第1話
スノーフレーク。
春に咲く白くて小さな花。
花言葉は
『記憶 純粋 汚れなき心 清純 美』
午前5時。結衣は母親によって叩き起こされた。
ところで、結衣の家はとても貧しい家庭だ。しかしそんな家庭でも結衣の入学を許可してくれた学校が見つかったと言うのだ。
「というわけで、明日が入学式なんですって!もう入学金とか何もかもただで良いって言うから、即決して制服とかまで買ってきちゃったのよ。」
ほら、着てみて!!といわれ結衣は制服を渡された。
「って、お母さん!?これ、間違えてるよ?だってこれ、学ランだよ?」
「間違えてないわよ。あなたの制服はそれなの。」
「どういうこと?全然意味わからないんだけど?えっと女子でも学ラン的な学校な訳ですか?」
「違うわよぉ!先に言っておけばよかったわね。あなたが入学する学校はね、男子校なのよん♪」
「なのよん♪って!!!!そんな無責任なっ」
結衣が困った顔をしていると、母親は深いため息をつきながら真剣なまなざしで話しだした。
「ごめんね、結衣?正直今のこの家の経済的にこの学校ほどいい条件なところは無かったのよ。それにねここの学校の理事長があなたのおじさまなの。だからね、男子校とはいえ、理事長の甥として入学すれば安心だと思ったのよ。勝手に決めてごめんなさいね。」
「で、でも......。」
「大丈夫よ。何かあったらおじさまが何でも言いなさいっておっしゃっていたわ。だから心配しないで?ね?」
真剣なまなざしで頼んでくる母親を断ることは結衣には出来なかった。ただでさえ、様々なやりくりをして立派に自分を育ててくれたのだ。自分の事でこれ以上母親に迷惑をかけたくないと言う気持ちで結衣はいっぱいだった。
「わかったよ。入学する。」
結衣がそういうと、母親の顔が明るくなり
「ありがとう。助かるわ。」
と言った。結衣は母親のそんな顔が見るのが昔から大好きだ。そんな顔を見たくて今まで生きてきた。正直結衣にとってこんな貧しい家庭で暮らす中の唯一の光が母親の笑顔だった。