第10話
見知らぬ男性に声をかけられ結衣は戸惑いを隠せなかった。
『あららーこの姿じゃ俺が誰だかわかんねーか。とりあえずあがらせてもらうぜ』
そう言うと男性は窓から部屋の中へ入ってきた。それを阻止しようとすると、
『さわぐと殺す。』
男性はそういいながら部屋にずかずかと入り込んでドアのところまで行き、そして、鍵を閉めた。
『厄介なやろーが来ると面倒でな』
『あなたはだれ?』
平凡な質問に男性はあきれた目つきでため息をついた。
『はぁ、、、。わしはおまえの兄上だぞ。』
『はっ?俺に兄貴なんていない。』
『俺とかいって何いってるんだ結衣。わしのことを忘れたのか?』
『なんのことかしりませんが俺に兄貴など存在しません。俺はひとりっこだ。』
結衣にはこの人物の言う事が理解できなかった。それもそのはず。なぜならいままで、この高校に入学するまでの記憶を辿っても、この要な人物を見た事も聞いた事も無かったからだ。
『あーたしかに設定ではそうだな。だがお前はわしの妹だ。』
『意味が分かりません。設定とか、、、急に現れて俺の兄だといわれて納得できる訳無いじゃないですかっ』
『ふーん、、、、兄の名を忘れ兄を敬わないとは我らの掟破り。罰せねばならんな.』
『まだそんなこといってんですか?俺に兄貴なんていない。俺には借金負った父と仕事三昧の母しかいない!!』
『そ奴らは真の家族ではない。そなたの真の家族はもっと偉大なる存在だ.そしてお前は我らのたったひとりの姫君。』
徐々に最初の頃より口調がきつくなっているのに次第に恐れを感じていた。
『な、なにいってるの、、?』
『やっぱりお前は姫君として過ごしていた時の方が似合っていたぞ。とりあえずわしと共に来い!』
男性が結衣の手を引っ張り連れて行こうとした時、結衣はとっさに大声で叫んでしまった。すると、運の良い事に、救いの手が差し伸べられた。
『結衣!!どうした!?開けろ!』
ドアの向こうには彼らがいた。
『ちっ面倒なのがきた。』
『た、たすけて、、、。』
そう一言いうと、ドアの向こうで、ものすごい音が聞こえ、
『おいっ!いれろっつってんだろーが!!!』
という声とともにドアが蹴破られ”彼ら”が入ってきた。
『てめぇ!!!結衣になにしてやがる!』
リオが男性につかみかかって行くと、冷酷な目つきになっていた男性がリオを突き放し、リオは床に倒れた。リオのもとに結衣、杏夜、紫斗がかけよると、
『ここには無礼者が多いようだな。』
と言った。
『何言ってんだ!無礼者はお前の方だろ!』
倒れ込んだリオとその周りに居る結衣達を経ったままの状態で上から見下ろしている男性は冷たく言い放った。
『この姿をみてもわしにそんな口きけるというのか』
そういってこの謎の男は姿を変えた。そのとたん杏夜、リオ、紫斗の顔色が一転した。