第7話
杏夜は困惑していた。確かに血のにおいを嗅ぐと理性が飛びやすいのは事実なのである。もしも結衣の前でそんな事があっては...。杏夜は深いため息をついた。すると結衣は目をゆっくりと開けた。
「杏夜...?」
「起きた?今さっきここに運んできたんだ。大丈夫?」
「うん。それより杏夜?血が欲しいなら私、あげるよ?」
「いらないし、余計なお世話だよ?友人になったからって土足で人の中に入り込み過ぎ。」
「あ、い、いやそんなつもりじゃないんだけどね...。ただ、こんなにも人間がたくさんいて絶対けがする子もいるし、どうやって理性を保ってるのかなって気になっちゃって..。」
「結衣には関係ないよ。まぁ知らぬが仏っていう場合もある。いっとくけど夜あそこの部屋に入るのを許したのは今日だけだから。明日以降は絶対にきちゃだめだからね。」
「わかった。じゃあいつもみんなであそこに集まってるんだよね?」
「そうだよ。.....理性を保つ為にね。」
「そっか。」
「とりあえず今日は早く寝たほうが良いよ。おやすみ。」
杏夜はそう言って部屋の明かりを消した。暗闇の中で杏夜は言った。
「今日の事は忘れてもらう。これは結衣の為でもあるしそして命令を実行する為でもある。」
結衣が命令について聞く前に杏夜に強制的に眠りにつかされた。
そして杏夜はつぶやいた。
「姫。貴女はまだ我ら側に戻ってこなくていいのです....。」
するとドアからリオたちが入ってきた。
「結衣寝たんだねー。」
「お前結衣の血もらっちゃえばよかったのにー。」
「しつこいな。結衣のはもらわない。というか最初からいたんでしょ?」
「よくおわかりで。ところで姫って何?どういうこと?」
杏夜は少しの間黙っていてそして口を開いた。
「.....これは僕の問題だ。今はお前達にも言えない。」
「あっそ。ま、どーでもいいよ。」
めんどくさそうな顔をして紫斗が部屋から出て行くとリオも続いて出て行った。
「おやすみ。」
そういってその後から杏夜も結衣の部屋を後にした。