供を捜しにきたのであれば理事長のところにでも行けばよいものをこの男は何故か理緒達のところに来ていた。そしてこの男はこうも言った。

「俺の、娘.....。娘......。」

 結衣はその言葉を聞いてドキッとした。なぜならこの学校にいる生徒で女子は結衣しかいるはずが無いからだ。

「娘だと!?この学校は男子校だ。」

「俺が何も知らないとでも思うか?」

「うるせー!!!!おっさん!!とにかくいいから出て行け!!!」

「おっさんだと!?ちっ。まあしょうがねーな。今日のところはこれで切り上げてやる。またあとで会う事になるだろうよ。それに次は絶対に成功させる。」

 そういうと部屋が静かになった。あの男がいなくなったのだ。

「ったくなんなんだよ。迷惑なやつだな。だれだよあのおっさん。杏夜?おまえあいつと知り合いなのか!?」

 杏夜は黙り込んでしまった。

「黙ってちゃわかんねーよ!」

「ごめん。でも今は言えない。結衣も来てるし。」

 杏夜は結衣がこの部屋に来ていた事に気がついていた。

「ご、ごめんね。あ、の、....約束の時間すぎても来なくて....心配で.....」

「ごめん。今日は無理になった。じゃあ、またあとで。」

 杏夜はそういうと結衣を部屋から追い出した。何がどうなっているのがさっぱりな結衣でもさすがに嫌な感じがするのはわかっていた。そして何より結衣が引っかかっているのはあの言葉。


”俺の、娘.....。娘......。”


 分けわからなくなってきて頭が混乱してきてどうしたら良いかわからなくなっていたとき紫斗が部屋から出てきた。

「結衣。わりーな。とりあえず、俺らだけで飯行こーぜ。」

 そして結衣の心の奥ではなにかがひっかかっていた。でもそれが何なのか結衣にもわからず、ただただ嫌な感じがするだけだった。


 その後すぐに杏夜トリオも追いついた。

「いやーさっきはごめんねー。見苦しいところみせたな。」

「あ、別に良いです。それよりさっきの人、”娘”って言っていましたよ、ね?ここは男子校だよな?」

「え?あーそうだな。それに、杏夜とも知り合いみたいだし。あいつ誰なんだ?おれにもわけわかんねえ。」

「今は言えないんだ。悪いな。だが嫌でもそのうちわかる事だ。それよりどうして食事中に損な話するんだ?ご飯がまずくなるよ。」

「悪い。」

「いや、いいんだ。僕も悪いしね。とにかく早く食べなよ。」

「おう!」

「てかよー、お前気をつけろよ?女みてーな体しやがって。変なやつには気をつけろよ!」

「おう!わかってる!」

「嫌、まてよ。」

紫斗が真剣なまなざしで言った。そのまなざしに皆が息をのんだ。

「それよりもやばいことがある。」

「お、おう?」

「それは」

「それは!?」

「...結衣が女だったらリオ!お前ぜってー結衣の事襲ってるだろ!?」

「は!?!?そ、そん、なことするわけ...ない...だろ!!!」

「すごく動揺してるんだけど。」

「なにこいつー」

「リオ....。まさかお前、びっくりだよ。気がつけなくて悪いな。」

「杏夜までそんな事言うなよ泣」

軽く涙目で言っているリオに皆で笑いながらご飯を食べた。

「じゃ、俺、そろそろ眠いし部屋戻ります。」

「おう!結衣ってば睡眠時間長げーよな。」

「あはは。成長期なんで、俺。」

「その小さい体で、ねえ....。まぁとりあえず気をつけてー」

「ちいさいってっっ!!!!!と、とにかくおやすみなさい!!!」

 そういって結衣は彼らより先に部屋に戻った。先ほどの男性が気になって仕方が無かった。

「あの人誰だったんだろう....」

 結衣は一人部屋に戻りつぶやいた。すると聞こえた。それは冷たい夜風にあたりながらそこに座っている男性が言った。


「しりてーか?」

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