第3話
「うわーーーーーー!!!!!!すっげー。何この部屋。」
「広すぎだな。」
「お前むかつくなー笑」
「あははーたしかに笑」
口々に結衣の部屋に対してコメントをする男子生徒達。しかし突然彼らは結衣の方を向いた。
「あぁ、悪い。自己紹介、まだだったな?俺は魅椎木リオ。今はこの学校の生徒会長を務めている。だから学校の事は詳しいから何かあったら俺に頼れよ?」
「はぁ。ありがとうございます。」
輝かしい笑顔で挨拶をしてきたリオにすこし引きぎみで礼をすると話を続けた。
「俺ね、中等部のときから会長やってんの。上の学年とか六夏いねーし蹴落として俺が高校も最初っから会長やる事になったんだ」
俺すごいだろと言わんばかりの口ぶりで自慢してくるリオに対しいかにもチャラ男って感じの男子が挨拶を始めた。
「俺はこの学校の副会長。名前は桐谷紫斗。よろしくぅー。」
(こいつもリオと同じか......。ってことは!?)
「そうそう。僕もね生徒会役員なんだ。僕たち皆生徒会の役員なんだ」
その声がする方をむくとさらさらで美しい髪の毛の持ち主で、すらっと背の高い、そうまさに少女漫画に出てくる王子様のような人が立っていた。
結衣は一目見て恋に落ちそうになった。いや、おちたのだろう。だがしかし結衣は結衣自身に言い聞かせる。
(俺は”男”。だめだよ。)
「そ、そうなんですか。」
「うん。僕の名前は高野杏夜。ちなみに会計です。よろしくね。」
(優しそうだな。)
「おい!結衣!?こいつは腹ん中真っ黒だから気をつけろ!!」
「いや、リオには言われたくないね。」
そんな事をいいながらもなんだか楽しそうにはなしている3人をみてくすくす笑っていると、
「結衣、今日はありがとうございました。あしたからは僕たちになんでも聞いてくださいね。明日からよろしくお願いします。」
「あ、こ、こちらこそよろしく!」
「おいっ結衣!!そいつはきをつけろよ!ほんとだから!!」
「アーはいはい。わかりました。会長さん。早く部屋から出てってください。」
「リオずいぶん嫌われたな?」
「う、うるせーよ!!」
「じゃ、今日はお邪魔しました。」
「おやすみ!」
3人が部屋からいなくなると結衣は、最初に4人で入ったときよりも無駄に広く感じた。
今までだって結衣はいつも一人だった。結衣の家族は多額の借金を抱えいつの間にかいなくなっていた父、そしてその借金を返すため毎日遅くまで働く母親。父親の借金返済の為に仕事三昧の母親は家に1週間、1ヶ月かえってこないことだってあった。そんなとき家には結衣一人だった。でも結衣には家があった。小さくてとても素敵な家とは言えないが想い出の詰まった家。その家が、そのぬくもりが結衣を守ってくれていた。あぁあの家にもどりたいな。と思っていると、結衣の目には涙があふれてきた。しかし帰っても母親を悲しませるだけ、と思い、明日からがんばろう!!とこころのなかで改めて決意した結衣は涙を拭い布団の中に入り深い眠りについた。
その日結衣が見た夢は父親と母親と結衣で結衣の入園祝いの旅行で軽井沢に行ったときの想い出だった。”お父さん、会いたいよ。お父さん!!!!”
「大丈夫か?」
「ぅ、うん。」
「そうか。ならよかった。」
「って......!?!?!?!?!?」
「いやぁあああああああああああああああ!!!!」
そこには杏夜がいた。あまりにもびっくりした結衣はベッドから落ちてしまった。
「おはよう結衣。大丈夫?」
「どうしたの?な、なんでここに?」
「いや、朝ご飯だから呼びにきたんだよ。そしたらないてて...。」
「わた....俺!!泣いてました?」
「うん。なんかお父さんとか言いながらないてたよ?」
すこし落ち込む結衣に
「最近お父さんと会っていないの?」
と聞いた。
「はい...。いろいろあって!!まぁ俺は着替えてから行くんで。先行っててください!」
「え?着替えくらい待つよ?」
「は!?.....あ、いや、その俺、人に着替え見られるのはちょっと.....。」
「男同士だろ?」
「いや、その...。とにかく!!!!先に行っててください!!」
「え?あ、....。」
強制的に杏夜を退室させ結衣は急いで着替えて顔を洗った。