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第12話
だがそのようなことを言われても納得ができる訳が無かった。そして結衣にはまだ気がかりな事があった。
「では、」
少し間を置いてから結衣が言った。
「では何故自分には記憶が無いんですか?」
そのとき杏夜の顔が曇った。そのとき結衣は思ったのだ。”また掟、か”と。軽く幻滅しつつも結衣は知りたかった。
「だっておかしいじゃないですか。自分には小さい時の記憶があります。自分の母親と父親と一緒に暮らしていた。その時の記憶があるんです。でも、鬼としての人生は自分の中にはみじんもないんです。それなのに、自分がその鬼の一族だなんて、意味が分かりません。教えて下さい!!」
杏夜達は決まりが悪いような顔をして下を向いてしまっている。
「その理由はわしがおしえてやる。」
晴弥の言葉にみな一斉に晴弥の方を見た。
「ですが晴弥様、それは....。」
「何か問題でも?鬼の長であるわしになにか言いたい事でも?」
「い、いえ。申し訳ありません。」
「では問題ないな。」
そして話が始まった。それは結衣の出生の話。