第17話
鬼の長。それはその世界において頂点に君臨し絶対的な権力と、確かな実力を持つもの。
少し昔の話をしよう。あるときある親子が居た。その親子の父親の方が鬼の長だった。絶対的な権力を持つ父。その息子は文武両道、そして、やさしく、美しい顔立ちの青年だった。
常にこの世界で一番の力を有するものが長になる、そして鬼同士の間に生まれたその子供だけが長になれる。それが掟である。掟とは守るべき事として既に定められている事項である。
ある日二人は争った。
父親は負けた。
息子はもとからある実力に伴い絶対的な権力も得たのである。その目的は全て守るべきもののため.....。
大きな爆音とそれとともに舞う灰色の煙。そのなかから声とともに近づく影に結衣は目を見張った。
『俺たち獣の族の力では何人よって戦っても叶わない。』
『しかし僕たちだけではなく晴弥様の力をお借りしてすればなんともないこと。』
そう、それは、晴弥の力を借りて結衣を助ける為にやってきたリオ達の姿だった。
『リオ、、、杏夜、、、、』
そして一番後ろに居た晴弥がリオ達を押しのけるようにして前に出てきた。
『父上、お久しぶりですね』
『ちっ...。てめぇ....!!』
『わしは今や鬼の頂点にいる。そのわしにとって親とておちぶれたそなたにてめぇといわれる筋合いではない。』
『ほぉ?いくら落ちぶれたとはいえこれでもお前の一つ前の代で頂点にいた俺にその口か?なにさまだっ!!』
『何を言われようとわしはわしの考え方で鬼・獣族を束ね進化させて行くまで。それに何の文句がありましょう。それとも現在長であるこのわしとあいまみえる覚悟でもおありか?』
『あ”?』
『頂点の力はそなたが一番知っているはず。ま、そなたがその力を持っているときすでにそなたはわしの力に負けていたのを忘れたか!?』
『わすれてねーよ。あのとき、実子であるお前によって仕組まれた罠に引っかかり地位も権力も家族も!みんな、みんなうばわれた。わすれもしねぇよ!』
『……遺言は、それだけか?』
『えっ?あの?なにいって...二人とも..』
『結衣君が出て行ってもどうにもならないこっちに来ていた方がいい。僕たちのところに。』
『遺言だとぉ?よくもなめたこといいやがって。俺は前みてーなふざけた戦いではなく真剣勝負をもうしこむぜ!』
『……学習しない方ですね。しかし、いいでしょう。反逆者を駆除するのも頂点の役目、ですよね?』
『さぁな!?』
『とぼけるなぁぁあああああ』
そうして二人の因縁の戦いが幕を開けた。再び。
…残酷で、複雑で、悲しい気持ちにさせられるこの戦いを…
…おわらせたい。
そう切に願うのは結衣だけではなく、晴弥も同様だった。